東京朝食
最近は出張の宿泊を素泊りにしている。朝飯を抜くことでカロリー削減を実現しているのだ。効果が出るかどうかは分からないが、おそらくランチでガッツリ食べて、総カロリー量は変わらない気もする。
だが、昨晩は帰りが遅く、飲んだわけでもないので、翌朝のことを考えて晩飯を軽く食べただけであった。フルーツを食べたくらいだろうか。いつもとは逆のパターンなので、昨晩に逸失したカロリーを朝食に補給するのは、理論上、何の問題もあるまい。
あるまい。
きっと無いだろう。
弱気になってはダメだ。※坂本龍子のように愚直に前向きに前向きに生きなければ、人間はダメなのだ。
※「凪のお暇」に出てくる人物
さて、何を食べようか?
この界隈の朝食の選択肢など、数えるほどしかない。言ってみればうどんか蕎麦か、である。
うどん屋と蕎麦屋しかないのである。
モーニングがあるではないかと言う人もいるだろう。私はサンドイッチやトーストを朝飯とは認めぬ。それならばコンビニで買って部屋で食えば良い。だが、昨晩もコンビニ飯だったのだ。二食続けてコンビニの世話になるのでは、私の人生、何のためにあるのかと、暗く、悲しく、陰鬱に、再び後ろ向きになってしまう。
コンビニ飯と言う人生の闇から抜け出し、我が人生の新しい一歩を刻むためにも、今は外食するしかないのだ。
吉そば
ホテルの近くの立ち食い蕎麦。店頭を通るたびに鼻をくすぐる、そばつゆの香りが以前から気になっていた。
朝から炭水化物の塊を食べるのは、今どきの五十路にはそぐわないとは思うが、昨晩はカロリーを摂取していないからいいのだと自分に言い聞かせる。そう、自信を持つんだ!今日はいいのだ。そうそう、知人が3年くらい言い続けている名言があるではないか!
「ダイエットは明日から。」
死ぬまで先送りする気なのだろう。
メニュー
かき揚げ蕎麦、鉄板だな。さすがに朝からセットメニューはハードである。
店内に入る。これまたお約束の券売機だ。だが、気兼ねはしない。僕の前に人はいない、外の道にも誰もいない。早朝の東京は静かだ。慌てず焦らず、ゆっくりと食券を購入すればいいだけだ。
コインを入れると私の指先は迷わずにかき揚げ蕎麦、そして忘れちゃならないトッピングは温泉たまごである。
店内
食券をカウンターのスタッフに渡す。さて、どこに陣取ろうか。店内に客はいない。貸切だ。一番奥の席を確保する。
AMラジオから星野源の曲が流れる。日常、いいなあ。8年前の曲だ。
静謐な空気に満ちた、贅沢な空間を独り占めして朝食に備える。 私の蕎麦が出てくる、その瞬間をひたすら待つ。現在時刻は7時39分。朝のAMラジオなんて久しぶりだ。そもそもAMラジオ自体、理髪店か地方の定食屋でしか耳にすることがなくなった。タクシーですら最近はドライバーが好みの音楽を流したり、タブレットがカメラで顔の客を認識し、最適と思われるCM動画を流す時代だ。
かき揚げ蕎麦 温玉トッピング
スタッフの呼び出しによりカウンターに出向く。蕎麦を受け取ると、陣地に戻る。お盆をテーブルに置き、椅子に座る。さあ、準備万端である。
まずはつゆを一口。少し甘めだな。七味を入れればびりっと締まる。
蕎麦を食べる。コシがある。喉越しも悪くない。立ち食いのレベルではないな。小諸そばや富士そばよりは上だと思う。
天ぷらもあまりつゆにほぐれない。衣が溶けてデロデロになると、もう汁を飲んでるのか油を浴びているのか分からなくなるからだ。
どんぶりが最後まで冷めない。そばもつゆも温度をキープしたままである。温玉は一気に食す。ほんのりと君の甘さが口の中に広がる。
ああ、至福の一杯、昨夜の失敗が嘘のようだ。空腹は精神を困窮させ、満腹は人に幸せを与える。血糖値がこれほどまでに精神と結びついているとは。人間はなんと卑しい生物なのだろうか。
とにかく、腹も心も満ちたからええやんけ。食器を返却して店を出た。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)