仙台市 北四番丁駅 お好み焼き マッサン 

仙台市 北四番丁駅 マッサン 牛たんのせとマッサン焼き

お好み焼き マッサン

「明日のランチ、ここはどう?」

焼肉屋で仙台牛に舌鼓を打っていた最中に、石巻の知人からラインが飛んできた。指定されたリンクをタップすると、表示されたのは広島風お好み焼きの店である。

なんで?
仙台でお好み焼き?
しかも広島焼き?
広島で食えばいいだろうに。

まったくもって意味が分からん。そんな非合理的かつ理不尽に私を巻き込む地元民は何を考えているのかなどと心の中で憤慨しながらも、ランチの約束をしたのだった。

翌日、地元民が会社の前まで車で迎えに来てくれた。岡山県民が同乗していた。こないだ、熊本にいるところを佐賀で飲まないかと声をかけてきた知人である。私も助手席に乗り込んで目的地に向かう。店は東北大学病院のすぐ近くだ。大通りから少し入った、住宅街にあるのだが、この辺りは一方通行の道が入り組んでいて、何度かぐるぐると回る羽目になった。店には駐車場がないために、近くのコインパーキングに車を停めた、

これか。広島焼きの店である。辛麺。広島県は三次市、江草商店が生産する、中華麺に唐辛子粉を練り込むという激辛マニア垂涎の麺を作った広島焼きがたべられるというのだ。

それは、食べなきゃ、ダメだ♪

店内のテーブルに陣取る。岡山県民が広島のお好み焼きは生めんを使うんだと吹聴している。何を偉そうに。埼玉県民がもんじゃ焼きを語るようなものだ。

おまけに壁に説明が書いてあるがな。確かに鉄板の後ろ、厨房後方には、ラーメン屋でもないのにデポが見える。

メニュー

さて、何を食べようか。ほう、牛コウネ焼きがあるのか。さすが広島である。広島県民のソウルフード、広島以外ではほぼ食されることがなかった部位のようだ。通称ブリスケ。実は昨晩食べたのである。

辛麺焼きそばは当然として、やはり豪勢な「伊達家お好み焼き 牛たんのせ」を食べなければなるまい。贅沢な一品である。さらに店名を冠した「まっさん焼き」である。私は焼きそばよりも肉玉辛麺を食べたい。

ん?メニューにないぞ。

「すいません、辛麺が届いたのが2日前で、お好み焼きはまだ試作段階なんです。」

なんだと?!それでは私はなんのためにわざわざ仙台まで来ておきながら広島焼きを食べるのか、その意義が問われるというもの。なんとかならぬのか?店主に食い下がる。試作品でもよければ作ると、文句は言わぬとの条件で特別に作ってもらえることになった。

鉄板の上でつぎつぎと調理されていく広島焼き。この店は焼き上がりに重しで圧をかけない作り方のようだ。

辛麺焼きそば

唐辛子を練りこんだ辛麺の刺激的な味わいにマイルドな玉子の黄身、定番野菜のキャベツやもやしが味を彩る。もちちろん、豚肉もいい仕事をしている。少々味が薄い気がする。こころもちソースの香りが弱い。三次市内ではガーブソースがメインだが、この店はおたふくソースである。県外では圧倒的な知名度だが、広島県内ではこの二大ソースのシェアは拮抗しているそうだ。

試作品の辛麺焼き

うーん、広島で食べた味とはだいぶ違う。試作品だから仕方がないか。辛麺焼きでは麺の辛さを中和するために大量の野菜を使うって甘さを出すと聞いた。そうなるとボリュームが増すので、鉄の塊で押して平たく成型するのだろう。対して、この店はふんわりとした広島焼きである。正式メニューになるのが楽しみだ。

まっさん焼き

中に餅が入っている。海苔が芳ばしい。お好み焼きと意外に合うものだ。餅でボリューム感があるので、食べ応えも増すというもの。玉子とソースの組み合わせが素材を優しく包んでしまう。

伊達家お好み焼き 牛たんのせ

伊達家お好み焼き 牛たんのせ。見た目がどうかだ。お好み焼きとは平面な料理である。せんべいのような、高さの低い円柱状の物体だ。それがまるで山。広島焼きという平野の上にそびえ立つ、青ネギで彩どられた牛タンの尾根、山頂に鎮座するエビ。かつて、イギリスの登山家ジョージ・マロニーはかのように答えた。

「なぜ、エベレストに登るのか?」
「そこに山があるからだ。」

まさしくだ。Because it’s there。我々も、そこに牛タンがあるから食べるのだ。

ごちそうさま

うーむ、全体的に薄味だ。もう少しコッテリ感とソースがあってもいいのだが…ああ、なんてこった。食べ終えてから卓上のオタフクソースに気づいた。

帰り際に店主が言った。

「お客様がお好みの味に調整できるように、薄味にしてるんですよ。」

後悔先に立たず。幼い頃にCMで聞いたような「味の決め手はソースが決めて」というキャッチフレーズが頭をよぎった。まさしくだ。 Because it was there。そこにソースはあったのだ。無いわけがないのだ。

またひとつ、学んでしまった。お好み焼き屋では最初にソースを確かめろ。

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