大通駅ランチ
ホテルの部屋で仕事をする。外はいい天気だ。時計を見ると13時を回っていた。沖縄は今日もまた台風だが、先週の台風で私はいくつもの出張がキャンセルになった。その手続きのために、大通にある航空会社のカウンターまで行かねばならないのだ。
今日のランチは札幌駅北口の蕎麦屋にしようと昨晩から決めていた。ホテルを出て、札幌駅に向かう。横断歩道を渡ろうとしたその時、私は180度回頭した。
蕎麦もいいのだが、今晩は資産家の鈴木のおごりだ。高い寿司を食ってやるのだ。ならば昼は肉だ。がっつりいってやる。大通に行けば店はいろいろあるはずだ。そう思い、地下鉄に乗った。
電車を降りて地上に出る。外はいい天気だ。泉の像の向こうにテレビ塔が青空に映える。
花壇にもブルーサルビアをはじめ、カラフルな原色の花々が咲き乱れている。これが最後だ。消えゆく前のろうそくの火と同じだ。これから寒さが厳しくなり、冬化粧の準備が始まるのだ。
炭火ハンバーグ 大かまど 芝
飲食店が立ち並んでいる場所は分かっている。確かあの辺りに気になる店があったはずだ。それもハンバーグ店だ。「さくら」の向かい側だったと記憶している。歩いてみると、ポツンと看板があった。
これだ。すごく気になる。フルーツファクトリーの店内に入る。
ここで専用エレベーターに乗る。心の準備だ。この情報が遮断された閉鎖空間に多くの情報を提示される。
ごはんへの執念も並々ならぬものを感じ取ることができる。
これだよ、これ!まさに私が求めているハンバーグは!いや、冷静になれ。安易に食いついてはならぬ。
鉄板派か煮込み派か、この刹那の時間に決めろと言うのか。
エレベーターのドアが開く。ケーキのショーケースが目に入る。明るい店内に並んでいるのは若い女子。ボサノバの流れる五十路のおっさんには少し気恥ずかしい雰囲気だが、気にしない。ハンバーグを食べたいのだ。14時前でこの客の入り。私の勘は間違っていないようだ。
メニュー
名前を告げて待合室に一人たたずむ。壁にトッピングの解説が貼ってある。スープカレーと言いハンバーグと言い、なかなか奥が深い。客単価を上げるための涙ぐましい努力と言ってしまえばそれまでなのだが。スペシャルトッピングかアボカドにするか、悩むところだ。昨晩の轍は踏まない。昼は豪華に躊躇なく。
20分ほど待ってようやく店内に案内される。キッチンに炭火とかまどが鎮座している。
さて、何を食べようか。店員がおしぼりを手渡してくれる。細やかな気配りが嬉しい。鉄板ハンバーグは牛肉百パーセント、煮込みハンバーグは牛豚鳥の合挽きだとのことだ。
うう、どうしよう。
トロトロチーズの鉄板ハンバーグとトマトとチーズのデミグラス煮込みハンバーグ、いずれにするのか悩む。
隣の若いカップルを見る。鉄板チーズだ。しかも彼女の方にはアボカドがのっている。
これだ。
鉄板ハンバーグアボカドトッピングをオーダーする。
スピニングボウルサラダ
しばらくして、氷で冷やされた巨大なボウルがワゴンでテーブルのそばまで運ばれてきた。店員がボウルを勢いよく回すと、ボウルに何かを垂らし始めた。中の野菜が冷える。スピニングボウルサラダとのことだ。食材の説明は女性客の方が丁寧だ。アントシアニンがどうとか話しているが、私にはなかった。
そうして供されたサラダの見た目はいたって普通だ。 派手なパフォーマンスは何だったのだろうか。必殺ワザを繰り出されたのに、地味な攻撃だったというか、効果がなかったというのか。
なんなんだ。
まあ、いい。腹も減っているから食べよう。
うん?
適量のドレッシングがサラダ全体に平均的に馴染み、味に濃淡がない。なるほど。シーザーサラダはドレッシングがドロっとしていて、かけすぎたり足らなかったりするのが不満だが、その問題点を見事に克服している。素晴らしい。まさに、斬鉄剣のごとし。いや、北斗神拳か。一見、効かぬと思った技が時間差で炸裂なのだ。
あべし。
鉄板とろとろチーズハンバーグ アボカドトッピング
そして運ばれてきたはメインのハンバーグだ。もう見た目がやばい。
トロトロのチーズ。焦げ目も美味い。肉も野菜も包み込む。肉も美味いが野菜も美味い。日加減も絶妙、口に入れるとほろりと崩れる。熱々を食べ進む。油断するとチーズで火傷しそうになる。
素晴らしい。
超粗挽きのハンバーグは肉の臭みなく、口の中に入れるとほろっとするのに、かみごたえがある。ただ、野菜の旨味に肉が負けている。チーズとドミグラスソースにも負けている。脇役の存在感とクオリティが高すぎるのだ。アボカドとの相性はバッチリだ。
しかし思ったほかボリュームがある。なんとか食べたが、隣の彼女はタルトを追加注文だ。デザートは別腹というが、いやいや、すごい食べっぷりだな。
また食べに来よう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)