2024年4月26日
節子鮮魚店

那覇でせんべろ 公設市場近くを歩く 前編

「せんべろ」初体験

「せんべろ」という言葉をご存知だろうか?「千円でベロベロに酔える」の略である。坂本忍のバラエティ番組で使われた言葉だと思っていたら、15年ほど前に出版された中島らもの「せんべろ探偵」で使われたのが最初だとか。

沖縄でもせんべろの店が牧志公設市場にあるとは聞いていたし、知人が飲みに行く様子もたまにFacebookに投稿されていたが、自分が行くことはないだろうと思っていた。まず、公設市場のあたりはアクセスが悪い。車で行くと駐車場がないし、かと言ってモノレールやタクシーでわざわざ行く気にもならない。そもそもこの辺りは観光客メインだから、近くに住んでるのならともかく、地元民が行くような場所でもないのだ。

それがたまたま知人の川辺という男が連休最後の日曜日に那覇に泊まるということで、共通の知人で地元民の宮城と3人で飲むことになった。日曜日の夜は繁華街の店はほとんど閉まっているので、観光客が多いこの辺りをあえて選んだのだった。

節子鮮魚店

ナビは宮城に任せることにした。この辺りに詳しいという。最初に向かったのは節子鮮魚店。ドリンク一杯と刺身と生ガキがついたセットが1300円になっていた。せんべろではない。ドリンクはセルフ。七輪焼きもセルフ。徹底してセルフだ。普段は激混みで入れないという。

節子鮮魚店 外観

テーブルに座るとまずは外にドリンクを取りに行く。ビールはオリオンとスーパードライのみ。ここはオリオンを飲むことにする。

節子鮮魚店 店頭

刺身は海ぶどうとマグロ、サーモンにタコ。地物は海ぶどうとマグロくらいなのか。これで800円はどうだろう?タコが島だこならまだわかるが、量が少ない…写真を撮るのも忘れてしまった。生ガキは門司カキだとのこと。せんべろだからつまみはこれくらいの量がいいのだとは思うが、おいしい商売してるなあ。

まるこめ酢

テーブルの上には「マルコメ酢」が置かれている。「合成酢」とも書かれている。これが沖縄県民愛用のアイテムだ。

「二倍濃縮なので薄めてご使用ください。」

とラベルに書かれているが、沖縄県民はそんな面倒なことはしない。醤油とマルコメ酢でキツイ酢醤油にする。特に年配の沖縄県民は醤油も使わず、濃縮二倍の酢に直接刺身をつける。刺身は瞬間に〆る。これがいいのだという。私は苦手だ。

ちなみに製造元は鹿児島県出水市のマグマ工業だが、この会社では沖縄で自社製品がブランドを確立していることを知らないのだと、出水に住む知り合いが話していた。

せっかくなので天ぷらも頼む。熱々のマグロ天ぷらはさすがに美味しい。ちなみに沖縄では天ぷらの中身を「タネ」とは呼ばず「芯(しん)」と呼ぶ。説明すると長くなるので別の機会に。

沖縄のスーパーで売られている「天ぷらの芯」

公衆トイレが基本です

3人がビールを2本ずつ飲んだところで次の店に行くことにする。会計を頼むとオヤジさんが「ビール何本飲んだ?」と聞く。会計まで客任せだ。3人で4150円。まあ、こんなものだろうか。でもあの刺身で800円はないなぁ。観光客価格としか思えない。地元民は海ぶどうなんて食べないのにな。

次の場所に移る前にトイレに行けと宮城が言う。節子鮮魚店の向かいは広場になっており、公衆トイレが設置されている。せんべろではトイレのない店が普通にある。店とはいえほぼ屋台みたいなものだ。だが、ここ久茂地公衆トイレはとってもきれいに管理されている。女性も安心しては入れる。宮城が言う。

「以前は栄町によく飲みに行ってましたが、あそこはトイレが汚い。」

確かにそうだ。栄町市場もここ数年、新しい店がオープンしたりしてにぎわっている。なぜか餃子の店や外国人の店も増えている。今や栄町市場の「便利屋」の餃子は名物になっているが、せんベロではなかったと記憶している。

国際通りにも屋台村があるのだが、宮城によればぜんぶ内地の店だし、行ってはいけないところなのだと言う。

「えー?昼間行ってしまいましたよ!」

それを聞いた川辺がと悔しがる。あまりよくなかったようだ。観光地あるあるだなぁ。

20年ほど前、私は仕事で数十回は台北に行ったが、あの有名な夜市に一度も行ったことがない。地元の知人に行ってみたいと話しても

「あんなところ、屋台だし不衛生だし何を使ってるのか分からないから行くところじゃない。観光客が行くところだ。」

と言って頑として連れて行ってくれなかった。

後編へ続く

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