韓国料理居酒屋 ボクデン
ビリヤードをしていたせいか、あれだけスキヤキを食べたのに腹が減った。全員、ベロベロかヘロヘロなのだ。そうして連れて来られたこの店は韓国料理?
なぜに?
平日深夜の締めに、ここでメシを食う必然性も必要性も理解できなかったが、連れて来られたから黙って従うことにする。本日はスポンサーがいるのだ。おごってもらうメシは美味いのだ。
後ほど分かったのだが、この店の総本店は岡山市にある。スポンサーと同郷である。それで連れて来られたのだ。
ひとり、おっさんがつぶやく。
「辛いの持ってきて。」
彼は激辛マニアであったろうか。アホな酒の飲み方は何年も見ているが、辛いものを食べるイメージのかけらもない。むしろ、玉子かけご飯にかける玉子をほとんど混ぜずに食べるイメージの方が強い。
韓流ビビンクッス温泉玉子添え
そうして出てきたのは汁なし冷麺。いわゆる、ビビンネンミョン(冷麺)だ。この店では「韓流ビビンクッス温泉玉子添え」と称している。数名でシェアする。うん、味に深みがある。甘みもある。そして適度に刺激的だ。店がイチオシというのも分からんでもない。美味いな。全員で完食だ。
ちなみにビビンクッスとは冷麺ではなかった。クッスとはうどんのようなものを指すらしい。そういえば「カルククス」も韓国の麺料理だ。調べてみると、ククス(クッス)とは麺をこねて伸ばして包丁で補足切ったものであり、冷麺やパスタのように穴の開いた容器からにゅるにゅるんと押し出した麺とは種類が違うとのことだ。
ソルロンタン
あのさ、なんで締めに辛い物を求めるんだ?もっと胃に優しいものを頼もうよ。ほら、ソルロンタン。二日酔いの時にもこいつが効くんだよ。
純豆腐鍋(スンドゥブチゲ)
再びオッサンがつぶやく。
「もっと辛いの持ってきて。」
やっぱり激辛マニアだったのだろうか。店員にメニューを訪ねる。一番辛いのは緑唐辛子入りのスンデゥブチゲである主張する。純豆腐(スンドゥブ)鍋(チゲ)か。
ならばそいつを持ってこい。
数分で運ばれてきた。さあ、見せてもらおうか、一番辛いとチゲとやらを。
うーん、あさりの入った優しい味。美味い。大して辛くない。
江南辛麺(カンナムメウンミョン)
再びオッサンがつぶやく。
「もっと辛いの持ってきてよ!」
何かイラついているようだ。先ほどから、辛いものを頼んでいるのに、客を満足させられない店に嫌気がさしてきたのか。普段は温厚な人間だが、酒が入るとワガママになるのは仕方ないか。
いや、私も同意見なのだ。言わせてもらおう。
うぬの力はこの程度か。
その言葉は、ついに禁断のベールを開けてしまったようだ。店員なのか店長なのか分からないが、調理場に引っ込むと、しばらくして持ってきたのは、まごうことなき激辛麺。その名も「江南辛麺(カンナムメウンミョン)」。
ってか、これ、食べ物?
まあいい、味わってみようではないか。一口食べる。
辛っ!
なんだよ!やればできる子じゃんかよ。最初からこれを出せよ。そうすれば無駄な血を流さずに済んだものを。
そんなもの、いつ流した?
ツッコミはなしだ。無視だ。とにかく食べよう。つぶやきおじさんも嬉しそうにむせってるぞ。
ドMか?
こいつは私一人の手に負えない。皆で力を合わせて難局を乗り切るのじゃ。
食べたぞ。食べきったぞ。どうだ!もっと辛いの…は、もういい?満足?
あ、そう。
ごちそうさま
じゃ、帰ろう。もうすぐ午前三時だよ。
店長は我々をいたわって、激辛をあえて勧めなかったものを、我々酔っ払いが追い詰めたから、店長に最終兵器を出させる羽目になってしまったのだ。
なんだか、最近は締めが激辛の日々が続く。二日酔いよりも痔の心配をしないといけないような気がしてきた。
いずれにしても、締めはもう少し消化器系をいたわるようなものにしよう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)