くしかぶき
東京での食事で何が楽しみかと聞かれれば、外国料理だ。今日のランチは静岡であった。駿河湾の海の幸をたっぷりと堪能した。味わいとしては申し分なかったが、ご飯の量が少なかった。その点で少し不満である。満足できていない。なので、なおさら夜は東京でがっつりと和食以外を楽しみたかった。
夜に静岡から東京に戻り、あれこれと用事を済ませていたらだいぶ遅くなってしまった。現在時刻は午後10時半を回っている。新橋と言えど、開いているのは飲み屋ばかり。食事ができる店は、あまり見当たらない。ラーメン屋などは開いているが、それは〆の店なので趣旨が違う。
どこか私の食指が動くようない店が無いかと徘徊していると、一軒の店に目が留まった。
「チェッダーヒン弁当」
なに、それ?店構えは明らかにこてこての和食店なのだが、意味不明のカタカナメニューに興味が湧いた。よし、ここで食べてみよう。ドアを開けて店に入ると、中に広がる光景はやはり居酒屋だ。それもチェーン店ではなく、地方にあるような数名で深夜までオペレーションしているスナック居酒屋のような趣である。
おひとり様であったが入口付近が寒いせいなのか、テーブル席に案内された。ラッキーだ。向かいのテーブルには若い男女数名がかなりいい感じにできあがっていた。
メニュー
さて、なにを食べようか。壁のメニューを眺める。板わさ、もつ煮、牛筋煮込み、玉子焼きなど、典型的な居酒屋メニューが並ぶ。
だがもう一枚のメニューは非日常である。いまだ未経験の料理である。ミャンマー料理。昔、ミャンマーと10回言えるかなどと活舌を競った遊びもあった気がするが、旧名はビルマ、現在はミャンマーである。聞いたことが無い料理名ばかりである。俄然、テンションがあがる。これは食べなきゃだめだ。
早速、オーダーしてみた。
ラペソ
ミャンマー料理を代表するサラダらしい。揚げた豆と茹でた豆、キャベツとお茶っ葉。お茶っ葉は硬いイメージがあるが、柔らかくお茶の味もそれほどしない。さほどスパイシーではないがニンニクが効いている。カリカリに揚げた豆の食感がいい。
これがサラダなのか。揚げジャコのサラダや、カリカリベーコントッピングサラダは食べたことがあるが、いずれでもない。タイ料理のサラダにも砕いたピーナッツが入っていた気がするが、それとも異なる。ただ、少々塩気がきつい。
トクトー串
モツ煮を串に刺して炙った感じだ。焼き物の食感ではない。これをスイートサワーソースにつけて食べる。味付けは和食に似ている。ソースに付けるとエスニック風になるが、タイ料理ほどではない。
豚足煮
味付けは豚骨醤油だ。これは和食ではないだろうか。嗅ぎ慣れた豚骨の香りが心地よい。トロトロの豚骨は沖縄のテビチを彷彿とさせる。これは日本人の口に合う。沖縄ほどトロトロではなく、少ししっかりした食感のところもある。茹でテビチの感じだ。ミャンマーでは「ウェッチェタゥッパゥン」と呼ぶ料理だろうか。名前が長くては聞き取りづらいので「豚足煮」て済ませている感がある。
チェッターヒン
こいつだな、表に弁当名として貼りだしてあったのは。手羽先の煮込み。すごく柔らかい。カレー風味の醤油煮込みのような感じだ。こいつも私には少ししょっぱい。
カキフライ
ここで一つだけ和食を頼んだ。熱々でジューシー、牡蠣のエキスが口の中で暴れ回る。ただ、衣が厚い。悪くはないが、ヤマキのようなトンカツ専門店の凄さを垣間見ることになる。タルタルは酸味が強めで旨い。ああ、レモンを絞ったせいかも。レタスにドレッシングがかかってるのが残念。しょっぱい。おそらく一般人には普通の味だ。
0時でスタッフが交代するようだ。会計を済ました時に、しきりに終電を心配された。すぐ近くのホテルに泊まっているので、何も問題ないのであるが、「もしも行くところがなかったら戻ってきてくださいね。」と声をかけられたのは、少し嬉しかった。
次回は牛肉の煮込みを食べてみたい。できればサラダも薄味をリクエストしてみよう。
後日談
後日、再訪して和食を頼んでみた。微妙だった。やはり、ここはミャンマー料理を食べる店なのだと、確信したのであった。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)