2024年4月24日
ANA プレミアム御膳

ANA303 セントレアー那覇 プレミアム御膳

物資補給に失敗する

近鉄四日市駅で買い物をしてから沖縄に戻るつもりでいた。前日に偵察した近鉄百貨店の鮮魚は素晴らしかった。しかし営業は朝10時からである。今日は遅くとも朝九時の電車に乗らなければ間に合わない。そこで朝八時から営業しているスーパーを物色したが、鮮魚が乏しかった。

仕方ない。

メーエキ(名古屋駅)の北野エース近鉄パッセ店に期待して四日市を後にしたが、名古屋で私を待ち受けていたのは、厳しい現実だった。新鮮市場という名前なのに、青果も鮮魚も置いていない。しかも私は以前にも同じ失敗をしていたことに気づいてしまった。

北野エースには気をつけろ。

キャリーバッグの容積のうち四分の一を占める、高性能クーラーボックスも出番がなければただの荷物だ。おまけに保冷剤をホテルに忘れたことに気づく。昨晩は想定外の午前様。しかも0時前に土手煮、牛タン、ラーメンと激しい食事。食べ終わっても、まだまだ続く深夜の宴。さすがについていけずに、こそっと離脱した。二次会の店では名刺を渡したのに領収書がない。店は渡したの一点張りだ。

どないなってんねん?!

セントレアにはフライトの一時間前には到着するので、お土産を買う時間はありそうだ。先日、カビてしまった山本屋総本店の味噌煮込みうどんは買って帰りたい。リベンジしたい。うどんが固すぎて、子どもには不向きな一品なのだが、八丁味噌の香りとコクがたまらないのだ。

お土産を買ってゲートに向かった。

機内からの眺望

碁盤目に整備された田畑が美しい。松坂市南部だ。

愛用のデジカメがシステムエラーと表示されて動作しない。悲しい。望遠用のもう一台で当面はやり過ごすしかない。

松坂市上空

景色は海岸線へと変化した。三重県尾鷲市である。

尾鷲市上空

プレミアム御膳

プレミアム御膳の配膳が始まった。眼前に置かれたのは二つの弁当箱だ。ボーイング737のような小さな飛行機では調理設備がないために温めるのが難しいのであろう。

ふたを開ける。ごはんとおかずだ。

ANA プレミアム御膳

煮物から食べてみる。豆腐が冷たい。たけのこご飯も冷たい。慌ててはならぬ、ここで熱いお茶を口に含める。縮こまっていたご飯がパラパラとほぐれ、豆腐からは豊かな味わいが広がる。まさにお茶によって花開く食事。長年にわたってプレミアム御膳を食べてきた私が編み出した必殺技なのだ。

ANA プレミアム御膳

同様に人参を食べる。熱いお茶が本来の味付けを復元する。まさに味のレストア。煮物だというのにシャキシャキのキャベツは、いい意味で予想を裏切られた。塩茹で一寸豆はなんだか臭い。時間が経った臭いがする。お茶を飲んでも改善されない。うーむ。

レンコンはさみ揚げもお茶を含めれば風味豊かな味わいが広がる。肉の旨味にレンコンの食感。玉子焼きとたけのこご飯を味噌汁と一緒に食べてみる。だめだ、味噌汁の味と風味が強すぎて、味が復元されない。

ANA プレミアム御膳

ヤングコーンと菜の花しらす和えは冷たいままでもいいかと思ったが、そんなことはなかった。からし和えと分からぬほど冷たくて味がしない。熱いお茶がなければ潜在力を引き出すことができぬ。すでにカップのお茶は涸れて、おかわりを待っている状況なのだ。

お茶が来た。弾が補給された。これで再び戦うことができる。

味気ないシャケとご飯を口に含む。お茶に入れると、フワッと鮭の香りが口中に広がる。茶の渋みが生臭さを打ち消す。まさに鮭茶漬け。ふき、クワイ、焼き筍とご飯を食べる。美味しくない。熱いお茶を一口のめば、状況は一変する。不毛な冬の原野が花いっぱいの春の草原に様変わりする。マジックである。ミラクルである。魔法少女である。筍の香ばしい香りが口の中に広がるのである。

ANA プレミアム御膳

冷たく脂の固まった牛肉もお茶の力で復活だ。悪い魔女にカエルにされた王子の魔法が解け、本来の姿に戻るかのような所業。おそるべしは緑茶である。魔法の力を借りなくても己の能力を誇示できるのは、青きゅうり漬けのみである。酸味と鹹味(かんみ、塩味のこと)は低温でもしっかりとしたに伝わるのだ。

ご馳走様である。熱いお茶という武器を得て、冷たい弁当をやっつけることができたのだが、副作用としてお腹がタポタポになり、トイレが近くなる。勝利の代償だ。帰宅後は自宅でゆっくりとくつろぎたいが、体調不良の子どもたちを病院に連れて行かねばならぬ。育児に休みは無い。

生きることは、日々戦いなのだ。

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