仙台朝市商店街
恒例の物資補給をするために、商店街によってから沖縄に戻ることにした。仙台駅近くに朝市商店街なるものを見つけた。戦後の闇市がそのまま商店街となり現在へと至るらしい。狭い路地を挟んで鮮魚市場と八百屋が並ぶ。干物も鮮魚も刺身も売っている。魚もさばいてもらえるので便利だ。
クーラーボックスに入るだけ買いまくる。けいたまとゆうたま用の魚、妻と食べる刺身、それに沖縄では入手困難な野菜類。今晩と明日の食事が楽しみなのだ。
ANA 1863便
台風と梅雨前線のせいなのか、飛行機はなかなか安定しない。離陸してすでに三十分を過ぎているのだが、シートベルトサインは点灯したままである。機外では雲の合間から盆地に広がる都市の光景が見えた。郡山市だ。
しばらくしてようやくシートベルトサインが消えた。チャンスとばかりにトイレへと向かう。仙台空港では四十分も電話をしていたために、トイレに行くこともままならなかった。
トイレから戻ると配膳が始まっていた。私もシートに腰を落とし、来るべきに備え、肘掛の下からテーブルを取り出して設置する。さあ、来たまえ。私は腹が減っているのだ。仙台朝市市場で朝食に海鮮丼を食べようと楽しみにしていたのに、店を見て食べる気が失せてしまったのだ。
朝食ロスト。
血糖値に反比例して人間は気が立ってくる。理由もなくイライラする。いや原因は分かっている。空腹なのだ。早く私の飯を持ってこい。飯飯飯飯飯、おそらく今の私の脳内マップはこんな感じだ。一文字くらいは「眠」か「疲」の字も混ざっているやも知れぬ。
ようやく俺の眼前に配膳された完全なプレミアム御膳。本日のお品書きだYO!
さて、いただくとしよう。
プレミアム御膳
食べる前に熱いお茶をリクエストする。大量加熱兵器がなければプレミアム御膳とは戦えないのである。まずはカツオ照り焼き。片面がガラスにローションを塗ったかのごとくの滑らかさ。見た目に反して口に入れるとあまり味がしない。お茶を飲んで温めると血合いの臭みが口に広がる。これは冷たいまま食べるおかずなのかと納得。温めてはダメだったのだ。
ああ、失敗。
切り干し大根のサラダは、酸味控えめのなますのようで爽やか。牛肉味噌焼きは味噌の香りが牛肉と相まってご飯にマッチする。もちろん、お茶漬け状態にした上での話である。しそ味噌巻きはセメダインのような味。熱いお茶を口に含むと一転して豊かな香りと味わいが発現する。
緑茶万歳!
飛行機が揺れる。台風のせいだ。お茶と味噌汁の水面が激しく波打つ。こぼれはしないだろうかと心配になる。落ち着いて食事ができない。ロールたまごも味気ない。
煮物は薄味だ。素材の味が生かされているのだが、高野豆腐だけは事情が異なる。たっぷりとだし汁を吸ったであろう高野豆腐を噛み締めると溢れ出てきたのは味気ない液体だ。熱いお茶と触れ合うと、化学反応を起こしたかのように上品な味わいに変化する。まさに熱いお茶の還元作用。
アオサと練り梅のご飯も、梅の香り以外は引き立たない上にご飯が冷たいから、コメのうまさを感じ取れない。冷たくて美味いのは漬物と葛餅のみである。
493キロカロリー。少ない。朝飯も割愛したので、なんだか物足りない。コンソメスープを頼んだところ、出てきたのはポタージュだった。私の顔を見て間違いに気づいたアテンダントだったが、ポタージュでもいいかと飲んでみた。いまいちコクが足りない。理由は最後にわかった。カップの底に溶けきれなかった粉末が格納容器の底のメルトダウンした核燃料のように溜まっていたのだ。
Wi-Fi設備もない機材。窓の外は真っ白。テーブルも小さくてパソコンで作業するのは辛い。
もう寝るしかないな、これは。枕をもらってシートを深く倒すと、毛布をかぶってぐっすりなのだ。
早く家に帰りたい。
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アラフィフで再婚して二人の子どもを授かりました。妻は初めて、私は二度目の育児を夫婦で頑張っています。