2024年4月16日
にいがた和牛 焼肉弁当

新宿駅 特急きぬがわ号とにいがた和牛焼肉弁当

ああ、浦和駅

ホームに入ってきたのはオレンジ色の電車。特急きぬがわ号。折り返し鬼怒川温泉行きとなるのだ。全席指定である。普通に買えば運賃は4000円なのだが、インターネットのえきねっとで買ったので2400円であった。四割引だ。かなりお得だ。

ホームの自販機でほうじ茶を買い、指定席に着くと、ほどなくして電車は動き出した。停車駅は池袋、赤羽、浦和、大宮である。その先は東武線に入る。

特急きぬがわ号

え?

浦和?

私が子どもの頃、さいたま市が誕生するはるか前のこと、鉄道ファンの間で有名な問題があった。

「全国で県庁所在地に特急の停まらない都道府県はどーこだ?」

答え、埼玉県と沖縄県。沖縄県には鉄道がなかった。浦和駅には各駅停車しか停まらなかった。さいたま市になり、大宮駅が県庁所在地になって、汚名をすすぎはしたが、なんだかMr.マリックのようだ。イリュージョンだ。

ゆいレール
沖縄を走るゆいレール。21世紀に入ってから開通した。

浦和駅に特急が停まる。そんな時代が私の生きているうちに訪れるとは。新幹線札幌延伸よりも、リニア大阪開通よりも、私にとって、いや、埼玉県民にとっては遠い話と思っていたことが実現した。人間、諦めたらあかん。雑草はアスファルトを割ってでも生えてくる、というポスターがあった。あれはアスファルトを植物が割ったのではなく、割れ目に生えただけだと子供心に思ったのは内緒だ。

森林公園と焼肉弁当の思い出

さて、弁当を食べるか。車窓は都会のごみごみした風景なので見る価値もない。旅の風景までは一時間はかかるから諦めるしかない。池袋など、窓から弁当を食べているところを覗かれたくらいだ。見るんじゃねえっ!

にいがた和牛 焼肉弁当

さて、弁当の包装を取り、フタを開ける。まあ、弁当だからこんなだよな。言ってみれば牛丼弁当だよな。

子供のころ、埼玉県草加市に住んでいた黒歴史の一ページ、家族で東松山の森林公園にピクニックに行った。家族で食べたお弁当。母が作ったのは豚丼弁当だった。当時としては斬新だ。トンカツやソーセージ、玉子焼きにおにぎりを期待してきた子供心は踏みにじられた。

母ちゃん、何考えてんねん。ピクニックにお重持ってきて、中身がすき焼き弁当。しかも豚肉。ありえへんねん。当時はまだ私の主要言語は京都弁であった。このために学校で激しいイジメにあった。食べた弁当は、冷たかった。お腹が空いていたので食べはしたが、もうピクニックは嫌だと感じたことを、とてもよく覚えている。

おそらく、あれが家族で最後に行ったドライブだ。この後、我が家はジェットコースターのように、運命に翻弄されたのであった。

いよいよ実食、焼肉弁当

にいがた和牛 焼肉弁当

さあ、そんな子供時代のトラウマを払拭できるのか、この野郎。一口食べる。

冷たい。

当然だよな。冷蔵庫に入っていたんだものな。口の中で、冷え切ったご飯と焼肉を温める。徐々に牛脂が溶け出し甘みとなるが、人間の体温では十分に甘みを引き出すことができぬ。低音で食べることを前提とした味付けは、甘みが強めだ。これをレンジで温めてから食べたら、どれほどの甘さなのか。しかしそれならば甘さだけではなく、同時に辛さも塩加減も香りも引き立つはずである。

ルイベかよ…

ほうじ茶で口の中を温めながら、弁当を食べる。自販機に500ミリの熱いお茶は売っていない。コンビニなら550ミリが売っているにもかかわらずである。このボリュームにこの程度のお茶の量では、まったく足らない。話にならぬ。口内調味で牛肉丼茶漬け。

にいがた和牛 焼肉弁当 ワサビのせ

わさびは冷たいままで問題ないが、バランスが悪い。わさびの相方となるべき牛脂が、凍えて動けないのだ。これではこの弁当の一番の売りが味わえぬ。

いくらいい牛肉でも、その魅力を引き出せないコンディションでは味が単調になる。付け合わせの梅こんぶが、口の中を爽やかにしてくれるのはいいが、固くて噛みきれない。おまけに量が少なくて、すぐに無くなる。刻むか、量を増やすかして欲しい。中途半端なんだよ。

にいがた和牛 焼肉弁当 半熟玉子

半熟玉子は味付けよし、固さよし。単体では美味いが、焼肉弁当とは相性がイマイチだ。何故だろう。これが暖かい弁当と温泉玉子ならば、夢のようなコンビネーションが奏でる味わいのハーモニーに酔いしれること間違い無しなのである。わさびも仕事ができるだろう。

食べ終えたが、なんだか疲れた。違う意味でお腹いっぱいだ。駅弁は嫌いだ。昔ながらの押し寿司とかがいいんだよ、やっぱり。冷たくても美味しいものを食べよう。

鬼怒川温泉での一夜

電車は栗橋駅から東武線に入る。懐かしい。子供の頃、この駅に来る途中、北越谷駅で飛び込み自殺があって、初めて礫死体を見たんだっけな。利根川を渡る。数時間前にはこの辺りを上空から眺めていた。そして新栃木、新鹿沼と停車する。風景は農村に変化し、ついには単線となった。途中駅で対向列車と交換し、ついに終着駅である鬼怒川温泉に到着した。二時間少々の旅であった。

鬼怒川パークホテルズ 宴会

夜は鬼怒川温泉パークホテルにて会議と新年会。二次会。

疲れた。

明日はゆっくり温泉に浸かってから、またもや特急きぬがわに乗ろう。ようやく自宅に帰れる。

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