蕎麦 一心たすけ 紅生姜天玉そば

東京駅日本橋口 蕎麦 一心たすけ 紅生姜天玉そば

モーニング蕎麦

午前10時、呉服橋交差点近くのホテルをチェックアウトした。朝食付きのプランであったが、朝からハンバーグとチーズフォンデュと言うメニューに躊躇した。昨晩はふざけた居酒屋で呑んでからホテルに戻り、部屋で缶角ハイボールを飲んだだけだ。大した酒量でもないのに体調が悪い。吐き気がする。それも二日酔い独特のやつだ。変な酒を飲んだ時に起きる現象だ。

そんな訳で朝食をスルーしてのチェックアウト。何か腹に入れたい。昨晩、夜道を歩いてきた時に蕎麦屋が三軒連なっているのを見かけた。一軒は大きな看板が遠目からも確認できる。早い、安い、うまいと書かれている「よもだそば」である。そばの店なのに「本格インドカレー」を売りにしている謎の店である。

だが、それよりも隣の「蕎麦 一心たすけ」が気になった。新幹線までは時間がある。朝飯は蕎麦と決めた。先ほどまで、昼飯は福井県で越前蕎麦を食べようとしていたのに、東京で立ち食い蕎麦を食べる、この節操のなさが私のいいところなのである。

蕎麦 一心たすけ

店頭のメニューを見る。一押しは天ぷらそばか。であるならば、私は天玉蕎麦にしようではないか。

店内に入ると食券機と相対しなければならない。現金しか使えない。すでに心を決めているのでなに問題はない。

私の前に人はいない、私の後ろに誰もいない。のんびりと焦らず金を投入し、確実にボタンを押すのだ。

カウンターで食券を渡すと、温かい蕎麦であることを伝えた。

「天ぷらなんにします?」

ん?この中から好きなものを選べというのか。なるほど、店頭に書いてあった「お好みの天ぷらを一つ選べ!」と言うのはこのことだったか。

立ち並ぶ天ぷら群を一瞥し、一番無難なかき揚げに決めた。なかなかのボリュームなのだ。玉子は生と温玉からチョイスできる。温玉を選んだのは言うまでもない。

「これから蕎麦を茹でるので、しばらくお待ちください。」

なんと、注文のたびに蕎麦を茹でるのか!客は常に茹でたてにありつけるシステムなのか!ゆで太郎でさえ、こまめに茹でた蕎麦を作り置きしている。立ち食いではあるが、本格派である。お湯で溫めるだけの袋そばよりも、生蕎麥の方がうまいに決まっている。嬉しい誤算だ。時間がないから早く食べたいが、茹でたてにありつけるなら待つのが道理。乗り遅れたら次の新幹線に乗ればいいだけだ。

注文を済ますと店の奥に進んだ。客は誰もいない。私一人のために蕎麦が作られている。誰もいない店内。のんびりと時間が過ぎる。新幹線の時間が迫っていることなどすっかり忘れてきた私の視界に、信じられないものが飛び込んできた。

紅生姜だと?

ああ、無難にかき揚げを指定してしまった後悔の念と、今さらながら紅生姜を見つけてしまった焦りが交錯する。まだ間に合うか?変更可能か?交渉してみる。

快く引き受けてくれた。

後から入ってきた客も紅生姜を選択した。そうだよな。紅ショウガ天、旨いもんな、クセになる。

紅生姜天玉そば

カウンターで私の注文がが読み上げられた。取りに行く。待った甲斐があっただろうか。蕎麦はかなり細い。茹で時間を短縮するためだろうか。個人的には細い蕎麦が好きなので、無問題。袋そばがメインの立ち食いそばならば太麺が定番。これまた嬉しい誤算である。

少し薄口の蕎麦つゆ、熱でしんなりした薬味のネギが香ばしい。歯触りを残しつつ、刺激成分の硫化アリルは熱々のつゆによって熱分解され、甘みと化した。麺は細め。これなら冷たいのを食べても旨いだろう。天ぷらは冷めていてもカリカリ。口の中に紅生姜独特の香りと味わいが広がる。いいなあ。

また客が入ってきた。

「麺、半分で。」

そんなこともできるのか。

温玉は一気に食べる。黄身の甘さが広がっていく。

蓮華はカウンターにいえばくれる。スープの追加も可能だ。いろいろと他店にはない、きめ細かさがウリなのだろうか。立ち食いそばと侮るなかれ。そこそこに満足して店を出た。さて、加賀温泉に向かうとしよう。

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