北海道札幌市 狸小路 寿司バー 気軽に鮨をつまめる店

札幌市狸小路 スシバー

夜、札幌。今晩は一人だ。気が楽だ。さて、何を食べようか。ホテルの周りをうろうろしてみる。

ほう、鮨をつまみながらバーで飲む。寿司屋で一人長々とのんでいると罪悪感を感じることがあるが、バーなら文句も言われまい。店に入る。店内はカウンター席とテーブル席だ。内装はバーだが、カウンターのネタケースが寿司屋を主張している。

まずはたちポンだ。冬の北海道の風物詩、道民が愛してやまない一品だ。めちゃ滑らかでクリーミー。臭みなし。甘い。生ではないがレアだ。火加減が絶妙だ。

店員は若い男性ばかりだ。マスターは40代半ばだろうか。店員が客のオーダーをマスターに告げる。

「ホタテ握りお願いします!」

マスターが答える。

「いやです。」

面白い人だ(笑)

カプレーゼをスプーンでいただく。食べやすい。モッツアレラチーズはしっかりとした歯ごたえ。かぐわしいバジルの香りと甘いトマトの組み合わせは文句なし。沖縄ならバジルの葉がもっとたっぷりのっているだろうが、ここは北国だ。ちょっと残念。

生牡蠣。レモンを絞る。口の中に放り込む。冷たくひんやりとする滑らかな牡蠣の身を、無残にも私は噛みしめる。噛む。ぐわっと広がる牡蠣の豊穣な旨味と甘味がレモンの酸味とからまり合い溶け合って混じり合う。気がつけばほのかな香りだけが残り、胃に落ちていった生牡蠣。臭みなどまったくない。

漬物盛合せ。白瓜奈良漬け、ヤマゴボウ、なす浅漬け。悪くない。あれ?改めて写真を見ると四種類だ。白いのがなんだか分からない、記憶にない。

トイレは温水洗浄便座だ。

バーで握りを堪能する

マスターはかつてすし店で働く寿司職人であったと。札幌で数店舗展開する店で、一時期は東京にも店があり、その立ち上げ時には東京に住んでいたとのことだ。ここはカジュアルに鮨を出す店なので、高級ネタを置いても分かる客はほとんど来ない。そのために寿司職人が働いても、ネタの少なさがいやになり、辞めてしまうのだとこぼしていた。

いか握り。半透明で切り口の角が立っている。噛むとコリコリに近い弾力、なのに甘みがある。酢が控えめで小さなシャリとのバランスいい。

松川カレイは身が厚い。なかなかの弾力だ。しっかりと甘味がある。夕方に締めたので今頃がちょうどいいとのこと。この店で美味い白身を食べれるのはラッキーですよとマスターが言う。

黒アナゴ、炙ることで身がほわほわになっている。柔らかくて、口当たりがいいのは、小さな骨まですべてを身から抜いてあるからだ。細かい仕事だ。マスターの嫌いな仕事だそうだ。黒アナゴは北海道で獲れる、大型のアナゴで、見た目が鱧に似ていることから、北海道では黒アナゴのことをハモと呼ぶことがあるそうだ。

ウニは文句なし。

しめサバは甘い。

北海道は白身文化がない。人気がない。この店では高級食材をおいても食べる人がいない。寿司屋さん時代のお客さんには白身を出さない。二週間に一回くらいの頻度で、なじみの仕入れ業者が売れ残った高級食材を原価で置いていってくれるとのこと。この日は型のいい松川カレイだったので、まかないに出すというバカなことをするのだと、うれしそうに話していた。

つぶ貝は口の中に磯の香りが広がる。噛むと甘味がにじみ出る。弾力が鮮度を表している。臭みない。シャリもパラッと口の中でほぐれる。

型の良いヒラメから取った、二枚の縁側を合わせた、少し贅沢な握りだ。甘味がすごい。脂がよくのっている。 弾力のある食感も良い。

いくらは言わずもがな。プチっとした心地いい弾力に甘味。塩気。海苔の香りがイクラの魅力を引き出し、すべてをシャリが受け止める。ああ、至福。

ハモンイベリコ

カウンターの隅っこに置かれている生ハムが気になっていた。スペイン産イベリコ豚のハムである。イタリアのプロシュートと似ているが、別物だ。あちらはイタリア産の生ハムで、塩気が強くサラダに合う。しかしハモンイベリコはサラダにまったく合わないとマスターが言う。

これは自分の大好物で、自宅に置いといたら毎日食べてしまう。塩分摂りすぎになって身体にはよくないのですが、とマスターが笑いながら説明してくれた。少しずつ少しずつ、薄く身をそぎながら食べていく。マニアックである。

さっそく試してみることにする。塩っけは控えめ、脂ののりががすごいのだが、薄くスライスすることでくどさはない。肉本来のうまみをじっくりと味わえるのはまさにこちらだろう。酒が進む。

満腹だ。酒も十分に飲んだ。いい塩梅に酔った。寿司屋はつまんだらすぐに店を出るものだ。マスターも寿司屋は短時間で済ます人が多い、食べたらすぐに店を出るものではないですか、と言う。この店は、寿司を堪能したのちに、ゆっくりと酒を楽しんでほしいというコンセプトだと語っていた。その考えには大賛成だ。私は腰が重い方なので、店をいくつもはしごするのは好きではない。

次回も楽しみだ。

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