富山空港から羽田経由で沖縄に帰る予定でいたが、高岡市から小松空港までそれほど遠くないことが分かり、小松から那覇への直行便に変更した。ゴールデンウィークでも、地方線は案外、空いてるものなのだ。道中で物資を手配するため、道の駅に寄ることにする。
行き先は「こまつ木場潟」である。
おお!たけのこに山菜がふんだんに売っている。妻の好物の山菜パスタが作れる。たけのこを水煮にして、煮物にご飯に色々と。
山菜はいいねえ。
買い物を済ませて建物を出たところで、山中塗の食器を売っていた。はたと足が止まる。
このサジ、いいかもしれない。
けいたまが使っているスプーンは金属製、プラスチック製、シリコン製の三種類がある。使い勝手はどれも一長一短で、もっと使いやすいものがないかと常々探していた。
「お孫さんのスプーン」
孫じゃなくてもいいだろうと思うが、ここの客層がジジババばかりだからなのだろう。これは使いやすそうだ。形といい、厚みといい、大きさといい、私の探していた理想に近い。しかも、干支が書かれている。
けいたまの干支はなんだ?計算する。え?私と同じ?48歳で生まれたから、同じなのか。ではゆうたまは。干支を考えている私に、店の方が声をかける。おそらく生産者の方だろう。
「お子さんにどうですか?何度も漆を塗ってるので少し高いのですが。」
いや、これで千円は高くない。そうだ、今年の干支はなんでしたっけ?尋ねてみる。
「犬ですよ。」
犬?あれ?ゆうたまと妻は同じ干支?そうか、妻は今年、年女だ。
へー。びっくり。
おそらく妻は気づいていない。
「これね、干支の絵なんですよ。」
見れば分かります。
「手描きだから、一つ一つ微妙に違うんですよね。」
それって品質が安定していないってことでしょ?工芸品として一番ダメなとこじゃないですか。手打ち蕎麦は太さが均一でないとか、同じですよ。いい腕の職人の蕎麦切りは機械みたいに正確ですよ。だから乱切り蕎麦などというふざけた名前の商品が出たりするんですよ。手作りを言い訳にしないでいただきたい。
心の中でつぶやく。
羊と犬のスプーンを一本ずつ購入した。二人とも愛用してくれると嬉しい。
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