沖縄ちゃんぽん

沖縄県那覇市 食事処 みかど ちゃんぽん

沖縄の食堂に極上ちゃんぽんを求めて

沖縄には「食堂」と名の付く店が数多くある。もちろん有名な店もあって、先日閉店してしまった、超大盛で有名な波布食道(最近、別の方が後継店をオープンした)や、空港近くの最強食道、若狭の高良食堂、首里のあやぐ食堂などなど。特に深夜までやっている食堂と言えば、個人的には三笠、みかど、一銀食堂の三店となる。

特に一銀食堂は二十四時間営業なので、若い頃は午前三時ごろに食べに行くと、知人と出くわす確率が高かった。三笠は那覇市久米と那覇市松山の二か所にあるので、特に久米店は、那覇市辻に住んでいた頃にはだいぶお世話になった。あの頃、よく行ったスナックは久米にあったから、帰り道にちょくちょく寄っていた。アフターに使ったこともある。なんせスナックの女子の大半が母子家庭だ。お土産は翌日の朝食になる。

個人的に沖縄のB級グルメ「ちゃんぽん」が好きで、今でも機会があれば美味しい店を探している。私の中で最高のちゃんぽんは、今は亡き一日橋のパチンコ&スロット「チャンピオン」のレストランで食べたものだ。美味しいので、ギャンブルをしない人も食事に来ていたくらいだ。ご飯の上にのっかった豚肉とシャキシャキの野菜炒めに、とろっとろの玉子が絶妙の火加減で載っている。付け合わせは福神漬。白いご飯の上には淡色野菜。その上に黄色と白の玉子、皿の脇には真っ赤な福神漬。見た目にも見事な配色でもあった。

沖縄のちゃんぽん

かつてはよくチャンピオンにスロットを打ちにも、チャンポンを食べにも行った。相性がいいのか、チャンピオン一日橋ではよく勝ったものだ。あの店で四号機「ドロンジョにおまかせ」を打って大勝ちしてから、スロットにハマった。ギャンブル嫌いの私がなぜにハマったか。それは勝てるからだ。相手はコンピューターだ。この話をすると長くなるので、やめておこう。腹が減ると、レストランでチャンポンを食べた。それまで美味しいと思ったことがなかったのに、この店で美味さの虜になった。

数年後、チャンピオンは別のパチンコ店になり、レストランも変わってしまった。チャンポンも、かつての味ではなくなった。今ではマンションが建ち、敷地の一部はホンダの営業所になっていた。当時の面影は一切ない。

あのとき食べたチャンポンと同じか、上を行く店を探すのが、私のライフワークの一つでもある。もちろん、対象は沖縄の食堂だ。おばあが作る、最上のちゃんぽんを求めて、ひたすらあてもなく、食堂に立ち寄る機会があれば、チャンポンもしくは味噌汁を注文し、食べては味に失望し、まだ出会えぬ店を探すことの繰り返しなのである。

お食事処 みかど

会社の役員らと高級和食店で食事を済ませたのちに、近所のキャバクラで二次会となったのだが、社長が「みかどで飯を食おう」と言い出した。

え?飯って、今、食ったばかりでは?

社長をディスるわけではないが、事実として、私の一歳下の社長は偏食家である。食べられないものがいろいろとある。そのために、先ほどの店でも何品か口にしていない。

腹が減るわけだ。

女性秘書もおなかが空いたという。彼女は細身で美人さんだが、はっきり言って大食いだ。見た目には分からないのだが、本人曰く、うちの会社に来てから太ったという。元が細すぎたのだろう。若い頃は芸能事務所に所属していたらしいので、見た目にはかなり気を使っているが、大食いだ。

もう一人の役員は、情に厚くて気のいい男なのだが、体格は大柄でスキンヘッド。見た目はヤクザ。でかい声で関西弁をしゃべるために、あちこちで誤解を受けることが多い人物だ。

みかどで食事するなんて、何年振りだろうか。少なくとも、ここ十年は店に来た覚えがない。店頭メニューの最上段にはちゃんぽんがある。そうだ、ここも食堂だ。しかも由緒ある店だ。もしや、極上のちゃんぽんに出会うことができるやもしれぬ。腹七分目にも関わらず、がぜんと食欲がわいてきた。ささ、行きましょう、入りましょう。

四人でみかどに入る。午後九時前なので、店はさほど混んでいない。

メニュー

テーブル席に座るとメニューを見た。

ちゃんぽん(みかど風)とある。この料理に正確な定義はない。肉と野菜をいためたものをご飯にのせ、玉子でとじる。それだけだ。「肉」にはポークも含まれる。沖縄において、ポークとは「豚肉」を指さない。「ポークランチョンミート」いわゆる缶詰のSPAM等を指す。「みかど風」とわざわざ断りを入れるということは、なにか独特な調理法なのであろうか。

あちこちが黒塗りになっているのが気になるが、みかどの記事が置いてある。これによれば、カツどんがお勧めのようだ。ゆし豆腐定食も捨てがたいが、これは二日酔い対策である。

トイレは様式。温水洗浄便座ではなかった。

ちゃんぽん(みかど風)

まずは秘書が頼んだポーク玉子が運ばれてきた。写真を撮らせてもらう。これもまた沖縄のソウルフードの一つ。大して美味いものでもないが、ついつい食べてしまう。

玉子の甘みとポークランチョンミートの塩気が混ざり合い、豚肉由来のコクとうまみが、脂とともに口に広がる。それをごはんが受け止める。

那覇空港に「元祖ポーク玉子おにぎり本舗」がある。あの店も美味しいが、元祖もくそもない。昔から存在する、家庭でもコンビニでも食堂でも愛されてきた料理だ。勝手に独占してほしくない。

続いて私のちゃんぽんだ。見た目は美味そうなのだが、味はどうか。まずは一口目。ん?肉は豚肉でもポークでもない。これは…

まさかのハッシュ?

チャンポンにハッシュか。これが「みかど風」なのか。

ハッシュとは、沖縄で販売されている食材である。コンビーフハッシュと言い、賽の目切りにしたコンビーフと水煮したジャガイモを混ぜた食材で、チキナーと炒めても美味い。だが、ちゃんぽんに入ってるのを見るのは初めてだ。いつだったか、ストゥーで野菜をいためたチャンポンも驚きだったが、あれよりはマシだろうか。

コンビーフハッシュ

野菜の中でも特にキャベツの甘さが際立っている。玉子も甘い。味付けは塩味だが、素材の甘さをよく引き出しているだけに、食べていくうちに味が単調になってくる。

ああ、福神漬けが欲しい。

玉子の火加減は半熟絶妙だが、何か違う。これは私の求めるちゃんぽんではない。

まるでドクロストンを探し求めるタイムボカンの心境である。いつかは出会えるさ、極上のちゃんぽん。その日を気長に待つことにしよう。

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