2024年4月29日
タラバガニとウニ

北海道根室市 生タラバガニと生花咲カニ刺身

北方領土返還に沸く

とある経済団体の記念式典及び祝賀会に参加するために北海道根室市を訪れている。北方領土を望む日本最東端の街は、先日の安倍・プーチン会談において取り上げられた二島返還の話で沸いていた。もとより四島返還など不可能なのはわかっている。二島が返ってくるだけでも、領海や排他的経済水域が広がる。漁のできる海がぐんと広がるのだ。それらは根室の漁師たちのものである。

だとすれば、島の領有権を日本に返しても、施政権はロシアのままにしておき、四島へのビザなし交流を実現して、二島の領海と排他的経済水域のみ日本に返せば済む話だ。現住のロシア人たちを退去させる必要も、戦前の権利を復活させる必要もない。施政権がロシアのままなら米軍基地も作れない。もしも落としどころがこのあたりならば、マスコミが「二島-α」と表現するのも理解できるが、現実的な案だと思う。

納沙布岬
日本最東端とは書いていない納沙布岬

そんな話を聞きつつ、根室と言えば何と言っても海産物。牧場も多くあり、根室牛もあったりするが、やはり海産物の破壊力には敵わない。タラバガニ、花咲カニ、毛ガニ、シマエビ、ウニ、ホタテ、イクラ。隣町の厚岸(あっけし)は全国的に有名な牡蠣の産地である。

先週、懇親会の食事がハンパないと関係者から聞いていた。食事代は参加費の倍をかけたと豪語していた。根室と言えば食い物しかない。自分たちでも滅多に食べないようなものを揃えたとのことだった。

記念式典がつつがなく終わり、会場準備のためにウエルカムドリンクの部屋に移動させられる。ここでも話題は懇親会の食事のことだ。皆、相当期待している。開始予定時刻を数分過ぎてから、会場に戻るように案内された。席に戻った私たちを待ち受けていたのは、高級食材の数々であった。

根室のカニカニカニ

生タラバガニ刺身

大迫力の生タラバカニ。脚一本で数千円するとのこと。販売元の社長ですら、何年も食べていないと言う。さあ、食うぞ!太い脚を手に持ち、特製のタレにつける。カニ酢みたいのものだと言う。そして一気に口の中に入れる。歯で脚の骨をしっかりと噛み、口から引き抜く。

おお!

これがタラバ刺か!

生タラバガニ刺身

むちむちプルプルの身からは、旨味と甘味が染み出してくる。よくテレビで見るのは、こいつをお湯でくぐらせて花を開かせたやつだ。鮮度がちがう。刺身の方が新鮮なのだ。臭みなどなく、カニ臭さもない。ゆでカニとはまったくの別物である。

これは妻にも食べさせたい。根室でなければ食べられないだろう。子供たちがもう少し大きくなれば、家族でカニカニカニかに。

すごいものを食べた。

花咲ガニ刺身

生花咲カニ。ゆでたものしか食べたことがない。刺身があったことすら知らなかった。タラバガニと並べられると、どうしても見劣りしてしまうが、味は負けない。でも、タラバよりも小さいので感動が薄い。タラバに圧巻されてしまい、影に隠れてしまった。タラバよりも先に食べればよかった。

花咲カニ甲羅詰め。これは食べ慣れているが、一人一個とのことで嬉しい。安定した旨さだ。道東ではメジャーな食材だが、札幌ではなかなか高い。沖縄では入手不可能な食材だ。我が家ではパスタにしたりもする。

花咲ガニ甲羅詰め

ああ、カニ最高!

隣の席に座る知人はエビカニアレルギーで、匂いを嗅いだだけでトイレに行ったそうだ。みんなうまそうに食べてるなーと少し羨ましそうな顔をしていた。

根室のウニウニウニ

うに接写

板ウニ。これだけで二万円はするそうだ。根室でこの値段なのだから、札幌なら、東京ならいったいいくらになるのだろうか。恐ろしい。でもでもでもでも、そんなの関係ねえ!

数個を箸に取り、豪快に食べる。

おお!臭みなど微塵もない。甘みと旨みしかない。まさにクリーミー。

「やばい」

隣に座る長野県民が思わず呟いた。

うに接写

「こんなの食ったなんて、嫁に言えない。」

おそらく、明日からは長野の寿司屋で食べるウニを美味しいと感じないはずだ。知らなくていいことを知ってしまった、禁断の味を覚えてしまった人間は、同じ味を日常に求める。しかし、青い鳥は見つからない。北東北を除いて全国どこに行っても、こんなウニを食べることは叶わないのだ。どんなに流通が発達しても、根室は国境の町。日本最東端。ここでしか味わえない、究極の贅沢品なのである。こんなウニを、根室市民は「食い飽きた。」と言う。海産物を食べない者もいる。

根室の海鮮おらおらおら!

タラバガニ外子 軍艦巻き

まだまだ来るぞ。タラバガニの外子の軍艦巻きだ。これまた美味い。プチプチとした食感はまさに珍味だ。

ウニのクリーミーな甘みと海苔の組み合わせ、とろける二つの食材をシャリがしっかりと受け止めて、一つの味にまとめ上げる。最高。すすきののウニと全然違う。大粒のイクラも絶品である。ああ、至福だ。松川カレイの握りも美味い。

いくら軍艦巻き

お腹いっぱいなのだ。

根室太鼓

祝賀会のアトラクションに、ねむろ太鼓保存会に出演を依頼したところ、本日は別のイベントの先約があるために参加できないと断られたとの説明が。

なんだよ。

仕方ないので、自分たちで練習してやることにしました。はあ?学芸会か?

マジかよ。

一抹どころか、かなりの不安を抱えたままアトラクションが始まった。

ねむろ太鼓

え?ええ?

マジでうまいんですけど、本当に素人集団?しかも、みんな楽しそう。実はやりたがり?前から叩いてみたかったんじゃないの?すごいよ!

トドメはスタミナライス

もう食べられません、参りました、降参ですと白旗を上げた我々の目の前に、追い討ちをかけるように大きな皿が運ばれてきた。

え?

なにこれ?

大きなトレイの上に盛られたライスに野菜炒めと目玉焼きが載っている。海産物とは明らかに趣向の異なる、そもそも根室とは関係なさそうな料理なのだが。地元民に聞いてみた。

「スタミナライスだよ。」

あー、ニューモンブランのメニューにあったな。これか。美味そうなので一口だけいただく。うん、がっつり食べたい時にいい感じだね。今は無理。そもそも、これだけ寿司を出しておいて、ラストにスタミナライスを食べられるもの?誰のアイデアだ?

今までにも何度か根室の底力を見せられてきた。毎回、圧巻なのに毎回、前回を上回る。しかし今日のがマックスだろう。出尽くしただろう。次にこんな料理を食べられる機会はあるのだろうか。

徹底したおもてなし。根室、恐るべし。

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