沖縄での正しい酒飲みの締め方
内地から知人が団体で沖縄に遊びに来た。昨年度の打ち上げだとのこと。明日が本番の観光とヒーチパーリー(沖縄では年寄りはこう発音する)とのことで、今晩は前夜祭だ。国際通りの沖縄居酒屋から始まり、キャバクラを二軒はしごしたら、はや午前一時。そろそろ限界かな。帰ろうよ。女の子は元気だねえ。朝五時までここで働いてから、朝キャバでまた仕事するなんて。
これが若さか。
私は代行で帰らなければならないし、腹も減った。締めのステーキは今日は遠慮したいと皆が言う。私も一昨日、400グラムのステーキを食べて、翌日は胃もたれだ。しかし、店の女の子から美味しいステーキ屋を教えてもらったから、ちょっと興味もある。忘れないようにメモしておこう。松山のヒカルステーキ。88でもない、サウザンドステーキでもない、第三のステーキ店だ。
肉は太らない。
さて、何を食べる?個人的には汁っけも欲しいな。え?沖縄そばがたべたいって?分かった、確かにそれはオーソドックスな締め方だ。ならば行こう。我々が目指すべき店はあそこしかない。え?そこはつるまる、ちがう店だ。もう少し先だよ。
那覇市松山 すばや
那覇市松山、沖縄随一の繁華街をガラの悪いおっさんが四人ばかりで歩く。目的地にはすぐに着いた。
ここは深夜しか営業していない店だ。私の記憶が確かならオープンは午後11時だ。もう少し早いかもしれないが、とにかく夜中しか営業していない。沖縄民家風の店構えである。「すば」とは「そば」のこと。沖縄では「あいうえお」が「あいういう」と訛るので、「そば」は「すば」になる。
メニュー
中に入ると自販機が待ち構えている。私は常にブレない男だ。ここに来たら迷わずによもぎそばの半そばなのだ。半そばとは、文字通りハーフサイズだ。これが嬉しい。よもぎたっぷり、出汁の効いたスープ。ああ、考えるだけでヨダレが出てくる。中国語で言えば口水だ。だから「口水鶏」は「よだれ鶏」と訳されてしまうのだ。
私の後ろでアホみたいに金持ちの知人が私に訊ねる。こいつの個人の貯金通帳にはうん十億円が入っていると、仲間うちの一部では有名だ。そう、やり手なのだ。
「野菜が入っているソバはどれですか?」
ならば言おう。もちろん、よもぎソバだよ。ちなみに私は半ソバなのだ。ヘルシーなのだ。糖質控えめなのだ。うはははははは。
「それいいですね。私もそれにします。」
ふむ。それが正解だ。え?ジューシーも食べるの?沖縄的には正解だが、健康面ではどうだろうか。でも、せっかく沖縄に来たんだ。かまへん、かまへん。
カウンターの奥のテーブル席に陣取る。酒はビールしかない。酒は飲みたいが、ビールは飲みたくない。お茶を飲もう。この店はセルフだ。自販機の隣にある水タンクに蛇口にコップを当て、お茶を入れる。出が悪い。なかなかコップに貯まらない。
店内には有名人のサインでいっぱいだ。二月になれば野球やサッカーのキャンプで沖縄は大賑わい。有名人も松山に繰り出すって寸法だ。深夜のうまい沖縄そば屋なら、サインで壁が埋まるのも当然だろう。
よもぎそば
来た来た。ヨモギたっぷり。スープが美味い。飲んだ後にしか食べたことがないので、素面で飲んだらどうかわからないが、塩加減がちょうどよく、独特のコクというか後を引く旨さというか、この店のスープの特徴なのだ。
麺はモチモチ。軟骨ソーキはトロトロ。ヨモギ好きの私にはたまらない。半そばというのも、あまり見かけない。ちょっと食べたいという飲んべえならではのニーズに応えた、嬉しいメニューなのだ。ね?この店、美味いでしょう?皆がうなずく。よかよか、よかばい。
さ、帰ろ。
ごちそうさま
後日、改めて自販機の画像を見た。
よもぎソーキそば(半そば)
なんだよこれ、なんで私はこいつを食べなかったんだ?新しいメニューか?何年も見落としていたのか?酔って分からなかったのか?
次回は迷わずこいつにしよう。私はブレない男なのだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)