飛騨牛握り

岐阜県高山市 坂口屋 飛騨牛にぎり寿司と蕎麦

ランチへの誘い

ホテルの部屋で仕事をしていたら、LINEが入ってきた。

「一緒にランチを食べませんか?」

昨晩一緒だった真椎さんは、朝から下呂温泉に行くという。とは言っても、午後三時からは会議だ。このために私も真椎さんも高山に来たのだ。私たちだけではない、全国から300人余りが会議に参加する。私や真椎さんのように遠方から来る人は、どうしても前日入りすることが多くなる。せっかくだからと、空き時間を使って観光する人も少なくない。その土地でお金を使うことも大事なことだ。真椎さんは温泉に行き、私は部屋で仕事をしていたのだった。

LINEは可愛い女性からではなく、同じ会議に参加する押田さんからだった。どうも一人のようだ。彼は役職付きなので、いつもは御付きが一緒なのだが、今回は単独行動らしい。断る理由もないので、一緒にランチを摂ることにする。やはり単独で前乗りしていた忍野さんも合流すると言う。

今日のランチ会場は坂口屋。昼間しか営業していない、古民家を使った店舗だと言う。何を食べるかは店に着いてから考えるとして、せっかくなので少し街を散策してみる。

ホテルでの出来事

前日にホテルから「明日の清掃は何時がよろしいでしょうか。」と尋ねられたので「11時」と答えたのだが、11時前にけたたましくドアを叩かれ、下着姿でいた私は、服を着てからでなければドアを開けることができなかった。そんなことはおかまいなしにドアをだんだん叩いてくるので、焦るは驚くは、勝手に入って来るんじゃなかろうかと思ったくらいだ。

ドアを開けると不機嫌そうに清掃係が「もう掃除していいですか。」と言うので「もうすぐ出かけるから。」と伝えると、ドアノブに吊っておいた「起こさないでください」の札を無言で裏返していた。

なんだ、このホテル?
感じ悪いなぁ。

街を散策

街を歩くと、ここが観光地であることを実感させられる。しかも国際観光地だ。世界中から観光客が集まっている。そして、スーツで歩く私が浮いた存在だと言うことも思い知らされる。

暑い。ジャケット邪魔だ…

駅の方から川に向かう。橋を渡ると古い街並みがある。川は涼しい。天気もいい。客待ちの人力車が並んでいる。この辺りは「伝統的建造物群保存地区」となっていて、昔の街並みを再現するように厳しい規制がかかっている。多分、これでも観光客が少ない方なのだろう。味噌や醤油といった伝統的な食品から現代風のB級グルメまで、様々な店が並んでいる。

御食事処 坂口屋

街並みを進んでいくと、行列のできている店に出くわす。

「飛騨牛握り寿司」

なかなか美味そうだ。薄いえびせんのようなものに握りが二貫載っている。見た目はうまそう。家族連れが夫婦で寿司を食べると子供にせんべいを渡していた。なんと、ここが目的地だ。

忍野さんは先に着いていた。やはりスーツを着ている。しばらくして押田さんが現れた。やはりスーツだ。

観光地にスーツの3人組は似合わないなぁ。

これだけ人が並んでいる店だから混んでいるかと中に入ると、店内はさして混んでいなかった。古民家、築140年だと言う。お座敷に通されると3人でメニューを選ぶ。私は事前にウェブで情報を仕入れ、手桶そばに決めていた。それにせっかくなので飛騨牛握り。押田さんはハンバーグと飛騨牛握り、忍野さんはこも蕎麦と飛騨牛握りをオーダーした。

ハンバーグ

見た目にはうまそうだ。一口食べて押田さんが言う。

「ハンバーグにしちゃうとさ、旨い肉だってことはわかるけど飛騨牛かどうかは分からないよな。」

同感だ。一口いただいてみる。まったくだ。甘みと深みのあるデミグラスソースがハンバーグにマッチして肉の旨みを引き出しているが、普通に美味しいハンバーグだ。

手桶そば

麺は細くてツルッとしている。喉越しも良く、見た目にも美しい。かえしは甘め。蕎麦湯がうまい。昨晩がこってりしていたので、清々しいくらい美味しく感じる。

こも蕎麦?

忍野さんの「こも蕎麦」。実は名前がうろ覚えだ。しかも、ウェブを見ても該当するメニューがない。季節限定だろうか。冷たい蕎麦の上に飛騨牛、海苔、温玉、さやえんどう、トウモロコシ、サツマイモ。そして赤巻きにこも豆腐。赤巻きは北陸地方のかまぼこだ。8番ラーメンの上に載っているやつか。こも豆腐は飛騨地方独特の豆腐だ。

飛騨牛握り

プレミアムの肉が売り切れで普通のみ。美味いけどこんなものか。昨晩のステーキのインパクトが強すぎて感動が起きない。

場所も雰囲気もいい。メニューもリーズナブルでコスパも悪くない。飛騨に来て、最初にこの店に訪れていれば、間違いなく「牛心あれば蕎麦ごころ」を頼んでいただろう。順番が逆だった。昨晩、すでに飛騨牛を堪能してしまった。

食事を終えて会計済まし、外に出る。暑い。まだ会議まで2時間半はある。どうやって時間を潰そうか。

「とりあえず街を歩きましょうか。」

押田さんの提案に乗ることにした。

楽な格好になりたい…

坂口屋 公式HP

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