長堀橋 芦池更科
今回も素泊まりで宿泊したので、なにを食べようかネットで調べてみた。近くに朝から開いてる、普通の蕎麦屋があるらしい。興味が湧いたので、行ってみることにした。
ホテルから歩くこと数分、その一角だけが、年季の入った建物だ。おかみさんが外で窓の拭き掃除をしている。足が不自由みたいだ。ネットには、そこだけ時間が止まっていると書かれていたが、まさにその通り。迷わずに店に入った。
メニュー
テーブルに座ると、おかみさんがお茶と新聞を持ってきてくれた。大阪だからなのか、そば店なのにメニューの大半はうどんとどんぶりだ。すごい。立ち食いそば店ではない。昭和のうどん屋さんだ。蕎麦を食べにきたのだが、ここは大阪だ。粉もんだ。ネットで評判の高かった肉うどんを注文する。
大将のおじいさんが調理、おかみさんであるおばあさんがフロア担当だ。頼んだものの、調理場は静かだ。店内はテレビもついていない。調理している様子がない。
改めて店内を見回すと、今は使われていない、年代もののレジが店の隅に鎮座している。そこだけ手書きメニューの字がポップだ。まさか、このおばあさんが若い娘のような字体で書いたのだろうか?普通に考えて、これを書いたのは孫か娘だろう。娘と言っても私と同年代か、下手すると年上かもしれないが。
肉うどん
おもむろにおばあさんがよろけそうになりながら、肉うどんを私の前に置いた。おお!これぞまさに大阪のうどんだ。
スープは薄口。上品な味わい。立ち食いうどんのようないやな後味が残らない。うどんはコシが弱く、ふんわりとしているが、伸びているわけではない。武蔵野うどんと似ているだろうか。優しい味がする。肉は固くもなく、軟かい訳でもない。噛めば肉汁が出てくることもない。肉の旨味はスープに移ってしまっている。そう、こいつは出汁用肉なのだ。食感のみを楽しめばいい。フレーバーはつゆに溶け出したのだ。
ときおり混ざるネギのシャキシャキとした食感がこれまたたまらん。うどんをすするスープを飲む。この単調なルーチンをひたすら繰り返す。美味い。うどんがなくなったので、スープを飲み干して完食だ。
あ、七味を入れて食べるの忘れた。
支払いを済ませて店を出るときに、おかみさんが大きな声で「おおきに!」と言ってくれた。来てよかった。ホテルの朝食では味わえない感動がある。満足感を抱えて、私はホテルに戻った。
芦池更科(食べログ)
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)