2020年5月29日
揚げ島豆腐

島豆腐(しまどうふ) ~沖縄の豆腐の話~

沖縄の豆腐は豆腐じゃない

京都生まれの私は小さい頃から京都の豆腐を食べてきた。小学三年生で埼玉に引っ越してきたときに食べた絹どうふの固さに驚いた。箸で持てる。私にとって豆腐は儚くて脆い食べ物なのだ。箸でつかめるはずもない。しかし、関東で売っている絹豆腐はすべて硬く感じる。京都のような豆腐に出会ったことがない。

ところが沖縄に来て私が目にした豆腐は関東をも超えていた。でかい、固い、重い。「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ!」と昔から言うが、沖縄の豆腐、通称「島豆腐(しまどうふ)」は間違いなく凶器になると確信している。豆腐一丁が1kgもあるのだ。

豆腐1丁は1kg!

豆腐といえば冷蔵品である。子供のころ、おつかいで近所の豆腐屋に行くと、おっちゃんが「何丁や?」などと冷たい水の中から豆腐を取り出して持ってきたボウルに入れてくれた。今でも豆腐はスーパーの冷蔵コーナーにある。ところが沖縄の豆腐は「あちこーこー(アツアツ)」を売りにしている。もちろん冷蔵コーナーではなく豆腐コーナーに置かれている。メーカーごとにあつあつの豆腐が届く配達の時間まで記載されている。

豆腐の配達時間が書いてある

できたての豆腐は湯気がでるほど温かいので袋は開いたままにしてある。袋の中にたまったお湯を切るための容器まで用意されている。なので沖縄の豆腐はその日のうちに食べないと痛んでしまう。家に持ち返って冷蔵庫に入れても翌日には食べられなくなっているのだ。

島豆腐のお湯をこの容器にこぼす

さらにその対極というか、箸でつかめないどころか、すくうこともできない豆腐もある。おぼろ豆腐というか寄せ豆腐というか、作りかけのような豆腐といえばいいのか。「ゆし豆腐」という。これは二日酔いの胃に優しい。沖縄そばの店で「ゆしどうふそば」を出す店もあるくらいだ。温めて食べるので汁ものと同じ感覚である。中国の「豆腐脳」に近いように感じる。北京にいたときに朝食でよく食べていた。

ゆし豆腐そば

調べてみると豆腐脳や豆花とゆし豆腐の作り方は非常に似ている。ただ豆腐脳は中国北部で食される塩味の料理なのに対して、豆花は中国南部や台湾で食される甘いスイーツである。四川省ではお約束で辛くして食べるとのこと。たしかに中国では四川料理の店によく「豆花」と書いてあった。スイーツの方は食べたことがない、もしくは食べたけど覚えていない。

ゆしどうふ

じつは沖縄の豆腐の製法は内地と違う。内地では大豆をゆでてから絞るが、沖縄では生の大豆を水でふやかして絞る。これを熱したものににがりを加えると茶碗蒸しのような豆腐ができる。これが「ゆし豆腐」。そしてゆし豆腐を木枠に入れて押し固めたものが島豆腐なのだ。だから「ゆし豆腐」は作りかけの豆腐という表現でまちがっていない。

 

味の方はにがりが効きすぎてあまりおいしく感じられない。食感がボソボソ。これに骨ばったスクガラス(スクという小魚の塩漬け)を載せた「スクガラス豆腐」の美味しさなど、私には到底理解できない。豆腐チャンプルーもあまり好きではない。ゆし豆腐は口当たりが柔らかく胃に優しいが、やはりにがりが効きすぎて好きになれない。私が島豆腐を食べるのはせいぜい味噌汁くらいだ。これだって島豆腐の存在感が激しすぎて豆腐を残すことなどしょっちゅうだ。ご飯よりも豆腐の量が多いから食べきれない。二日酔いのときのゆし豆腐は許してやってもいい。

「こんなものは断じて豆腐ではない!」と長らく思っていたのが、今では自宅でしょっちゅう食べている。なぜ、こんなにも変わったのか?それは島豆腐のおいしい食べ方を見つけてしまったからだ。いや、内地の豆腐ではこの味が出ない。

レシピは「おきなわごはん」で(^^;

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