モーニングに悩む
連日の出張に疲労困憊の私は空港行きのリムジンバスに乗る気力もなく、ホテルのベッドでダラダラとしていた。このままでは、さすがに飛行機に間に合わなくなるので、意を決して布団から出る。身支度をしてタクシーを呼び、大阪空港に向かう。朝食を食べる時間はないなと思っていたら、一通のメールが。
「使用機材到着遅れのため、25分遅延。」
なんだと?タクシーに乗る必要がなかった?まあ、いい。気持ちを切り替え、空港で朝食を探す。うどんの一杯くらいすすっても、バチは当たらんだろう。店を探そう。まずは一階。
蓬莱、たこ焼き、カレー。
うーん。
二階に行こう。アンデルセン(ベーカリー)にスターバックス。
うーん。
お、ここにレストランがあるやないけ。モーニングは…ない。朝10時からウナギやらトンカツやら食えるのか?
うーん。
551 蓬莱
汁物が飲みたい。蓬莱のモーニングはスープがついてたはずだ。豚まんを食うか。
気乗りはしないが、一階の蓬莱に戻り、メニューを確認。うん、ここでいいや。
私の前に並んでいた一人客と同じカウンター席に案内される。
メニュー
さて、なにを食べようか。
最終確認にメニューを見る。カウンターに座っていた、私の前の一人客が席を立って店を出た。きっと思い描いていたメニューと現実が乖離していたのだろう。でも、他に食べる店はありませんよと心の中でつぶやく。
うん、やはりAセットだ。豚まん+ワンタンスープのセット600円なのだ。
飛行機までは40分ある。20分で食べれば無問題だ。
しばし待つ。
551蓬莱 モーニングセット
「横からすみません。」
店員が一言、断ってから、私の前にAセットをスライドさせた。ワンタンスープと豚まんだ。
まずはスープから。レンゲですくい、口元に運んだそれをすする。鳥出汁の薄味で優しいスープだ。飲み込む。胃にしみる。もう一口、同様に口に入れる。今度はネギの食感と辛味がアクセントになって、一味違うスープを楽しめる。飲み込むと胃にしみるのは変わらない。もう一口。これは止まらなくなりそうだ。
はやる気持ちを抑えて、ハシでつかんだワンタンをレンゲに載せる。口元に運び、一気に吸い込む。食感はつるんとして、噛むとほのかにエビが匂い立つ。白菜が香りを引き立てる。うむ。中国の水餃子では、豚肉とエビと白菜が基本だから、美味いのは当然だろう。定番とはそういうものだ。
蓬莱といえば豚まん。551。手でつかみ、豪快にかじる。厚めの皮はしっとりと弾力があり、食べ応えがある。肉はしっかりとした味付けだが、パンチがない、控えめな味付け。おかずと食べても邪魔しない。自己主張が強ければいいというものではないのだ。
辛子酢醤油を小皿に作り、豚まんにつけて食べる。中身以上に、辛子が厚めの皮の味を引き立てる。意外だ。
美味い。
薄味の中華にはジャスミン茶が合うなぁ。スープを飲み、豚まんをかじり、ときどきワンタン。なくなるまで終わらないループ作業、ルーチンワーク。至福のひと時だ。
最後はどんぶりを両手でつかんでスープを飲み干し、フィニッシュ。中華のモーニングも侮れないな。そろそろ時間だ。ゲートに向かおう。出口付近の席で、初老の男性がCセット(ミニラーメン+ちまき)を食べていた。
美味そうだ。
次回食べよう。
551蓬莱
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)