2024年3月19日

家族旅行 2017年夏 #3 神奈川県大磯町 大内館

叔父の法要

六月に急逝した叔父の四十九日法要が、神奈川県二宮町で行われるので、せっかくの機会だからと、家族で行くことにした。私の両親や妹家族、母方の親戚が集まるので、妻と娘を披露するにはちょうどいい。二宮は、10年前に亡くなった叔父の奥さん、つまり叔母の実家があったところで、叔父の菩提寺も墓も二宮にある。叔父は海が見える高台に奥さんの墓を作った。今日はここに叔父の骨壺を納骨するのだ。初めて内地の墓を見る妻は興味津々。春に親族の葬儀で、初めて沖縄の墓に行った私も、その時は興味津々だったので、妻の心中は容易に想像できる。

叔母の実家を継いだ私の従兄弟のマブ君は、叔母の甥なのだが、彼の両親もすでに亡くなっていて、今年100歳になる婆ちゃんだけが老人ホームで元気にしていると言う。マブ君もだいぶ前に平塚に自宅を買ったので、継いだと言っても、実家には誰も住んでいないのだ。むしろ、どうしたら土地と建物を処分できるのか、相談されたくらいだ。

菩提寺は浄土宗。南無阿弥陀仏と唱えれば、誰もが天国に行けるという、大乗仏教の元祖だ。一般的に仏教では死後、七日おきに裁かれ、49日に判決が言い渡される。仏になるか地獄に落ちるかである。しかし浄土宗では南無阿弥陀仏と唱えれば、死後、すぐに仏になれるのだ。

法事の会場に入ると、全員に木魚が渡される。まさかと思ったが、そう、全員で木魚を叩き、南無阿弥陀仏と、10回唱える。100人近い参加者が一斉にするのである。揃うわけがない。ところが、最初はバラバラな木魚と念仏が、だんだん揃っていくのは面白いというか、感動に近いものすらあった。

法要などの食事を済ませ、宿に向かう。大内館。マブ君によれば、地元では食事が美味しいと評判の店だとのことだ。

大磯 大内館

15時にチェックイして、部屋でのんびり。オーシャンビューと言えば聞こえはいいが、窓からは、民家の屋根の向こうに海が見える。ま、ここは景色を期待してたわけではないので、問題なし。お風呂は温泉ではないが、大浴場になっている。家族風呂はないので妻とけいたまが女湯へ入るが、けいたまが階段で自主トレを始めてしまい、無理矢理風呂場に連れて行くとギャン泣きしていたそうだ。

4歳くらいまでは、脳の構造上、子供は自分の欲求を我慢することかできないから仕方がない。仕様だ。逆に認知症で脳が壊れていくと、ある時点から我慢ができなくなる。認知症ではないが、欲求を押さえる脳の機能が壊れて、我慢がきかなくなる脳の病気もある。「我慢」とはしつけで身につくものではなく、脳の機能なのだ。

風呂でけいたまと格闘した妻は、けいたまとお昼寝だ。私はのんびりとパソコンをつけて仕事をする。じきに夕食の時間となり、一階のレストランに向かった。今日は部屋食ではなかったのだ。我々家族の席はお座敷だ。あと二組はテープル席に食事が用意されていた。

最初に出てきたのは先付けにサザエのつぼ焼き、お造りはスズキ、カンパチ、モンゴウイカ、まぐろ。まあまあだ。

そして生シラス。うーん。なんだかなぁ、あまり好きじゃないんだよな。一口、食べてみる。正直言うと、生シラスを食べて美味しいと思ったことが一度もない。苦いし生臭いし、なんで皆こんな物を美味い美味いと言うのだろうかと、思っていた。それが何だ、これは。ハッキリ言おう。

美味い。

苦味がほとんどない。ほのかな苦味はむしろ大人の味だ。もちろん臭みもない。身が甘い。シラスってこんなにもうまかったのかと、感動すら覚える。やばい。日本酒に合う。私は今まで何を食わされてきたんだ?

次にイワシのカルパッチョ。イワシの鮮度が抜群なのはもちろんのこと、味付けがいい。トマトとバジルがこれほどイワシと合うことに驚いた。

鯛の塩焼きに「穴子とインゲンと人参の磯辺揚げ」に「鯛とイモのしんじょ」と次々と料理が出てくる。

隣のテーブル席に熟年マダムの団体が座る。けいたまが飽きだした。部屋の外に出ようとするので、付いていく。目的地はおそらく階段だ。けいたま、再び自主トレ開始。嬉しそうに階段を登り始める。自宅マンションでも階段を上り下りする。3階まで行くと長い廊下を走り、反対側の階段を下り始める。手を貸さずに見ておく。あ、コケた。頭から床につっこんだ。泣き出すかと思ったら、すくっと起きて、再び階段を下りだした。今度は慎重だ。5往復もしただろうか。

妻はだいたい食べ終えていた。けいたまは再びトレーニングを始めたがったので、今度は妻が外に連れて行った。隣のテーブルでは熟年マダムの団体が話に花を咲かせている。一人で食事をすれば、その話し声は嫌でも耳に入ってくる。会話の内容は、かなり最低だ。こいつら、人としてどうなんだ?と耳を疑いたくなるような会話だ。なんだかムカついてきたので、急いで食事する。この宿が部屋食でないのは、作りたての料理を提供したいからだ。食事はすごくいい。しかし、子連れではやはり部屋食だということを再認識した。

夕食を済ませ、部屋に戻ると妻が話しかけてきた。

「ねえ、隣の年配女性の会話、聴いた?最低じゃない?」

妻も同じ思いだったのか。

じきにマブ君から連絡が入った。旅館の前で待っていると言う。タクシーを呼んで平塚駅前のスナックに行く。二人でウイスキーのボトルを一本空けて、旅館に戻ったのは0時半だった。

翌朝、朝食も美味かったが、けいたまがまたトレーニングに励むので、ゆっくり食べてられない。けいたまを追いかけて二人とも席を外した間に、朝食を下げられてしまった。朝食の担当者はそつなく仕事をこなすが、事務的なので、このような配慮のなさが残念だ。食事はいいのだが、小さな子供連れで泊まる宿ではないと再び思った。

潮騒のお宿 大内館 公式HP

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