サツエキランチ
朝の便で羽田から千歳に飛んだ。午後から札幌市内で会議なのである。京浜急行で品川から羽田空港に向かったが、8時台の駅はラッシュだ。下りだから空いているだろうと言う考えは甘かった。
これならモノレールのほうがマシだ。二本も待てば座ることができる。朝はモノレールに限るのだ。
3時間40分後、サツエキこと札幌駅に着いた私は、ランチを取るためにあらかじめ調べておいた店に向かった。サツエキから徒歩3分以内で、肉をがっつりと食える店という条件に合致する店があったのだ。
これか。ラテン系のイケメンが肉をナイフで刻む画像に目を引かれる腐女子もいるのかもしれぬ。
このビルは飲食店が多数テナントとして入っているのか。知らなかった。他の店もよさげな感じがしないでもないぞよ。
シュラスコ バウアー ブロガド
ローストビーフ丼、ステーキ丼、カレーに日替わりランチと掲示されている。とにかくエレベーターで7階に向かおう。
この店か。いかにもラテン的な店甘え。店内の壁に皿のようなものが多数飾ってあるのが、外からも見えるようになっている。なんだろうか。
スポーツ選手のサインが大量に飾ってある。プロ野球選手やオリンピック出場選手の名前が見受けられる。スポーツファンにはたまらないかも知れない。私にはなんの意味もない、ただの落書きされた皿にしか見えぬ。
店内中程の大きなテーブルに通される。ランチタイムだが、それほど混んでいない。ゆったりと食べられるのが嬉しい。ポツポツと客が入ってきた。団体客は別室に通されるようだ。それでなおさらのんびりとできるのだろう。店内には軽快で明るいブラジル音楽。少し気だるそうな独特の女性のボーカルが耳に心地よい。
これは居心地がいい店だ。
ランチメニューは四択。ローストビーフ丼を注文すると、サラダバーに向かう。
スープと漬物もある。スープは中華卵、コーンポタージュ、味噌汁が選べる。卵スープが意外にも甘くてうまい。ふんわり卵が舌触り滑らか。ドリンクバーもあるが別料金だ。
サラダは野菜たっぷり。瑞々しくて酸味の効いたフレンチドレッシングとも相性が良い。
ローストビーフ丼
薄くスライスされたローストビーフは柔らかく、肉の旨みが強い。脂はあまりない。赤身肉だから当然だろう。味も付いていない。メニューには卵の黄身と特選タレに絡めて食べろと書いてある。ご飯を食べてみる。なるほど、タレはご飯にかかっているのか。肉にかけずにご飯とかけることで、よく馴染ませるのか…
ん?
ふと、閃いた。もしやこの肉をノリのようにご飯に巻いてみたらどうだろうか。黄身を潰し、軽くご飯と混ぜ合わせてから、薄いローストビーフをきれいに広げる。とにかく肉が多い。20枚はあるだろう。これをノリのようにご飯を巻いて食べてみる。
美味い。
もしや、このレタスも一緒に巻けばさらに美味いのではなかろうか。仮説を実証する。ふむ、思った通りだ。レタスの食感とさっぱり感が加わり、味わいが広がるではないか。いちいち肉を広げるのは面倒だが、店も一枚ずつ手切りをしているのである。敬意を持って食さなければ失礼というものだ。ひたすら食べ進む。漬物三種のうち、青きゅうりと柴漬けは合わない。壺漬けがいい。
こうして食べ進めるうちに想定外の事態が発生した。
ご飯がない。どんぶりの中は95パーセント肉のみである。どうしようか。もう一度サラダを取りに行くのもありだろう。だが、だいぶ腹が膨れてしまった。無理だ。
肉だけを食べよう。ワサビが欲しい。黒胡椒が欲しい。ないだろうか。席を立ち、サラダバーの周りを走査する。ない。調味料の類は、ドレッシングを除いて一切ない。
万事休す。
気を取り直して席に戻り、ライス抜きローストビーフ丼を食べる。ついに最後の一枚。これを食べてフィニッシュだ。日の丸のように真っ赤などんぶりは、ついに空になったのだった。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)