カルビ焼き

東京都 新宿駅 叙々苑 新宿ハルク店 焼肉ランチ

はるはるの成人

今日は双子のはるはるとトミーの20回目の誕生日である。

そう、成人なのである。

残念ながら二人とも成人式は参加していない。北京育ちの二人は、日本での成人式に参加しても、誰も知り合いがいないのである。なので、日本にいるハルハルとお祝いに食事をすることにした。夜は予定があるとのことで、ランチを一緒に食べるのである。食べたいものを聞くと「肉」と答えたので、叙々苑を予約した。

ホームページではランチの予約を受け付けていないが、試しに電話をしてみたところ、ランチは個室のみ予約可能であった。六人部屋の和室。店に着くと予約した和室に通された。ハルハルはまだ来ない。少し遅れると連絡があったので、私も少しのんびり店に向かったのだ。

席は座椅子だが、掘りごたつになっているので足は楽だ。仕切りで区切られているだけの隣の部屋からは、声が筒抜けである。お隣も誕生日を祝っているらしい。七十歳おめでとうだそうである。

さて、何を食べようか

ランチメニューなので選択肢は多くない。一番安いランチは加工肉を使用とある。却下である。焼肉ランチAとBはエビ付きだ。ハルハルはエビアレルギーであるし、私もあまり好きではないので却下である。そうなると自動的に一番高いランチCだろう。せっかくの誕生日だしな。もしくは焼肉会席…すべてにエビが付いている。パスだ。

ハルハルはまだ来ない。うーん、どれにしようか。何気に会席メニューをひっくり返す。

こ、これは?!

Jコースだと?叙々苑のJであるか。これぞまさにいいとこ取りのメニューではないだろうか。素晴らしいのに、なぜ裏メニュー扱いなのか。アピールしたくないのか。いや、こいつなら満足する客は少なくないと思うのだが。

まあいい。

Jコースに決まりなのだ。まだ来ないな。さらに30分が過ぎた。

「ごめんなさい。」

一時間遅刻したハルハル。私はとても機嫌が悪い。遅刻も面白くないが、それ以上に空腹が一時間以上続いていることが耐えがたい。私の機嫌が血糖値とリンクしていることは、家族ならば周知の事実であるからだ。まあいい、今日はハルハルの誕生日だ。ここは我慢しよう。

「何を食べる?」

ハルハルは、起きたばかりなので量は食べられないと言う。Jコースは厳しいか。柔らかい肉が食べたいと言うので、二人ともCランチを食べることにした。

ハルハルの危機?

まずはお年玉と成人の祝いと誕生祝いを渡す。ポチ袋は気に入ってくれたようだ。ハルハルが話し始めた。

「あのね、第一志望の大学の受験申し込みがね、春節(2月5日)頃だと思っていたんだけど、調べたらさ、願書締め切られていてね、志望先を変えたんだ。」

は?

「第一志望よりも、新しく探してみた大学の方が、自分のやりたいことと合ってるみたいだし。チームラボに行きたいんだ。」

え?

まず、三者面談の前日の説明では、チームラボはメディアだから、私のやりたいことと違うって全否定してたよな。そもそものんびりしてたら願書締め切られてたって、何?すでに一浪、年齢的には二浪なのに、戦わずして負けみたいな、試合の日付を間違えたみたいな、それを正当化するみたいな、なんなの?

「第一志望がダメだったことで、自分の志望により近い大学が見つかったから、却ってよかったんじゃないって、予備校の先生も言ってくれたし。」

それは褒めてるんじゃない、慰めてるだけだ。

実はここに来る途中、ハルハルと双子のトミーから連絡があった。

「ハルハルがさあ、またママ怒らせちゃってね。出願に必要な資料を北京の学校から取り寄せるのを忘れていて、明日までに必要とか言って、ママが激怒して、それでも書類を取り寄せてから、東京に行く知り合いを探し出して、無理やり持って来させたんだよ。」

限界だ。

「あのねえ…」

説教タイムになってしまった。黙って聞いているハルハル。あまり長く話すのも嫌なので、一通り言った後に、私は席を立ち、トイレに行った。

トイレから戻っても重い空気が場を支配する。スマホをぽちぽちと操作する、無言の親子がそこにいた。となりの家族は相変わらずに賑やかに話している。

「お待たせしました。」

肉が来た。とにかく食べよう。肉を焼くのは私の仕事だ。牛タン、カルビにロース。まだ固い。中が凍っているのだろう。溶けてから焼いた方が美味いはずだ。叙々苑サラダから食べる。

