山形牛 すき焼き

天童市 ほほえみの宿 滝の湯 天童ダイニング 木もれび

三度目の滝の湯

18時開始の会議に間に合うように伊丹乗り継ぎで山形空港へ。飛行機を降りたらタクシーで滝の湯へ向かう。三度目の訪問になるが、一度目は知人の車で宮城県から入った。帰りも車で通称さくらんぼ街道を走った。途中でサントリーの交渉にも立ち寄った。二度目は山形新幹線に乗った。三度目の今回は飛行機だ。前回、この地を訪れた時に空港からのアクセスが便利だと聞いた。

機内から見えた立山火山、後ろは中央アルプスと南アルプス

東京からであれば新幹線もいいだろうが、沖縄からであれば、飛行機を乗り継いだ方が楽である。ただ、乗り継ぎのタイミングは良くない。伊丹空港で二時間以上の待ち合わせとなるが、それでも新幹線に乗り換えるよりは速いのである。

空港から宿までは10分ほど。フロントでチェックインを済ませて、部屋に案内される。右足が痛むので、荷物を運んでもらえるのはとてもたすかる。荷物を置いてダウンを脱ぎ、パソコンの入ったカバンを持って会議室に向かう。あと3分で18時。ゴルゴ13並みに時間にぴったりだ。会場に着き、スタッフに案内された会議室のドアを開けると、私以外の全員が揃っていた。

あれ?

しかも、会議はすでに終わったような雰囲気だ。社長が私を見て言った。

「遅いよ!」

あれ?18時開始だよね、何度も確認したよね、どうなってるの???

「実は早く着いたので、みんなに早めに集まってもらって、会議を済ませちゃったんだよ。」

はあ。そしたら、私は何のためにここにきたのですかね?

「すき焼き食いにきたんだよ。」

そうなんだ、今日の会食はすき焼きなんだ。でも、記録がないと困るので、会議してるふりしてください。秘書にカメラを渡して撮影してもらう。全員で会議のポーズをとる。社長、私をにらんで指差すのやめてください。

そんなこんなで18時10分には別室で会食が開始されたのであった。

この宿の若社長、広島さんと社長はとても仲がいい。私と広島さんはそこそこ仲がいい。そして、社長はここのすき焼きが大好きなのである。本日のコースはすき焼き、肉は山形牛。料理自慢の宿だけに期待も高まるというものだ。

天童ダイニング 木もれび

まずは先付け。ひな祭りをあしらった食器がかわいい。そうか、明日はひな祭りだ。妹の誕生日だ。もう三月なのだ。宇宙戦艦ヤマト2022の第七章も封切られたのだ。あれほど楽しみにしていたのに、おそらく来週まで鑑賞する時間はないだろう。ネットでネタバレを検索すると、文句ばかりだ。

しかもなぜ、上から目線で感想を書くのだろうか。私もオリジナルにハマった世代だが、2199も2022も素晴らしく面白いと思う。しのごの言わずに素直に楽しめばいいのに、めんどくさいやつらが多いから、監督が感想をシャットダウンしてしまうのだよ。

まずは食前酒の紫蘇のお酒で乾杯なのだ。さて、先付けをいただこうか。

ふきのとうみそ 白ごま。うーん、苦味が春の訪れを感じさせる。いいなあ。天ぷらも食べたいなあ。山菜が売っていたら、お土産に買いたい。ほうれん草 子持ち昆布 旨だしは上品な味付けだ。まさに旨ダシだ。出汁だ。サザエ 山朝月 辛子みそ。うん、クセのないサザエと辛子味噌が良く合う。さらに朝月の香りが鼻を抜け、味わいを広げる。いいねえ。ニシン焼き、魚の甘さといくらの塩加減が絶妙。干し柿は甘いけどデザートでなく先付けである。

考えてみれば、この宿で食べたのは宴会料理ばかりだ。このような料理は初めてかもしれない。

「温泉って言うと宴会ばかりと思われるけど、うちが本当に得意なのはこう言う少人数の料理なんですよ!」

広島さんが解説する。うん、もっと自慢していいよ。

ここにとんでもない酒が持ち込まれていた。濁り酒。しかも瓶が重い。おかゆ並みにドロドロの濁り酒である。だが、美味い。これはヤバイ酒だ。ああ、何かいぶりがっこみたいなものはないのか?

「クリームチーズの漬物ならありますよ。」

なに?鶴岡の漬物屋が作った、クリームチーズを酒粕につけて寝かした逸品だと!それは食べなきゃダメだ。蔵王チーズ粕漬。箸で端を切り、酒に続いて口に入れる。

すごく合う。これはやばい。このチーズ、買いたい。妻も喜ぶ。

かいもち揚げ蒸し ゴマだれ。蕎麦がきを蒸して揚げたものだ。全体はかりふわ、中はもちとろ。ゴマだれの甘みと香りがもっちり蕎麦がきによく絡み、魅力を引き出す。コゴミがアクセントだ。

今度は山形ワインのスパークリング。辛口のスッキリとした味わいだ。さすがにシャンパンには敵わないが、十分に美味い。すき焼きによく合う。この店には山形県内のすべてのワインが揃っているそうだ。

山形牛とすき焼きと

すき焼き柔らかい、脂程よい。卵の甘みとダシの旨味と肉の甘み。山形牛、しつこくない。ややまったりでさっぱり、、いくらでも食べれる。おかげでこの後のメニューは放棄することに。煮過ぎないように、ピンク色の肉の口当たりが滑らかで、軽く混ぜただけの生卵をよく絡めて食べる。口の中に牛脂の甘みと肉の旨味、卵のやさしい甘みとコクが相まって、すき焼きの極意をしっかりと味わえる。

「肉をしっかり火を通した方がうまいんだよな?」

なに?そんなゴワゴワでは口当たりも悪く、旨味も抜けてしまうではないか。まるで出汁に使ったような肉など、年寄りの肌と変わらぬ。零歳児のゆうたまのお尻のような、モチモチで滑らかな肉こそがすき焼きの真骨頂と言うものだ。

「なんかね、一枚食べたら満足だよね。」

出た!霜降りはもういいよ的な年寄りアピール。否、この脂の旨味こそが、和牛の和牛たる所以ではないか。私は何枚でも食べるぞ。胃に入る限りは食べ尽くしてやる。

ああ、至福。

うむ、もう無理。さすがにお肉のお代わりはいいです。八枚くらい食べた気がする。一枚40グラムとして、300グラムオーバーだ。

すき焼きでは終わらない罠

そこに芋煮。私は頼んでない。のに、なぜ私の前に置かれているのだ。頼んだやつが責任とれ。え?社長。あはは、いただきます。一口、二口食べてごまかそう。まずはスープから…なにこれ。芋も食べてみよう。

美味い。

七味の刺激と汁の甘み、肉の旨味とコク、芋の食感とトロトロ野菜。これらが一つになって豊かな味わいが口の中に広がる。

食べてまうがな!

気がつけば、芋煮のお椀はカラとなっていた。いや、もう無理。は?あと三品も出るって?

ごめんなさい。もう食べられません。

トイレは店の入口付近にある。温水洗浄便座だ。

ご飯もパス。デザートだけは食べてみよう。ほう、酸味も甘みも爽やか、おっさんの口に合う、これはたまらん。

満腹だ。お腹いっぱい。本当に、もう食べられません。

もう少しけいたまとゆうたまが大きくなったら、家族で遊びに来よう。サクランボの季節がいいだろう。

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