新千歳空港 一灯庵
札幌駅からエアポート快速に乗り新千歳空港を目指す。網走から八時間かけてたどり着いた特急オホーツク号も雪で真っ白だ。今年一番の寒さではないだろうか。空港にたどり着いたら、ランチタイムだ。富山行きは13時55分発。一時間ほど時間がある。
さて、何を食べようか。
ラーメンは無い。スープカレーも食べたくない。ジンギスカンは言わずもがな。どんぶり系もパスだ。これで大半の店が対象から外れてしまう。
うーん。
グルメフロアをうろうろしている私の目に入ったのは、幌加内の文字である。
しかも更科そば。本当に食べれるのだろうな。食べるしかないだろう。その隣のメニューも私の食欲を刺激する。
メニュー
カツにも惹かれる。厚切りカツ食べたい。幌加内そばと厚切りとんかつの両方を食べたいというわがままを実現するには、どうしたらいい。
セットしか選択肢はないだろう。
カツをそのまま食べたいところだが、かつとじ御膳しかないので仕方がない。たまには玉子とじも悪くない。そんな私の小さな望みを、店員は一言で払いのけた。
「セットの蕎麦は変更できません。」
なに?セットでは幌加内更科蕎麦を選べないだと?うーん、少し待ってもらえるかな。
そばにいなくていいよ。なんで待ち構えてるかな、焦ると正常な判断ができなくなるだろう。七色そば。冷やしたぬき。納豆そば。うう、えいっ!鴨せいろで!
あああ。
鴨せいろ蕎麦(更科)
一抹のやってしまった感を振りのけながら、店内を見回した。お昼時で満席近い。次から次へと客が入ってくる。案内された時はパンパンだったカウンター席は幸いなことに少しゆったりしてきた。お、 蕎麦が運ばれてきた。
この麺はおそらく機械打ちだろう。少し太めだ。腰は少し弱いが、麺の伸びは悪くない。つけ汁は熱々で脂の甘みがすごい。たっぷりの山椒をかける。そばにたっぷりつけて食べる。ネギと牛蒡が食感にアクセントを加える。
鴨は炙ってあるのか、芳ばしい香りが鼻を抜ける。硬くない肉からは噛むたびに旨味が溢れる。
ごちそうさま
蕎麦湯は香りが弱い。つけ汁で割るとそばの香りは皆無だ。完全に負けている。それだけ鴨の脂と山椒の香りが優ってしまっている。悪くはないが、イマイチ好みではない。私のが求める味ではない。
ああ、またつまらぬ蕎麦を食べてしまった…
石川五ェ門の斬鉄剣ではないが、空港で真っ白な細くてコシのある手打ち更科蕎麦を求める私に非があるというのだろうか。幌加内産のそば粉を使うなら、もっと丁寧な蕎麦にしてほしいと願わずにはいられないが、これも商売だ。マーケティングだ。札幌駅構内の駅蕎麦ですら幌加内産を使っている。言葉に釣られて食べて後悔した。
幌加内には気をつけろ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)