仙台で食べるひとり晩飯
仙台と聞いて想像するものは牛タンであろう。最近ではB級グルメで仙台麻婆焼きそばなるものがあるらしいが、食べたことはない。麻婆豆腐のできばえが良ければうまいに決まっているだろうが、日本における麻婆豆腐の一般的なレシピは、豆板醤少なめ、砂糖入り、花山椒無しである。
個人的には好きではない。
20代から仕事で大陸に行き、何度も四川料理店に連れて行かれた。そこでハマったのは花山椒だ。四川料理に限らない。野菜炒めのような家庭料理にも欠かせない調味料である。中国語では花椒(ホアジャオ)もしくは麻(マー)と呼ぶ。そう、私はパクチーと共にマーマニアでもあるのだ 。もちろん、家庭には大陸から取り寄せた花山椒が常備されている。
そして本場の麻婆豆腐に欠かせないのは、豆板醤多め、刻みネギのせ、粉花椒たっぷりなのである。いわゆる「麻辣(マーラー)」なのだ。舌が痺れぬ麻婆豆腐など、まがい物でしかない。食べたくはない。これが日本の中国料理の現実なのだ。よって、仙台なんたらを食べる気にはなれないのである。
蕎麦バー 月うさぎ
では、何を食べようか。定禅寺通りをさまよう。すでに半時間は歩いている。蕎麦居酒屋が多い。ラーメンはいらない。ふと、目についたのは蕎麦BAR。
居酒屋よりも惹かれる。しかも手打ちそば、更科蕎麦。食べずにいられようか。躊躇なくエレベーターで4階に向かった。
エレベーターを降りると洒落たインテリアに鉄製のドア。
これを開けると中はまごうことなきバーである。カウンターとテーブル席。静かな店内は落ち着いた洋楽が流れる。心安らぐ。居心地がいい。
まるで喫茶店に一人でいるかなような感じがする。ここはバーだ、ダイニングバーのはずだ。
メニュー
生ビールはカールスバーグ。軽めのビールでお一人様ディナーの開始である。さて、何を食べようか。
始まりは野菜スティック。蕎麦を食べに来てのだから締めはあなご天蕎麦。
メインは国産豚の串焼きモロッコ風といこうではないか。
まずはお通しだ。少々味濃いめのマカロニサラダがビールに合う。ねっとりとした舌触りにコリコリとしたキュウリの食感。
野菜スティック
みずみずしく素材の味が生きている。マヨネーズからはピクルスの顔をが匂い立つ。コンビニの野菜スティックとは次元が違う。セロリ、きゅうり、にんじん、いずれもジューシーで食感も良い。
セロリは子供の頃に食べたことがなかった。両親ともに香り野菜がダメだったのだ。私は大好きなのだ。一人暮らしをするようになってから食べ始めた。
豚の串焼きモロッコ風
いわゆるシシケバブ、中東の料理である。中東と言えば、砂漠、ラクダ、戦争、イスラム(=豚肉は禁忌)というイメージがあるが、中東の国レバノンには砂漠もなく、ラクダもいない、戦争も30年以上起きておらず、キリスト教徒とイスラム教徒が共存している国家であるから、豚肉を食べる習慣もあるそうだ。
鉄串が熱いというので、橋で外して食べる。肉はしっかりとした歯ごたえ。硬いと思ったが食べてみるとそうでもない。しっかりと塩で味付けした肉はジューシーで旨味溢れる。少し塩辛いかな。串から直接、肉を食べてみた。でかい。ハシで食べた方が現実的だ。肉の味がしっかりしているせいか、野菜はあまり存在感がない。脇役はそれでもいいのかもしれぬ。
蕎麦をいただく
蕎麦はまごうことなき更科である。真っ白で透明感あふれる繊細な麺は見た目にも美しい。これこそが蕎麦、これこそが更科。蕎麦をハシで取り、辛口のつゆに少しつけていただけば、コシがあり喉越し良く美味。
穴子天ぷら
天ぷらはアナゴのでかいのが来るかと思ったら、野菜も一緒だった。インゲン、ナス、舞茸。野菜の天ぷらと蕎麦つゆが合わない。おそらく天ぷらが少々揚げすぎだ。穴子はふんわりとして衣も軽く、つゆにも合う。
バーなのに蕎麦湯が出てくるところがすごい。
蕎麦が思ったよりもボリューミー。軽く食べるつもりがしっかりとガッツリといってしまった。どこで間違えたのだろうか。
ごちとうさま
だが、満足だ。まさかバーで手打ちの更科そばが食えるとは思いもしなかった。羨ましすぎる。それほど遅くまで店が開いていないので、飲んだ締めにこの店のそばを食べることは叶わないだろうが、ランチはやっているので、昼間にも食べに来てみたいところだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)