埼玉県草加市 谷塚駅 まるや 二日目

今晩は決心していた。埼玉で魚を食べる。ならば昨日の店だ。昨晩はあまり腹が減っていなくて、前の晩に飲みすぎて、十分に店主の実力を堪能できなかった。おそらく二度と来ることはない場所だ。観光地でもない、中心地でもない、ただ子供の頃に一年ほど住んでいただけの、寂しい街だ。

店に入ると、目の前のカウンターに座った。さて、何を食べようか。まずは刺し盛りとポテサラだな。あとは何にしようか。そこに、新しい客が店に入ってきて、私の隣に座った。常連さんらしい。この店は基本的に地元の常連しか来ないようだ。その客がレバ刺しを注文する。

「少しだけ炙らせてください。」

店主が言う。なるほど。それなら私も乗らない手はない。

「私も牛レバーください。」

牛レバーも久しく食べていないな。二月に岐阜で食って以来か。はたして今日はシメ鯖が食べ割られるだろうか。

お通し

お通しは昨日と同じだ。いや、一品だけ違う。豆腐だ。昨日食べたかった冷奴だ。もちろん今でも食べたい。味付けは海苔佃煮。これもありだな。

酸味控えめのモズクは、口の中にかっこんでもウッとこない。沖縄人は二倍濃縮のお酢を使う人がいるせいか、たまに激しく酸味の効いた酢の物に出くわすことがある。中華にもそんな料理があったと思うが、喘息を治すための料理だった気がする。

マグロ漬け握りは完璧だ。きめ細かい身にきっちりと仕事がされている。口に入れるととろけるような滑らかな舌触りに、ほのかに香るワサビ。ご飯が味をきっちりとまとめ上げる。敷いてある大葉は、半分だけ食べるのが適量だ。

刺身盛り合わせ

いよいよ刺し盛りだ。見せてもらおうか、東埼玉の魚料理の実力とやらを。

タコの吸盤がコリコリして美味い。身もネットリとして甘い。臭みもない。タコが美味い。念願のしめ鯖は見た目は合格。私好みである。味の方はどうか。甘い。脂がのって鯖の味がぎゅっと濃縮された味わい。塩加減もいい。たまらん。これだよ、これ。クエはこんなもんか。マグロは赤身とトロの間か。脂のノリは控えめだが、細かい繊維が滑らかな口当たり。

クエは少し残念だが、あとは美味い。しめ鯖は最高だ。

炙り牛レバー

店主が中華鍋にサイコロ切りにした牛レバーを入れ、ごま油をかけて軽く炒める。小皿に敷いたオニオンスライスの上にのせ、ポン酢をかける。

「すいません、牛レバーは少なかったんで、値段も安くしておきます。」

私が乗っかったので、一人分の量が少なくなってしまったのだ。隣の客はいいとばっちりだな。すまぬ。

さあ、気を取り直して食べるとしよう。見た目は火が通っているが、中はレアだ。美味い。

ポテトサラダ

ポテサラが遅いなあと思っていたら、仕込んであるわけではなく、注文してから芋を蒸している。できたてのポテトサラダはなかなかないぞ。

そうして差し出されたポテサラは初めて見るスタイルだ。斬新だ。ポテトはマッシュではない。サイコロ切りだ。ゆで卵も大きめ、キュウリはスライス。とびっ子で和えてある。プチプチの食感が楽しい。玉子の黄身を潰してとろっとろのサラダ。まるで冷製シチューを食べてるような錯覚に陥る。

お腹いっぱいだ。

ごちそうさま

カウンターは地元客オンリーだ。この後に地元のおばさまたちの会話に加わり、昭和の話で盛り上がった。楽しい時間を過ごしていたら、あっという間に午前様になってしまった。明日も朝から春日部だ。慌てて店をおいとました。

美味かった、楽しかった。

おやすみなさい。