麺屋 白虎
入院していた妻の退院許可が急に出た。慌てて家のことを済ませてから、病院に迎えに行く。退院したら何を食べたいのか妻に尋ねると、ラーメンだという。しかも豚骨ラーメン限定だ。首里にある妻の実家にも立ち寄る予定である。
豚骨ラーメン、首里、美味い店。
これらから導き出される答えは…首里の白虎だよな、エルエルフ。入院代を精算し、妻が同室やお世話になった方々に挨拶を済ますと、病院を後にした。連絡ミスで妻の昼食も用意されていたのだが、妻の意志は頑なだった。
病院食はもう嫌なの。
私の頭もお腹も豚骨ラーメンに設定されてるの。
優柔不断で断るのが苦手な妻が、キッパリと昼食を断っていた。食欲ってすごい。車を走らせ、首里石嶺町。モノレールが延伸されて、道路が拡張されている。ここに白虎がある。
駐車場が分かりにくい。店の向かいの細い道を入ったところにある、大きな駐車場の10番から14番だ。店が混んでいたので、駐車場も満車。10分ほど待つと、何台かが去っていった。車を停めて店に向かう。
メニュー
店内に入ると、店主から食券を買うように促される。身重の妻はまだ外にいる。我々夫婦の取り決めでは、足の速い私が先行して店内に潜入し、私が食べたいと思う二品を注文することになっている。一見の店で妻が頼んだものは大概ハズレという、過去の膨大な失敗データに裏付けられた、我々夫婦の外食対策なのだ。
メニューはほぼ二択。つけ麺は我々の選択肢にない。よって、妻には豚骨醤油ラーメン全部載せ。私は辛味噌にしようかな…いや、なんだか梅虎ラーメンが気になる。豚骨醤油よりもこってりしてるとは、どんなラーメンなのだろうか。怖いもの見たさだ。ついでにチャーシューをトッピングだ。ランチは250円で半餃子とライスがセットにできるのだが、妻はライス不要と言っていたので、二人で餃子を一皿食べよう。
テーブルの二人席に通されたところに、妻が到着。お冷のレモン水が爽やかだ。店は夫婦二人で切り盛りしてるようだ。食券をお母さんに渡すと、ランチタイムは麺の大盛りが無料という。妻はいらないという。私はせっかくなので大盛りにした。普段は炭水化物を節制してるのだから、こういう時は構わずに糖質を喰らってやるのだ。妻の退院祝いだ。
梅虎ラーメン
まずは私の梅虎ラーメンが運ばれてきた。スープをレンゲですくう。ドロドロだ。ポタージュのようだ。一口飲む。
え?
こってり…してない?まさかの梅の香りが爽やか。なんじゃ、こりゃあ?
スープをもう一口。こんなにドロドロなのにくどくない。トッピングに梅干しが載っているが、いやいや、きっちり溶け込んでるよ。なんだこれ、反則だ。
続いて麺だ。なかなかの太麺にドロドロスープがよく絡む。きくらげは生だろうか。シャキシャキの食感が味にアクセントを添える。野菜もたっぷり。キャベツともやしを麺と一緒に食べる。スープとの相性もいい。白い肉は鶏チャーシューだ。あっさりした味が、梅虎スープとでも呼ぶのだろうか。これまた合う。
なるほど。だから豚チャーシューが別皿で出てきたのか。梅と鶏肉は相性がいい。焼き鳥でも、揚げ物でも鳥と梅の組み合わせは鉄板だ。対して豚と梅の組み合わせは要注意だ。バランスが取れていないと、味が喧嘩する。
豚骨醤油ラーメン
遅れて妻の豚骨醤油ラーメンも運ばれてきた。我々夫婦の取り決めでは、猫舌の妻のために、私が先行して食べることになっている。熱いものが好きで早食いの私と、猫舌で食べるのが遅い妻との時間差解決のために編み出された協定なのだ。しかし、二ヶ月半に渡る勾留生活で妻の食欲はマックスに達していた。熱さをモノともせずに、妻がガッつく。美味しい、美味しいと舌鼓を打っている。
餃子はニンニク多め、皮がもっちり、懐かしい味わいだ。
妻が豚骨醤油ラーメンを勧めてきた。うん、私も食べてみたい。まずはスープから。あれ?豚骨醤油って、こんなにもさらっとしていたかな。もう一口。うーん、こんなにもインパクトがなかっただろうか。こっちを食べてみて。妻に梅虎を勧める。妻がスープをすする。
「なにこれ?クセになるー!」
なるよね。しばらくして、再び妻が豚骨醤油を食べる。
「え?このスープ、こんなにサラサラだったっけ?時間が経ったから?」
違うよ。梅虎を食べたからだよ。また、すごいラーメンを作ったものだ。
チャーシューはしっかりした食感、タレは薄味、ラーメンの邪魔をしないためだろうか。単品で食べた方が美味しい気がした。
うう、お腹いっぱい。餃子とチャーシュー食べれる?妻が答える。
「うん、食べれるよ。」
妻は食べるのは遅いが、ペースを落とさずに黙々と食べることができる。意外に大食いなのだ。トイレは温水洗浄便座ではなかった。
二人で完食。また来たいね。出雲の夜鳴きラーメンもそうだったが、最近は梅がトレンドなのだろうかな。我々のラーメンの歴史にまた1ページ。
麵屋 白虎
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)