2024年4月26日

百名(ひゃくな)ビーチと浜川御嶽(はまがーうたき)

御嶽といえば

御嶽(うたき)とは、沖縄で神様と関係が深い場所のことである。世界遺産の斎場(せーふぁー)御嶽は琉球国時代に祭祀が執り行われたところで、当時は男子禁制、国王のみが入れたという。それもノロと呼ばれる、琉球国の女神官の指示に従わなければならなかった。ノロは王家の女性からそのトップが選ばれ、琉球国全域をピラミッド式に組織されていた。ちなみにノロはあくまでも琉球国の役職名なので、現代にノロの末裔はいても、ノロは存在しない。

観光客に御嶽だと言ったら「パワースポットですね?」と言われてことがあるが、御嶽はパワースポットではない。神聖な御嶽は霊道でもある。その旨が記載された標識も掲示されている。近年は勘違いした観光客が押しかけて、ゴミをポイ捨てして帰るので、立入禁止になってしまった御嶽も何ヶ所かあるようだ。

個人的に斎場御嶽はあまり好きではない。観光地になってしまったというか、雰囲気がないというか、御嶽の入口から久高島が見えるところくらいしか、感動することもなかった。それよりも、同じ南城市内にある「浜川(はまがー)御嶽」の方が好きであり、人にもそちらをよく紹介する。ほとんど知られていない御嶽だ。

浜川御嶽は、ニライカナイ(海果てにある理想郷)から神様が沖縄に来られた時に、初めて上陸し、一休みした場所と伝えられている。小さな祠と、霊道を示す案内板と、湧き水が流れる小川。御嶽から石段を降りたところにある岩場とガジュマルの木には、梅雨明けになると沢山のオカヤドカリが登り始める。その先は百名(ひゃくな)ビーチだ。

百名ビーチ

沖縄では人の手が入っていない天然のビーチを「いちゃんだビーチ」と呼ぶ。ここもそうだ。最初に訪れたのは10年以上前。それからずっとお気に入りだ。トイレや着替えができる場所はないが、10台くらいは停められる駐車場があった。過去形なのは、最近になって駐車場ご使用禁止になったので、2〜3台しか停められないようになっている。カーナビで百名ビーチを検索すると、この駐車場と反対の行き止まりになっている道が案内されるらしく、観光シーズンには路駐した車が列になっていたりする。

とは言っても、列になっているのはたかだか数十台だ。ビーチの人口密度は大したことがない。いつ来ても、人がいないことはないが、せいぜい数名だ。泳いでる人は観光客しか見たことがない。ビーチでサンダルが砂まみれになっても、御嶽を流れる湧き水で洗い清めることができるから、車が砂まみれになることもない。

ここのビーチは沖縄には珍しい砂浜で、遠浅になっている。沖縄の場合、天然のビーチはサンゴが粉々に砕けて堆積したものが多い。粉々と言っても、砂つぶよりはずっと大きいので、裸足で歩くと結構痛い。海の中にもサンゴがあると、その端は鋭いので、裸足で海で入ったり、海の中で転んだりすると血まみれになったりする。

人工ビーチは沖縄本島にも何箇所かある。駐車場やトイレ、シャワーなどの施設が整備されているので便利である。バーベキューなどもできるようになっているところが多い。その分、人も多いので自然を楽しむというよりは、バーベキューやマリンスポーツを楽しむことが目的となっている。

対して、いちゃんだビーチは何も整備されていないために、自然が手付かずで残っている。百名ビーチでは与那国馬の体験乗馬をすることもできた。(現在は知らない。)与那国馬はポニーのような小型の馬で沖縄の固有種だ。海で泳ぐのが好きで、人を乗せたまま海に入って行く。尻尾を掴めば海の中を遊泳できるが、運が悪いと馬が糞をして、顔面を直撃するので注意だ。

百名ビーチの水の透明度は高く、波打ち際にはサンゴや貝殻が流れ着いている。すぐ隣には新原(にゅうばる)ビーチがあって、こちらはグラスボートで海の中を見ることができる。家族連れにはオススメだ。

百名ビーチも浜川御嶽も、個人的には大好きなスポットで、天気のいい時にはふらっと立ち寄ってしまう。そしてあまり人には教えたくない場所だ。ただ、中止が使えなくなったのは、長く使われていなかった宿泊施設の改装工事が始まったためのようなので、じきにここも有名な観光地になってしまうのかも知らない。そのとき、オカヤドカリたちは無事に生きていけるのか、少し心配だ。

大きなオカヤドカリ。全長10cmほど。

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