のへそ 静岡本店
せっかく静岡まで自分の意思で何も食べないのまで納得がいかない。時間がなければ断念もするが、幸いなことに、今日は夕方までに東京に戻ればいい。チェックアウトまでホテルで仕事をしてから、少し早いランチを食べてからでも十分に間に合う。
いい天気だ。駅前のホテルを後にして、駅前の店を探す。駅前のガード下に良さげな店を見つけた。「魚のへそ」と読めるが、店名は「のへそ」である。ホームページには「~のへそ」と言う意味で、静岡では心臓のことをへそと呼ぶと書かれてあった。
メニュー
ランチメニューも色々とありそうだ。酢飯と銀シャリがきちんと分かれているのが素晴らしい。鮨を扱う店のどんぶりは酢飯なのか銀シャリなのか、食べるまで分からないという、ブラックボックスなのが我が国の慣習だ。嘆かわしいことだ。グローバル化の時代、できれば飯も選べるようにしてほしいものだ。ビネガーライスを食べたくない人間も少なくないのである。
栄魚う中のドアを開ける。店内に入るとカウンター席に通された。透明感あふれるデザインの内装に清潔感がある。これは当たりではないか。さすが静岡。お冷も緑茶だ。嬉しい。
日替わりは刺身定食。それにプラス二品。これだ、カツオと生しらすはぜひとも食べたい。まだ11時すぎだというのに、カウンター席には私ともう一人しかいないが、店の奥から大勢の客の声がする。団体が入っているのだろう。カウンターの中ではひっきりなしに刺身を皿に盛っている。
店内のBGMはアメリカンポップスだ。待つこと数分、私のランチが運ばれてきた。
刺身定食
ブリの煮付け、上品で臭みない。私が作るのとはだいぶちがう。出汁を使っているのかあまり色も付いていない。醤油とみりんで力づくで調理するのとはわけが違うのか。ぶりの身には脂ものっている。煮付けの汁は薄茶色。脂はそれほど浮いていない。付け合わせの野菜にしみていた、しっかりとした味がする。やはり出汁で煮たのだな。
カツオうまい。臭みない香り良くて新鮮。刺身ははちびき、スズキ、ビンチョウマグロ、ブリ、カツオ、生しらす。日替わりの刺身は皿ごとに中身が変わるようだ。
はちびき、初めて耳にする魚の名前である。ネットで調べてみると漢字では葉血引。鮮やかな赤色をした深海魚で、白身なのに赤い身を持つ深海魚で、赤サバとも呼ばれるとのことだ。なるほど。食べてみると、ねっとりとした、柔らかい身からは青魚のような力強い味がする。赤サバと呼ばれるのも納得だ。
絶品しらす
キラキラのしらすをご飯に乗せる。食べる。ああ、舌触り滑らか、臭みも苦味もない、あるのはしらすの旨味のみ。生姜とネギの清涼感と刺激が魅力を一段と引き上げる。ゆでしらすなら大根おろし、生しらすならねぎ生姜。いずれもご飯の友だ。酒よりも飯なのだ。
鮮度が抜群の本当にうまい生しらすを一度でも食べてしまうと、病みつきになってしまう。以前の私はこれほどまでに生しらすを追求することもなかった。五年前に藤沢で食べたのがあまりにも美味かったのか、いや、駿河湾で食べたやつだろうか。いずれにしろ、生しらす丼は私を幸せにしてくれるのだ。
カツオの生姜がなくなった。配分を間違えた。ご飯お代わり。ここで休憩。トイレは温水洗浄便座だ。
プリは身がふわふわ。しっかりと熟成させた旨味が溜まった切り身だ。 ビンチョウマグロは白い身と美しいグランデーションのかかったピンクの身の二種類である。ピンクの方はきめ細かな身に脂がのって、口の中で溶けるように消えていく。これはビンチョウマグロではないと思うのだが。反面、白い方はよくわからない。とりあえず醤油がキツイ。脂がのってない上に、身に味がないから醤油の味しかしないのだろうか。舌触りだけはいい。何だろう?
天ぷらはかりふわ。藻塩でいただく。天つゆでなくともご飯に合うのは藻塩の力であろうか。味噌汁はあら汁。めかぶが冷たくて食感も香りも良い。味も量も満足だ。これぞ出張の醍醐味。だが、マグロだけはいただけない。
今回は注文時に私の自己主張が足りなかった。次回はしっかりと店員に伝えよう。
「マグロとサーモンは入れないでください。」
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)