花喬 更科蕎麦

北海道札幌市西12丁目 蕎麦 花喬 ~かしわ天ざる~

更科そばが食べたくて

北海道はそばの産地だけあって、蕎麦屋が多い。水も綺麗だし、そばには理想的な環境なのだろうか。蕎麦屋も多い。ま、ラーメン店も多いのだが。田舎風の蕎麦は少数派で、江戸前というか細切りの白っぽい、二八蕎麦がメインに思う。ただ、たまに更科とか醍醐と呼ばれる真っ白な蕎麦を出す店がある。岩見沢の福松(ふくしょう)や北見の更來(さらい)、札幌ではやま賀がそうだ。いずれも大好きな店だ。

札幌駅やすすきの近辺は蕎麦不毛の地だ。蕎麦屋自体が少ない上に、好みの蕎麦屋がほとんどない。まして更科などは見たことがない。少し捜索圏を広げてみたら、一つ見つけたぞ。花喬(かきょう)白い蕎麦が食べられそうだ。しかも市電で行くことができる。遠くはないな。天気がいい。テレビ塔が空に映える。

西線六条の駅で降りると、いい香りが漂ってきた目の前にトルコ料理店がある。やばい。美味そうだ。メニューを見る。なんたって、トルコ料理はフランス、中華と並ぶ世界三大料理の一つだ。元はオスマントルコ帝国だ。欧米列強によって再興できないほどズタズタにされた国だ。などと考えていたら、店から二人組のおばさまがたが出てきた。会話を聴いてみる。

「大したことなかったわねえ」
「野菜がね、どうも…」

何やらお気に召さなかったようだ。よし、予定通りに蕎麦を食べに行こう。五分ほどで店に着いた。行列でもできてると思ったが、店の外には誰もいない。閑静な住宅街の中だ。店に入る。店主が一人で切り盛りしている。席はカウンターとテーブル2組のみ。店内に客は1組。ラッキー。カウンターに通される。さて、何を食べようか。

そば処 花喬

お冷やが冷たくて美味い。水が飲みたかったのを忘れていた。メニューを見る。蕎麦は冷たいのに限る、除く立ち食い蕎麦なので、かしわ天ざるか海老天ざるの二択だ。

かしわ天で行ってみよう。店主はまず天ぷらを揚げ始めた。揚げ終えると、次にそばを茹で始める。お冷やをくださいとはとても言えない雰囲気だ。喉が渇いた。蕎麦はすぐに茹であがり、大量の水で洗う。丁寧に何度もも何度も水を切る。ふむ、これが職人のこだわりか。お代わりしてしまいそうな気がする。

蕎麦をザルに載せるとかしわ天ざるのできあがりだ。目の前で私のためだけに店主が調理している。貸切状態だ。蕎麦が出てきた。

さっそく写真を撮っていると、大将からアドバイスされた。

「時間が経っちゃうと蕎麦のいいところが伸びてしまいますよ。」

いや、見た目でもう十分に美味いのわかりますよ。真っ白の細い麺が、ざるの上でキラキラとキラキラと輝いてゐるのでしたって、中原中也かっ?!蕎麦猪口に麺つゆを入れ、ネギとワサビも全部入れる。よく混ぜて蕎麦をハシでとり、少しだけつゆにつけて、口に放り込む。蕎麦の香りが広がる。そのまま飲み込む。喉越し最高。

美味い!

そばがどんどん胃の中に入る。ほぼほぼ噛んでいない。丸呑みだ。喉越しがたまらない。つゆはそれほど辛口ではないが、つけ過ぎると蕎麦の香りが飛んでしまう。あ、かしわ天も食べないと。蕎麦をゆでている間、放置されていたせいなのか、少しふやけてしまっていた。いや、揚げ油の温度が低かったのだろうか。かしわ天は分厚い肉を揚げていることが多いが、この店は薄くスライスされているので食べやすい。ボリュームも結構ある。一つだけは紅ショウガの天ぷらなんで、まるかじりしないように注意が必要だ。にんじんではなかったんだな。塩をつけて食べる。うん、いいね。丸亀製麺のかしわ天より、こちらの方が好きだな。そばつゆにもつけてみる。やはり塩じゃなくてそばつゆがいい。それにふやけているから塩が衣につきすぎてしまう。

蕎麦はすぐになくなってしまった。食べ終えてしまった。満足できない。量だけではない、いろいろと食べ足りない、味わい足りない、感じ足りない。すいません、お代わりできますか。店主が再びそばをゆでる。水で洗い、蕎麦を一つまみ一つまみごとにざるにたたきつけて水を切る。さあ、今度はすぐに食べるぞ。ハシでつかみ、そばつゆにつけ、一気にすする。

美味ーい!

先ほどより段違いに美味い。大将が言ったことがわかる。あんたは正しい。さっきも十分美味いと思ったが、いやいや、その上を行く。なんじゃこりゃあ!最初のそばよりものど越しも食感もいい。キラキラでつやつやで滑らかだ。先日、テレビで藪蕎麦の更科は、水をかけて30秒ほど置いたほうが香りが広がるなんて言っていたが、いやいやいや、この蕎麦は出てきたらすぐに食べなければならない。写真なんて撮ってる場合ではなかったのだ。

最期は蕎麦湯を頂く。蕎麦猪口に注ぐ。そばつゆが薄まってちょうどいい塩加減になる。うん。これを飲み干して、今度は蕎麦湯だけいただく。白くて少しトロっとしている。ああ、美味い。蕎麦の香りがいい。幸せだ。かしわ天1000円+替えざる400円。この蕎麦が400円でお代わりできるなんて、安すぎる。

家族連れで食べにくる店ではない。一人か二人で静かに食べる店だ。また食べに来よう。妻も連れてきたい。絶対に気に入るはずだ。

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