東京駅 鉄鋼ビル地下 タイ料理 サイアム セラドン

セカンドランチ

徳島から羽田に向かう機内でプレミアム御膳を食べた。今日のランチはこれで終わるはずだった。だが、短時間飛行の便で、時間的に余裕のない食事のためか、全体的に冷たい料理を食べるのに疲れ、途中でランチを放棄してしまった。

嘆かわしい。

食料自給率が40%程度しかない我が国だというのに、残飯を残すなど、許されない行為だとは分かっている。しかし、食べたくないものは食べたくない。食べられないものは食べたくない。私も五十路だ。生まれて半世紀、生きてきた時間よりも残された時間の方が少ない。人生百年などと言われているが、健康寿命は八十年ほどだ。

しかも、高齢になるほど、食事の量も減る。若くないということは、量から質にシフトするということだ。消費者に罪はない。機内食ならば、食べるか食べないか、究極の二択なのだ。美味しいか不味いかではないのだ。QOL、生活の質と言う言葉がよく使われるが、これは病人だけでなく、健常者にも言えることなのだ。ようは、食えないような飯を作るやつが悪いのだ。食べ物を粗末にするやつを罰する法律を作ってほしいくらいだ。

だめだ、そんな法律ができてしまったら、料理や食材をしょっちゅうダメにする妻など、前科百犯でも足りない。前言撤回だ。

なので、腹が減ったままである。夕食は遅いだろうから、ここでランチをきちんと済ませておかないと、夕方からは空腹と低血糖との戦いになる。低血糖といっても、私は糖尿病ではないので、インシュリンがどうといった話ではなく、単純に血糖値が空腹状態まで下がると、集中力が途切れ、頭が回らなくなるのだ。

とりあえず、羽田空港からリムジンバスで東京駅へ向かった。新幹線で新潟に行かねばならぬ。JRは乗換が面倒なのだ。モノレールで浜松町乗り換えの後に東京駅。山手線と京浜東北線のホームは丸の内寄りだ。新幹線は反対側の八重洲口に位置する。

この距離、数百メートル。浜省が歌うところの、田舎のメインストリートと同じくらいの距離があるのだ。

タイ料理 サイアム セラドン東京

若ければ、もしくは荷物が無ければ徒歩八分の距離も受け入れられようが、でかいカバンを持ったまま歩くのは、もはや苦行である。リムジンバスならば新幹線口の方に着いてくれるので、なかなか便利なのだ。

リムジンバスの乗降場は八重洲北口の鉄鋼ビルになる。バスを降りて駅に向かおうとした私の目に、飲食店の案内が飛び込んできた。こんなところに、いつの間に?ならばここでランチを食べるのもありだろう。和食ばかりで飽きたところだ。鼎泰豊が東京駅にできていたとは。二十世紀の頃は台北の本店でよく食べたものだ。

鼎泰豊 小籠包

二十年ほど前に日本に出店した頃は、とても本店と比較できるような味ではなかったが、年月とともに職人もベテランに成長したのだろう。香港や北京にも出店している。安心して食べられるようになったが、最近は出店しすぎな感じもする。またもや味が落ちることにならないだろうか。それよりも行徳駅から少し歩いた国道14号沿いにあった店のパクチー小籠包が忘れられない。ハッキリ言おう、鼎泰豊よりも美味いと思う。しかも点麺師は若い台湾人女性だった。

そんなことを思いながら地下に降りる。目の前にはタイ料理。サイアムセラドン。ヤエチカのサイアムオーキッドの姉妹店だろうか。なんだか猛烈にパクチーが食べたくなった。よし、今日のセカンドランチはここに決めたぞ。

メニュー

店に入ってメニューを見る。ガパオかカレーか悩む。うーん。ガパオは自分でも作れるがグリーンカレーはそうはいかない。ならばカレーとタイヌードルであるか。Eセットをオーダーする。

メニューをよく見るとパクチー別皿とある。

おお!ノーパクチー、ノーライフ!

通りかかったスタッフの女性を捕まえて、パクチー追加なのだ。

タイヌードル

さあ、ついにランチがやってきた。まずはサラダからいただく。酸味の効いた、独特の香りがするドレッシングがいい。これぞタイ料理だ。

パクチーをヌードルに入れる。あっさりとしたしょうゆ味のスープ。シャキシャキで甘みもやしにパクチーの香り、腰のある喉越し滑らかなセンレック。鳥ミンチを噛むたびに味わいが広げる。

テーブルの上には調味料がない。カウンター席には置かれている。辣油等を入れたい気もするが、カレーも控えているし、フォーのような優しいスープも美味しいので!このまま食べることにする。白い塊は魚肉団子だ

グリーンカレー

カレーにもたっぷりのパクチーを乗せる。見たら叫びそうな人がいそうだ。重量感あふれるスプーンでカレーに沈める。大きなナスを口に運ぶ。ああ、柔らかいなすの実にしみたカレーからガツンとしたからみのパンチとココナツミルクの芳しい香りが口の中に広がる。頭から汗が吹き出る。長粒米を食べる。カレーにはタイ米だ。

うまい。

鶏肉も柔らかい。たけのこもゴロゴロと入っている。スプーンを持つ手が止まらない。カプサイシンに刺激された食欲は全てを食べ尽くすまで満たされることはないのだ。

ああ、満足。

ん?カウンター席と思っていた場所は従業員が食事をする場所だった。そこにだけ調味料が置かれている。テーブル席を見回しても、調味料が置かれている席は一つもない。日本人は皆そのまま食べるのだろうか。好みの調味料や薬味をトッピングして食べるのもタイ料理の楽しみの一つなのに、それを奪われておきながら自覚のない日本人。

平和だ。
無知とは犯罪だ。

この国における食の国際化はまだまだ遠いと実感した。

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