ヤエチカランチ
東京駅八重洲口の地下一帯に広がるダンジョンをご存知だろうか?六厘舎や斑鳩などの有名店がひしめくラーメンストリートだの、ガンダムカフェやウルトラマンショップなどが立ち並ぶキャラクターストリートだのが存在し、飲食店から金券ショップまで揃う地下街は、このように呼ばれている。
ヤエチカ、と。
札幌駅をサツエキ、名古屋駅をメーエキ、デパートの地下食品売場をデパ地下、駅の中にある店をエキナカと呼ぶのであれば、八重洲地下街はヤエチカとなる。
おおおおおおおおおおおお!!!!なんて短絡的で安直で中途半端で浅はかで無思慮でひねりの無い発想なのでしょうかあああああああ!
あなた、怠惰ですね?
15時から八重洲で開催される会議のために、午前便で沖縄から羽田に飛んだ。モノレールとJRを乗り継ぎ、ここ、八重洲へと来た。ここでしか飯を食うタイミングがない。飲食店が立ち並ぶヤエチカに東京駅一番街にグランフロント。これだけあれば食べたいものがあるだろうと、この時、軽く考えていたことは否めない。
グランフロント 蕎麦ダイニング 噺屋
さて、何を食べようか。いざ、飲食店街を歩いてみたが、食指の動く店が見当たらない。寿司はいらない、カレーも嫌だ、エスニックは本日パス、干物も…うーん、これだけ店があるのに、どうして私の食欲を刺戟する料理が見当たらないのだろうか。
そんな私の目に飛び込んできたはお昼のおすすめ、ミニ天丼と蕎麦セット。
ほう?
しかも二八蕎麦とあるではないか。よし、この店にしよう。
メニュー
テーブル席に案内され、メニューと対峙する。お昼の献立はお昼のセット、冷たい蕎麦、温かい蕎麦の3グループに分かれていた。もちろん、ターゲットはお昼のセットである。しかも蕎麦屋の食事であれば、メインはあくまでも蕎麦である。ミニ蕎麦は受け入れられない。ならば選択肢はミニ天丼と蕎麦セットしかありえない。初心貫徹なのである。
オーダーしてからふと思った。日替わりはミニ蕎麦でなかったかと。いや、そうであったとしても蕎麦とマーボー丼は反則技だ。そこまでして麻婆豆腐が食べたいものだろうか。ここヤエチカのALPSではマーボーカレーが有名だ。食べてみたが、確かに有りだ。どちらも辛い。だが、蕎麦と麻婆豆腐には何一つ共通点がない。まさにビーンボール。味噌汁とラーメンのようには行かないのだ。
待てよ、どこかで麻婆蕎麦なるものを見た記憶がなかろうか。ネットで調べればすぐに分かるが、調べたくない気持ちが強い。世の中には知らなくていいこともあると言うことだ。五十路ともなれば、知的好奇心に突っ走って要らぬ知識を得ることもないのだ。店内に流れるBGMは渋いジャズボーカル。蕎麦が来るのをひたすら待つ。
ミニ天丼と蕎麦セット
運ばれてきたランチはビジュアル的に少しガッカリだ。少し太めの蕎麦は期待できそうにない。天丼は良さそうだが、漬物はあまりにも雑だ。薬味のワサビを舐めてみる。生のおろし立てのようだ。
さっそく蕎麦をいただいてみる。ん?コシがあるが伸びはイマイチ。喉越しは悪くない。香りも良く見た目よりも味の良いのに驚く。つゆは辛口なので、つけすぎないよう気をつける。少しすすりにくいが、この太さでは仕方がないか。おそらく温かい蕎麦を食べるの客も少なくないだろう。
ミニ天丼。衣が少し多めの蕎麦屋の天ぷらだがサクサク。かぼちゃはホクホク、ナスはしっとり。甘さ控えめのタレは量が控えめなので、ご飯がべちゃべちゃしない。硬めに炊かれたご飯との相性もバッチリだ。酸味の効いたきゅうりの漬物がアクセント、やもすれば単調な味わいにアクセントを与えてくれる。これが浅漬けならばもっとハッピーになれただろう。
テーブルの上には爪楊枝がないので、店員にオーダーする。蕎麦湯もオーダーすれば持ってきてくれる。
ごちそうさま
蕎麦湯を蕎麦猪口にたっぷりと注ぐ。一口飲む。ああ、スープである。ほんのりとした上品なわさびの香りが鼻を抜ける。これは生ワサビでなければ嗅ぐことのできない、マイルドかつリッチな香りだ。粉わさびもチューブわさびも、どうしても単調な辛みが立ってしまうのである。
やはり東京の地下で食べる蕎麦はこんなものか。東京は本当に美味しいものを食べるのに苦労する街である。そろそろ地下から脱出してランチを食べるべきなのだろう。次回からは新天地を開拓するのだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)