仙台駅ディナー
山形から仙台に戻った。明日は仙台空港から那覇行きの飛行機で帰るのだ。新庄から山形新幹線で東京まで行き、羽田空港から那覇に飛ぶのがオーソドックスだとは思うが、四時間も新幹線に乗った挙句に、一時間かけて空港に行き、三時間も飛行機に乗るのは苦痛だ。身体にも良くない。車で気ままに仙台までドライブし、一泊してから仙台より三時間のフライトの方が健全である。
絶対に無理しない。
私の信条である。まだ幼子を抱える身だ。あと30年は色々と現役でいなければならぬ。太く短くなどとは思わぬ。細々と長生きして、たまに小さな病気にかかって、だんだんと身体能力が衰えて、最後は老衰と呼ばれる多臓器不全で、苦しむことなく、家族にも負担をかけず、ポックリと死んでいきたい。
そんなことを考えながらドライブしていた。仙台のホテルにチェックインし、レンタカーを返却すると、夕食の時間である。
さて、何を食べようか。
日曜の夜はどの都市でも店が極端に少ない。ここ仙台も例外ではない。海鮮でも食べようかと、ホテル近くの仙台朝市、通称アメ横の地下飲食店街に向かった。
表の看板にはいくつもの店名が並んでいる。
だが地下に降りた私の眼前に繰り広げられた景色は、閉店ガラガラで無人の通路だ。奥に一軒だけ店が開いている。近づいてみると、アニソン酒場であった。酔って二軒目ならともかく、飯を食える場所ではなさそうだ。最近のアニメから初代ガンダムまで、掲示物が貼り出されている。
昭和の景色に紛れ込んだ場違いの店は、まさに異世界に転送された令和のカルチャーである。おお、まさにマイクロンのポップカルチャー!!それもまた昭和だろうに。異世界居酒屋のぶを上回る現実がここにはあった。他にも仙台には行きたくないのに連れて行かれたララツーもある。
地下街を出て周辺を索敵する。どこかに一人飲みできる、気軽な店はないだろうか。近辺をうろうろと、不審者さながらにいくつかの店をチェックした。界隈を二周ほど歩いた結果、脳内最終選考にてグランプリが選ばれた。
大衆酒場 ビートル
大衆酒場なのに横文字。提灯にはカブトムシのシルエット。なかなかファンタスティックな店じゃないか。
ドアを開ける。店内の席はほとんどが埋まっていた。なかなかの盛況ぶりである。空いていた一番手前のカウンター席に通された。
奥に厨房、U字型のカウンターは牛丼屋のように中を店員が行き来できる作りだ。テーブル席も用意されている。しかも、この店にはお通しがなかった。
メニュー
さて、何を食べようか。メニューを見る。
揚げ物や炒め物は少数派だ。パパっと素材を組み合わせてできあがる料理が多い印象だ。手がかかる料理は煮物など、大量生産できるものに限定しているわけだ。
串焼きは充実している。串にさしておいたものをストーブで焼くだけだから、調理コストがかからない。
デザートがホームランバーというのも考えたものだ。税抜60円程度で購入できる商品を税抜200円で売るだけである。しかも当たり付きであるから、原価率は多少上がるとしても、やはり3倍近い利益率は美味しすぎる。冷凍庫から出して客にそのまま渡すだけだ。ドリンクのようにグラスを洗う手間も不要だ。
メニューの中からいくつかの料理を厳選して注文する。さあ、美味いものが食えるだろうか。
なめろう
魚臭さは感じないが、旨味も足らない気がする。薬味も控えめか。青魚と薬味の絶妙な掛け合わせがなめろうの真骨頂だと思うのだが、残念。
冷やしトマト
甘い。野菜が高騰している昨今、この値段なら半個は当然か。マヨネーズはあってもなくても良い。二種類の味が楽しめるのだ。
自家製厚揚げ
プルプルに震える厚揚げにたっぷりの生姜をのせて食べる。あつあつである。まあ、こんなものだろう。焼いて薬味を載せて食べるだけだ。不味い厚揚げと言うのに当たったことがないので、安心の一品と言えよう。
もつ煮込み(赤)
赤は辛い方だと店員に言われた。白は甘いのだろうか。ついつい唐辛子をかけてしまったが、さほど辛くなかった。ああ、辛い方と言うのは、甘くないという意味なのだろう。柔らかいモツは臭みなく、味噌の程よい味付けで酒が進む。皿の底には豆腐が沈んでいた。美味い。
味噌ピーマン
シンプルな味が嬉しい。ピーマンはみずみずしく苦味もない。サラダピーマンだ。
ハイボールがデュワーズなので、諦めて生レモンサワー。グラスの口の半分に塩が付いている。お好みでどうぞとのことだ。ソルティードッグを彷彿とさせる生レモンサワー。いいね。
隣の女子がキンプリの話をしている。そう、この週末は仙台でKING &Princessのライブが開催されたのだ。これが嵐ならホテルは満室、空きなどほとんどないが、キンプリではそこまでの動員がなくて良かったと安堵する。
豚バラ塩焼き 芥子付き
肉が少し硬い。
メニューと雰囲気から、まあまあ安くてほどほどの物が食えると思っていたが、意外に高かった。うーん、普段はコスパを求める方ではないのだが、食べたものが値段相応なのかは気になる。私には割高に感じられる店だった。
やはり、日曜夜の食事は難しい。面倒くさがらずに駅ナカの飲食店街に行けば良かったと後悔しながら、とぼとぼとホテルに戻ったのだった。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)