品川駅 品達ラーメン 翔 牛・鶏・ホタテの白醤油ラーメン

ランチはチャンス

ついに地獄のロード、久しぶりの七泊出張が始まった。第一日目は沖縄から東京である。ランチを済ませて東京オフィスに顔を出し、そのまま会議。その後は静岡に向かう。宿泊は静岡市だ。夜はおそらく懇親会なので、食事には期待できない。美味い店に連れていかれるだろうが、大人数のコース料理では満足な食事ができない。

食事よりも会話に終始して、料理には手をつけなかったり、好きなものが食べられなかったりと、踏んだり蹴ったりなのである。おまけに人が多いから料理の写真は撮れないし、味の方もメモができないから、懇親会で訪れた店は記録を諦めているのが現状なのだ。

ホテル飯に懇親会、いずれも私の意思など一ミリも付け入る隙もなく、一方的に押し付けられた食事を受け入れるしかない。嫌ならば食べなければ済む話であるが、その場合、間違いなく空きっ腹で二次会に連れていかれ、撃沈することになる。たまに出前で寿司をとったりすることもあるが、すべての店でこの手が使えるとは限らない。

結局は空腹に負けて、いやいや食べるのである。これも仕事と割り切るのである。早い時間に好きなものを食べておけばよかったと後悔するのである。これを悲劇と言わずして、なんと呼べばいいのだろうか。

だからこそ、ランチは重要だ。私が自分の意思で食事の決定権を持つことができる、数少ないチャンスなのだ。無駄にしてはならない、貴重な機会なのだ。好機なのだ。慶次で言えば、キセル登場の激アツリーチなのだ。ハズレたらヘコむのだ。

麺屋 翔 品達店

空港から港区芝のオフィスに行くには、モノレールが早いように思えるが、浜松町のバリアフリーの酷さはなかなかのもので、最近はモノレールを敬遠している。浜松町乗り換えならば便利なのだが、降りるには不便な上に疲れるのだ。数年前、乗り換えの利便性を高めるために乗降客の利便性を犠牲にしたのだ。なので、最近は京浜急行で三田まで行き、三田線に乗り換えて芝公園で降りる。この駅もバリアフリーが良好とは言えないが、浜松町よりはマシである。

すると品川駅を通ることになる。ならばランチは必然的に時間的に品川で食べることになる。新幹線口のatréの飲食店街をあるいてみたが、私の中にくすぶる食欲を刺激する店がなかった。ふと、品達でラーメンをたべるのもいいかなとと思い、駅から歩いて向かったのだ。

さて、どの店にしようか。見て回る。そうだ、前回どちらにしようか迷った、鳥出汁ラーメンがあったな。ん?三周年?気になるぞ。まだ11時半にもなっていないのに行列ができている。しかも常連さんが多いようだ。店員とにこやかに会話している客も少なくない。

まずは食券を買う。たまたま、限定品の日だそうだ。三周年。偶然に限定、素晴らしい組み合わせだ。ならば本日一日限定、三周年記念、三百食限定メニューを食べずして、なんのために私はこの場に居合わせたのか。なんの迷いもなく食券のボタンを…を…ホタテ飯セットだと?

ここで迷うのか?

うーん、いや、飯はやめておこう。ラーメンとスープをじっくりと堪能させてもらおうではないか。

相席の広いテーブルに通された。店内はお祝いムードだ。三周年の記念ステッカーが配られた。窓ではないが外の明るさがほどよく入る場所だ。撮影的にもいい場所である。曇ってビニールが外からの光を和らげてくれる。私の向かいに座る客は単なる常連客ではないらしい。店主が挨拶に来て、いつも手厳しいと話していた。評論家だろうか。

牛・鶏・ホタテの白醤油ラーメン

五分ほどでラーメンが運ばれてきた。向かいの男性にも同時だ。早速写真を撮る。向かいの男性もスマホではなくデジカメで撮影していた。やはり只者ではないようだ。対して私はただの素人だ。

まずはスープを一口飲む。なんだか、ホワンとした不思議な味のスープだ。

ん?

スマホで撮影した券売機の画像を確認する。そう、牛・鶏・ホタテの白醤油だ。見た目は鶏出汁の醤油ラーメンに見えるのだが、まったく異なる味わいだ。もう一口。そうだ、これは牛骨ベースだ。防府で食べた牛コツラーメンにも似た、独特の香りがするではないか。加えてホタテの香り。ホタテ出汁は日本人にはあまりなじみがないかもしれないが、中国、特に香港ではメジャーである。お粥の出汁としてホタテ貝柱を使ったものが有名だ。大地と海の豊饒の恵みが合わさったスペシャルなスープ。

しかし、牛肉とホタテでは喧嘩になる、個性的な二人の仲を取り持つのが、あまり自己主張しない鶏スープなのだろうか。スープには油が浮いているが、さっぱりしている。鶏でも牛でもない、植物性の油のように感じる。動物性の油脂ならば、もっとコッテリしていると思う。ああ、なんてバランスの取れたスープだろうか。しかも、ラーメンにはなじみの薄い素材を見事に生かした、お祝い事にふさわしいスープと言えよう、と上から目線で言ってみる(笑)

麺はまるで手延べうどんのような滑らかさ。のど越しがいい。もちろんコシもある。だが、ラーメンだ。スープがしっかりと絡み、麺と一体化する。これは美味い。薬味の赤タマネギが香り良く、シャキシャキの食感と相まって、いいアクセントになっている。そう、玉ねぎは使い方次第で青ネギよりも料理を引き立てるのだ。

箸でどんぶりを軽く混ぜてみる。中から現れたのは三種類の肉だ。すべてが、まるでミディアムレアのような、美しい、それでいて個性のあるピンク色をしている。まずはハーブ薫る鶏チャーシューから食べてみる。なんだ、この柔らかさは?続いてはローストビーフ。肉の旨味を凝縮した、力強い味わいのする、肉質の柔らかいローストビーフ。

そして最後の一枚。薄いピンク色をしたその姿は、まるで熱で上気した若い女性の肌を彷彿とさせる。舌触りはシルクのレースのように薄く滑らか、口に入れればとろけるような、しゃぶしゃぶ肉を使った官能的な一枚の肉。これはあり得ない。お祝いの席にふさわしいラーメンだ。コスト度外視だろう。

大きなエビワンタンが二つ、しっかりと濃縮された、やもすると干しエビではないかと思うくらいに濃厚なエビの味に、かすかな大葉の香りが清涼感を与えている。

このスープは最後の一滴まで飲み干さなければならない。完食なのだ。やはり激アツリーチは外れなかった。しかもプレミアを引いたようなものだ。

出張一食目からついている。幸先が良い。今回の旅も、良い結果が出そうな気がする。身も心も満足して、品達を後にしたのだった。

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