那覇空港にて
久しぶりの台湾出張。今年一月以来である。那覇空港からいくつもの便が飛んでいるが、私のお気に入りはエバー航空だ。LCCはビジネスクラスがない。せいぜい足が伸ばせるシートがあるくらいだ。正直、台湾までのフライトならばそれでもいいのだが、LCCにはそれ以外にも不便な点が多々ある。
- 荷物の重量制限が厳しい
- 優先搭乗がない
- マイルがつかない
- 台北駅や香港駅でチェックインできない
ピーチは日本の会社だけあって、那覇から出発するのに便利な時間帯であるから、何度か利用したことがあるのだが、それ以外は台湾のLCCのため、ことごとく午後便である。本日は午後三時までに台北市内のホテルに着かなくてはならないため、午前便に乗らなくてはならない。一番便利なのがエバー航空なのである。
午前10時のフライトだが、国際線なので一時間半前、つまり八時半には空港地到着しなくてはならない。まさに市内はラッシュ時である。普段ならば自宅から空港まで15分もあれば着くのだが、この時間帯だけは30分を見なくてはならない。那覇空港は小さな地方空港なので、国際線でもチェックインから出国手続きを終えるまでに10分もかからない。早くて便利なのだ。
ラウンジ
搭乗時間までは専用ラウンジで過ごすことにしよう。確か8時45分オープンだったような。少し時間が早い。数分ほど待つ。

専用エレベーターで4階にあがるとラウンジである。中では簡単な食事もできる。半個室のような設備もある。ここでドリンクを飲みながら、ゆっくりと時間が来るのを待つのだ。ラウンジにいるのは私一人である。

機内にて
時間になった。搭乗ゲートに向かう。エバー航空は相変わらずサンリオ一色だ。チケットもキティ猫である。

もちろん機内もサンリオまみれだ。

枕もサンリオ。

テーブルクロスもサンリオである。

糸ようじもキティ猫なのだ。
機内食
那覇から台湾は一時間のフライト。国内線で言えば鹿児島程度の距離である。台北に到着するのは10時50分。それから台北市内に移動すればランチタイムだ。わざわざ機内食を食べる必要はない。どのように断るのか考えていた。
- 不要吃飯
- I don’t need meals.
- 機内食は不要です
面倒だな。出されたものを食わずに、放置しておけばいいだけじゃないか。せっかくだから一口食べて味見だけするのが合理的だ。何事も経験が大切なのだから。
離陸後に眠りに落ちた後、目が覚めると時刻は10時55分。日本時間だ。あと一時間で台湾に着く。機内前方から美味しそうな匂いが漂ってきた。機内食だな。しかし、この香りは日本の航空会社ではありえない芳ばしさだ。焼き鳥やウナギとは異なる、エスニックな芳香なのだ。私の中で眠っていた食欲が叩き起こされる。
いや、まだお前の出番ではない。だが、まさに召喚魔法の如く機内に漂う匂いに釣られて目覚めた私の本能が大人しく眠りにつくわけなど、慎重勇者がready perfectly ではない状態で魔物と戦うのと同じくらいありえない。
眼前に姿を現した機内食が視覚からも本能を呼び覚ます。ああ、もうダメだ。すでに自分の意思では私の中の食鬼を制御できない。頼む、頼むからもうやめてくれ。俺はこいつを食べたくないんだ!台北市内で魯肉飯を食べたいんだ!!
そんな私の叫びに第二人格が冷静に答えた。
「二回食べればいいだけだろう。」
そうなのか?そんなことが可能なのか?いや、やるかやらないかと聞かれたら「やる!」と応えるのが我が社のモットーである。「イエスもしくはハイ!」しか選択肢はないのだ。やるしかない。
配膳されたのは串焼きとフルーツ。軽食なのだろうが、日本人にはかなりしっかりした食事に見える。カラフルで美味そうである。

この四角い焼き目のついた物体はなんだろうか。中国豆腐、いわゆる押し豆腐、もしくはグルテンをグリルしたものだろうかと想像しながら口に入れ、前歯で噛み切ろうとした。
ん?
熱い!なかなかの熱量だ。可及的速やかに噛みちぎって、口外に露出している部分を一旦、皿に戻すべきだろう。とっさの判断で前歯に力を込める。
え?
噛み切れない。こいつは豆腐ではない。コンニャク?いや、違う。コンニャクであれば容易に噛み切れるはずだが、こいつにはしっかりとした食感がある。

熱いのを堪え、口にくわえた物体をすべて口内に取り込む。奥歯でしっかりと噛み締める。じわじわと広がっていく独特の芳ばしい香りは…ああ!
エリンギだ!
大きなエリンギの茎をスライスし、スクエアにカットしたものをソテーしたのちにグリルしたのだろうか。なかなか美味い。
続いては串だ。かぶりついた鶏肉から肉汁があふれ出す。スパイシーな香りが口の中で弾ける。ふわっと広がって霧散していくかと思いきや、香りが鼻に抜けていく。カラフルなパプリカからはしっとりとした甘みがにじみ出てくる。

焼けたトマトからは甘酸っぱい熱々の液体が溢れ出る。チキンは柔らかい。さらに胡椒を振りかけて味わいを広げる。なかなかイケる。
フレンチトーストらしきものを食べる。バターがしっとりと染み込んだそれは、口当たり滑らか。噛み締めるたびに崩壊していく。繊維が感じられない。粒状の細かい物質が口の中で溶解していくようだ。パンではない。パンケーキでもない。まるで山芋、粘りのないとろろを食べているかのようだ。
なんだろう?
メニューはないのだろうか。そういえば見当たらなかった。当初は食べる気がなかったので、見逃してしまったのだろうか。
仕方がない。
フルーツも日本で食べるのとは違う様に感じる。瑞々しく、味わいが情熱的だ。南国の香りがする。リンゴは台湾では採れないが、中国ではよく食される果実だ。

美味であった。国際線では普段、口にすることのできない味わいと出会うことができる。やはりエバー航空に乗ったら飯を食わねばならぬのだと肝に銘じた。
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アラフィフで再婚して二人の子どもを授かりました。妻は初めて、私は二度目の育児を夫婦で頑張っています。