il giardino di maromina
昼前に駅に着きGoogleマップを頼りに娘のハルハルが住む部屋を探す。中国育ちの彼女が今春から日本の大学に通うことになったのだ。ここだ。ハルハルはまだ帰っていなかったので、周りを少し散策する。静かないい街である。言い換えると、さびれた街である。古びたビルは、まるで昭和が息づいているかのようだ。
しばらくしてハルハルが帰ってきたので、一緒に部屋に入り、中を確認する。うーむ、本当にダンボールが置きっぱなしだ。こいつを片付けるにはどれほどの時間が必要だろうか。その前に腹ごしらえだ。ハルハルはパスタが食べたいという。ならば、先ほど見かけた、すぐ近くの店に行こうじゃないか。
住宅街の中にある、長い名前の少し洒落たカフェ。普段なら外でパスタなど食べはしないのだが、ハルハルのリクエストならば喜んで食べる。
メニュー
これがランチメニューか。結構、種類があるな。ハルハルはカルボナーラ、私はイカのワタクリームソースを食べることにした。
ハルハルがドアを開けて店の中に入る。私も付いていく。店内はほぼ満席だ。唯一空いていた、一番奥のテーブル席に案内される。小さな店だが、センスの良い洒落た内装だ。
サラダとバケット、スープ
まずはサラダとバケットが運ばれてきた。キラキラに光る野菜には爽やかなフレンチドレッシング。パリパリのレタスを噛み締めると、赤タマネギの香りが立ち上り、鼻腔をくすぐる。野菜が本当にみずみずしい。
バゲットには香ばしいオリーブオイル。本来は断面がしっとりしているはずなのだが、少し乾燥していた。切ってからだいぶ時間が経っているのだろう。おそらく、ランチ前の仕込み時からラップもせずにおいてあったのだろうか。女性の肌と同じで、保湿しなければ乾燥してパサパサになる。オリーブオイルで食べるならば、しっとりとした生地でなければ、食感が悪くなる。
次にスープである。スプーンがない。フロア担当の初老の女性に尋ねてみる。
「スプーンはありません。容器の耳を持って飲んでください。」
ええ?マジで?
私はいいけど、女性客は嫌がるのではなかろうか。
まあ、いい。
言われた通りにしよう。両手で耳をつかんで持ち上げ、口をつけて飲む。トマトとオニオン香るスープは、細かいひき肉の入った独特のふんわりスープ。だが、どうやってても容器の中に大量に具が残ってしまう。これはフォークで食えってか?
のちに調べてわかったことだが、これは「カフェオレボウル」といい、両手で耳をつかんでガブガブと飲むのが作法だそうだ。スプーンは使わない。これはフランスではパンをスープに浸して食べる習慣があるからだそうな。
ならばオリーブオイルは蛇足なのでは?
まあ、いい。過ぎたことだ。
イカのワタクリームソース
私もイカワタパスタを作るが、クリームではなくトマトだ。この店はどんなテイストを味合わせてくれるのだろうか。もう見た目が自作パスタと違う。自宅で電子レンジでゆでた麺とはツヤが違う。フォークでクルクルと巻き、口に運ぶ。
おお!
アルデンテに茹でられたパスタに、ねっとりと絡みつくクリームからは、ほのかなワタの香り。なるほど、こうやった方が味が濃くなり、しっかりとイカの旨味を味わうことができる。イカの身の火加減もちょうどいい。柔らかくとも、歯ごたえは失わない。美味い。
これがプロの味だ。
カルボナーラ
ベーコンがソーセージのような味だ。普段食べているものと明らかに異なる。濃厚なクリームとベーコンの塩気が、重層的な味わいを醸し出す。美味い。
ものの数分でパスタは胃の中に収まった。久しぶりに美味いパスタを食べた。こんな機会をくれたハルハルに感謝なのだ。
ごちそうさま
店を出たところで、道端の花を撮影するハルハル。中国と違って日本は緑が豊かだ。街中にも多種多様な花があふれている。
さて、荷物を片付けますか。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)