「まるでパルテノン神殿」「インスタ映えする」と評判の首都圏外郭放水路調圧水槽。国道16号線の地下50メートルに掘られたトンネルと5つの川の水を貯めこむ立坑が、台風や大雨で川が増水した時に水を溜め込み、時間をかけて江戸川に放水する。こうして洪水を防ぐための設備だ。
初めて訪れた春日部にて、この施設の見学ツアーに参加することができた。おっさんとおばさんばかりの見学会だ。目的地は子供たちのサッカーチームが練習をしている、このグラウンドの下に建設された調圧水槽。そう、これが現代のパルテノン神殿である。
見学の前に施設の説明を受ける。二階には巨大排水ポンプの模型があり、実際に動かすことができる。広島県三次市民の井本氏が興奮している。彼は元は東京でポンプメーカーの営業をしていた。はっきり言ってマニアだ。彼以外、ポンプの模型に食いついている人はいない。
「これ、マジすごいですよ!1秒間で25mプール一杯分の水を排出するんですよ!」
すごいのかどうなのか、いまいち実感がない。
この施設は3つの機能で構成されている。川からあふれた水を取り込む機能、水を貯める機能、そして貯めた水を排出する機能だ。水を貯める立坑は、それぞれスペースシャトルがすっぽり入るサイズである。これらが6kmのトンネルで繋がっている。貯水量の合計はサンシャイン60ビルと同じ体積だそうだ。
まずは立坑の中を上から覗き見てみる。深いのは分かるが、底までよく見えない。とにかく、水槽まで降りてみよう。地下10階まで徒歩で階段を降りる。エレベーターなどはない。階段は足元が滑りやすくて危険なの絵、撮影禁止である。
調圧水槽の底から見た風景である。巨大なポンプで排水しているときに、江戸川の水位が高くなってポンプを停めると、津波のように水が反動で逆流するそうである。それを緩和するのがこの調圧水槽なのだ。幅78m、長さ177m、高さ18mでサッカーグラウンドほどの大きさだ。
この階段を下りてきた。110段ほどある。降りるのは大したことないが、上るのは少々骨が折れるはずだ。水槽の底には若干の砂利があった。水で満たされると相当量の砂利も運ばれてくるそうで、上からブルドーザーを入れて、それらを集めるそうである。集めた砂利は堤防工事などで使われるとのことだ。
59本もの巨大なコンクリートの柱が水槽を支える。一本の柱の重さは500トン。自然の猛威に対抗するためには、これだけの土木技術が必要なのだ。
最初の底を除いた立坑を調圧水槽から見たところである。調圧水槽の底よりもさらに下に穴が伸びているのが分かる。
巨大な風呂場のような建物なので、音楽を演奏すれば自然な素晴らしい反響を得ることができる。地元で活躍するコーラスグループの演奏が披露された。これらの機材も階段を使って下ろしていた。撤収が大変だろうな。日本の土木技術の水準を目の当たりにすることができた、貴重な機会であった。
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アラフィフで再婚して二人の子どもを授かりました。妻は初めて、私は二度目の育児を夫婦で頑張っています。