生姜焼き

東京都港区 芝公園駅 ビストロ ビアンコ 生姜焼き

雨の日は嫌だ

雨降り鬼ではないが、嫌われても雨は必要なものである。午前中に打合せに行った半蔵門で、雨の中のお堀もなかなか風情があると感じた。一旦、会社に戻ったが、午後は丸の内で打合せである。会社からは浜松町と芝公園の二駅が利用できる。大手町に行くならば芝公園駅から乗るのが道理というものだ。

会社から芝公園の間にある飲食店は数件しかない。晴れていれば多少の遠回りも厭わないが、雨だ。冬の雨だ。寒くて冷たい。

うーん。

とりあえず歩きながら考えよう。ここから徒歩1分以内に少なくとも四軒の飲食店がある。うち一軒の中華料理店は選択肢に入らない。あの店は二度と行くことはないだろう。パスタ、たまにはいいかと思ったが、店が閉まっていた。定休日だろうか。そして、その向かいにある喫茶店なのかカフェなのか。

ん?

ランチメニューを書いた看板が目に入った。潔く二択である。カレーか生姜焼きか…生姜焼き?!何を隠そう、私は豚生姜焼き定食が大好きである。この街に私を満足させる店はないとあきらめていた。じゅーじゅー焼きを食べるしかないのだと信じ込んでいた。それがまさにこのような隠れ家カフェにあるとでもいうのか?

灯台下暗し。

ならば、味合わせてもらおうか、カフェの生姜焼き定食とやらを。

ビアンコ

この店は二階にあるものだと思っていた。実は地下であった。膝が痛いので、階段の上り下りは難儀するが、生姜焼きのためだ。耐えるのだ。薄暗い階段の先には、明るい地下空間が広がっていた。店内ではWiFiも使えるようだ。店に入る。

テーブルに座ってもメニューは出てこない。壁にあるのみだ。そもそも二択だ。改めて見るまでもない。生姜焼きなのだ。

店内には軽快な洋楽ポップスが流れている。広々とゆったりとしたおしゃれな空間。壁には大きな絵が飾ってある。店の外にはギャラリーとも書いてあった。なにか美術なアートなことでもする場所なのだろうか。

生姜焼きセット

ほどなくして定食が登場。おお、これは期待できそうだ。皿の上に描かれたような、フレッシュで見るからにみずみずしいサラダ、照り照りと輝く、ボリューム感あふれる生姜焼き。カラフルな野菜のパステル職に彩どられた、真っ白なポテトサラダ。これがカフェ飯か。一転して、和の落ち着きを主張するモノトーンの味噌汁に純白のさらに鎮座する白飯。まさに和洋折衷。味噌汁ライス。定食を名乗るなら茶碗にご飯が欲しいところだが、贅沢は言うまい。

まずは味噌汁、出汁のきいた優しい味。今朝、自宅で飲んだコンビニのレトルト豚汁とは違う。豆腐の食感がいい。フリーズドライとは違うのだよ。具沢山のポテトサラダも優しい味。ふわふわしたクリーミーな舌触り。酸味も塩気も控えめだ。みずみずしいサラダには甘めの酸味控えめのドレッシング。これは人参なのだろうか。生姜焼きの味を邪魔しない。

メインの肉はおそらく肩ロース。ボリュームたっぷり。甘口の中生姜の刺激が隠し味のようだ。厚みもあり食べ応えある。やや濃いめの味付けのタレが絡んだ肉を少し硬めに炊かれた私好みのご飯がどっしりと受け止める。ああ、美味い。

本当に肉が多い。ご飯も十分な量である。がっつり食べて満足なのだ。個人的には野菜がもっと欲しかった。三倍くらいでもいいくらいだ。野菜を食べないと便秘になるのだ。

店を出る前に店外にあるトイレに行く。おしゃれな店から一歩出れば、そこは雑居ビルの共同トイレだ。しかも温水洗浄便座ではなかった。なんだか急に現実に引き戻された気分になった。

すこし暗い気分で店を後にした。

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