泳ぎイカの刺身
「泳ぎイカの刺身」と聞いてすぐに思い浮かぶのは、呼子に函館。実際に食べられる店で思いつくのは、やはり札幌と呼子と横須賀。特に横須賀は、子どもたちが小さい頃に、結婚前の嫁と4人で食べに行った。子どもたちはイカよりも、帰り道のブックオフに夢中だった気がする。
札幌では、ここ何年か泳ぎイカを食べていない。店に行っても入荷されていないのだ。理由は天候だったり、不漁だったりするが、食べられないことには変わりがない。新鮮なイカの刺身は格別だ。刺身は角が立ってるし、何と言っても色が透明だ。鮮度が落ちると身がだんだんと白くなる。弾力がなくなり、グニャグニャになる。
きみまろではないが、あれから10年。大きくなった子どもたちが、泳ぎイカを食べたいと言う。ここは東京だ。ならば同じ店に行くしかない。ネットで調べると、その店は存在していた。
新宿御苑駅近くのホテルに宿泊している娘と待ち合わせ、車で横須賀に向かう。今は新宿から神奈川方面へのアクセスがものすごく良くなった。
思い起こせば、今から30年前、当時住んでいた川越から伊豆に行くには、高島平から首都高に乗り、5号線で呉服橋、3号線に乗って東名からの小田原厚木道路といったルートで行くか、16号線をひたすら走り、八王子を抜けて厚木から小田原厚木道路というルートしかなかった。下道を走るために朝4時ごろに出発し、ぶっ飛ばしてなんとか3時間で厚木までたどり着かないとラッシュに巻き込まれる。
それが、今や圏央道が千葉から茨城、埼玉、東京、神奈川とつながった。新宿からも首都高中央環状線ができたので、羽田はもとより、東名、関越、東北、常磐道が近くなった。外環道が市川まで開通すれば、埼玉から湾岸へのアクセスがものすごく良くなる。都心を通らないで済むのなら、それに越したことはないのだ。
生簀屋 海 (いけすや かい)
初台南から首都高に乗り、湾岸線から横横道路を通って久里浜に。店に着いて記憶が蘇る。この店は駐車場が停めにくいのだった。一階から二階へと登る。いい天気なのだが、暑い。
え?活きイカないの?
ここまで来て帰れないし。
腹減ってるし。
生簀があるから他の魚が食べれるよと、娘も納得。
入口には多数の色紙が展示されている。
生け簀に周りにも席がある。
メニュー
私たちはお座敷に通された。早速、メニューを見る。
ランチにオプションで何かを頼むから、私は少な目に地魚丼にしよう。娘が質問する。
「お父さん、地魚ってなに?」
北京じゃ絶対に「地魚」なんて日本語を使うことはないか。娘に説明する。
「地元で獲れる魚のことだよ。」
子どもたちが小さい頃は、2人の食べ残しを私が食べていたから、自分の料理を頼むことはなかった。懐かしい。メニューを見つめていた娘が私の顔を見て言った。
「寿司御前にする。」
一番ボリューミーなのが来たな。
「あとね、アジが食べたい。」
娘が言うので、活け魚アラカルトをチェックする。
ふむ、アジの活け造りと、カワハギの薄造りをオーダーする。娘はカワハギ初体験だ。
奥の席では、私と同年代の男女5名ずつ、10名がランチを楽しんでいた。娘が尋ねる。
「お父さん、あれって合コン?」
違うと思うよ。
地魚丼
まずは私の地魚丼が来た。カツオが嬉しい。この辺りはタコも獲れるんだったな。若い頃、逗子沖でタコ壷をひっくり返してたや。温かいご飯の方が好きなのだが、この酢飯は悪くない。魚の鮮度は文句なし。ボリューム的にもちょうどいいくらいだ。
寿司御前
続いて娘の寿司御前。予想はついていたが、想像以上のボリュームだ。娘はこれを食べきれるのか。いや、無理だろう。娘が大好きな握り寿司から手をつける。寿司ネタの半分は北海道産ではなかろうか。それでもいい。娘は今回、東京にしか滞在しないのだから。子供の頃からイクラが大好きだった。今ではウニも食うようになったのか。ちょっと感慨深い。
アジの活け造り
味はプリプリ。小型でさほど脂はのっていないが、くどくないので刺身で食べるにはいい感じだ。もちろん臭みなどない。娘も美味しそうに食べている。よかった。
おお!カワハギがどどーんと登場だ。芽ネギを刺身で包み、ポン酢につけて食べることを説明する。肝が小さいのか、刻んで薬味のように添えられている。これも甘いから、少しのせて食べてごらんと、娘に勧めてみる。カワハギは弾力もあり、ほのかに甘みがあって美味い。きもは刻まれているが、甘みが強い。
「美味しいね。」
娘の笑顔に満足だ。
カワハギ唐揚げ
最後にカワハギのアラが唐揚げで登場。サクサクだ。
ビールがほしい!!!!
だが、今日は運転手だ。娘とデートだ。夜までガマンなのだ。
イカがないのが寂しい。
「お父さん、これ食べきれない。」
娘がちらし寿司を指して言う。だろうね。ネタだけ食べて、茶碗蒸し食べて、ご飯は残して構わないよ。
ああ、満足だ。やっぱり魚は日本で食べるのがうまいだろう?
娘は日本に来るとやたらと太ると言う。北京に戻ると、体重もじきに戻るらしい。食事の後、実家に向かう途中で寄ったヤオコー(関東北部限定のスーパー)で、食品を爆買いした娘だった。
生簀屋 海 公式HP
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)