おお、これがテレビでサイゲン大介が再現した味か。まろやかでコクがあって、それでいてさっぱりしている。葉野菜はもちろんこと、キュウリにもよくからむ。なるほど、皮をすべてむいたキュウリのスライスは、皮の青臭さやえぐみがなく、葉野菜のようにしんなりとするのか。シャキシャキしたキュウリと葉野菜の組み合わせは、油を使ったフレンチドレッシングとは相性がいいのだが、叙々苑ドレッシングには、このしんなりキュウリの方が馴染む。家でも試してみよう。

焼肉とマザーテレサ

牛タンはまだ固いままだ。空腹なので焼いてしまおう。ロースターの上で焼かれた、熱々の鉄網の中央に牛タンをのせる。スルメのように丸まっていくのを待つ。完全に反り上がったらば、トングで反転させる。軽く焼くだけで平面に戻る。すぐに火から上げて、塩レモンにつけて食べれば、柔らかく、旨味溢れる牛タン塩を堪能できるのだ。

美味い。ビールが欲しい。

少し血糖値が上がった私にハルハルが話しかけてきた。共通の話題はアニメ、コミック、ボカロ、家族の話である。

続いてカルビ。こちらも表面に軽く焦げ目がついたらひっくり返す。すぐに網から取り上げ、少々置いてから食べる。

あま〜い!美味い!柔らかい!ご飯との相性が抜群だ。私は甘口タレに、ハルハルは辛口タレにつけて食べる。今までに何度か叙々苑でランチを食べたが、こんなに美味いと感じたことはない。

機嫌の治った私は、諭すように、自身の体験を交えなら話し始めた。ハルハルはおっとりしているというかなんというか、いつもギリギリで何かを言ってくる。明日までに書類が必要とか、翻訳が欲しいとか。こういうのは言って治るものではない。三者面談もすっぽかしたくらいだから、残念ながら、本人が一生後悔するような目に遭わないと治らないものである。

だけど、そんな後悔は無いに越したことがない。時間にルーズな人は信用を失うよ。時間にルーズな自分を許し続けていると、それが当たり前になり、性格になり、治せなくなるから。気付いた時には手遅れだよ。

そして、いつかの朝礼で社長が話していた、マザーテレサの言葉をハルハルに贈った。

思考に気をつけなさい、
それはいつか言葉になるから。

言葉に気をつけなさい、
それはいつか行動になるから。

行動に気をつけなさい、
それはいつか習慣になるから。

習慣に気をつけなさい、
それはいつか性格になるから。

性格に気をつけなさい、
それはいつか運命になるから。

最後はロース。同じように焼いて食べる。カルビに勝るとも劣らない脂のノリだ。甘い、くどくない、クセがない。旨味たっぷりの肉にマッチするタレ。辛口でも食べてみる。うん、さっぱりしていいね。交互に食べるのもありだね。

そしてデザート

二人もすっかり上機嫌になったところで話が盛り上がる。締めはいちごムースだ。甘さ控えめでこの量なら、お父さんも食べれるよ。満足だ。Jコースを選んでいたら、とても食べきれなかっただろう。

ハルハルはこの後、友達と代官山で買い物をすると言う。週明けから最後の集中講座なので、最後の息抜きなんだそうな。受験校は3つ。最終受験日は2月12日。あとは合格発表を待つ日々となる。

志望校に受かればいいのだが。

最近知ったことだが、元々の第一志望校は、一年目こそ都心なのだが、二年生以降はど田舎のキャンパスに隔離されると知り、モチベーションが下がったようでもあった。

春が来れば桜が咲く。成人の晴れ着姿は、桜の樹の下で撮影しようねと約束した。

夜、ハルハルからLINEが入っていた。代官山で買った靴の写真とメッセージだ。

「さっそく誕生日プレゼント買いました!可愛くて穿きやすくて最高です。今日はありがとう🤗💕
時間を守る事をこれから考えて行こうと思います。今日は遅れてごめんなさい。」

ハルハル、成人おめでとう。今度はお酒飲みに行こう。

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