忘年会
取引先の新聞社の担当者と忘年会をすることになった。店は肥後勝。通い始めて十五年近くになる店だ。ここの寿司は完全に内地の寿司店と同じだ。熱帯魚は扱っていない。ネタもすべて内地から取っている。しかも日本酒が充実している。私はいつも田酒を頼むのだが、二回に一回しかありつけない。また、ここの馬刺しをはじめとする馬肉料理も美味い。熊本で食べるより美味いのだ。
お座敷で飲み始め、生ガキ、マツタケ土瓶蒸し、刺身盛り合わせ、馬刺し三種盛などに舌鼓を打つ。例によって田酒はなかったが、獺祭を呑む。盛り上がる。会話が弾む。酒が進む。気がつけば、ベロベロだ。いつもならこここらスナックで二次会だ。ところが、なんの脈絡もなく、ヤギを食べに行こうと言い出した。栄町に安くてうまくてひどい店があるんですと言う。私も勢いでつい「行きましょー!」と言ってしまった。
お愛想して店を出る。いつもならすぐに捕まるタクシーが見当たらない。忘年会シーズンだからか。こういう時に、景気がいいんだなぁと実感する。数分して目の前を通ったタクシーを捕まえて、栄町に向かった。
ヤギ料理 まるまん
那覇市の栄町といえば、分かる人には分かる。赤線地帯だ。しかし、ここ何年かで、だいぶ状況が変わった。栄町市場に若い人が店を出して、観光客や地元客で賑わうようになった。外国人も店を出している。なかでも便利屋の餃子はうまくて有名だ。栄町市場で買った食い物は飲み屋に持ち込みオーケーなので、いろんな店の食べ物を一度に食べることができる。
タクシーは栄町の交番の前で停まった。店は向かい側だ。
中に入ると客はカウンターに一人だけ。我々四人はお座敷に上がった。メニューはいたってシンプル。ヤギ刺し、ヤギ汁、ヤギソーセージ。なにを食べるか考えるまでもなく、すべて注文。こんなにヤギを食べて、大丈夫だろうかと一抹の不安がよぎるが、気にしないでおく。
山羊刺身
ヤギ刺しなんて、数年に一度しか食べない。しかもこの店は珍味付きだ。白いのは睾丸の刺身だ。もちろん、下処理して湯がいてある。臭みもなく、大して味もせず、コリコリした食感を楽しむ。ヤギ刺しはクセがあると言うが、私は好きなので気にならない。ちなみに私は羊肉も好きだ。実際には刺身というよりタタキである。
山羊ソーセージ
泡盛を炭酸で割りながら食べ進む。ヤギのソーセージ。これは初めての体験だ。ひとつ食べてみる。味は悪くない。濃いめの味付けだろうか。ただ、食感がイマイチだ。ソーセージと言えば、パンパンに詰まった肉から肉じる溢れるジューシーさが売りだと思うが、これにはそのタイト感がまったくない。緩い。ピーくらい緩い。うーん、微妙なメニューだ。自家製なのだろう。
ひーじゃー(山羊)汁
次はヤギ汁だ。このワイルドな味がいい。獣臭いと言う人もいるが、食い物なんて嗜好品だ。自分が美味ければいいのさ。たっぷりの生姜を入れて食べる。肉がゴロゴロ。食べ応えあり。フーチバーの香りがたまらん。しょっちゅう食うものではないが、たまに食うとうまい。四人ではすぐになくなる。もう一杯、お代わりだ。
もう、四人ともベロベロだ。この辺りから記憶が怪しい。そもそも、寿司屋の後にヒージャーってのがおかしい。この後、どうするんだ?ま、美味いからいいか。酒ならまだある。
フーチバー(よもぎ)玉子焼き
食べ物ラスト、フーチバー(よもぎ)玉子焼き?メニューにない。なんで、これが出てきたかもわからない。ケチャップ味がいいね。オシャレだ。なかなか美味い。
けど、腹がキツイ。あれだけ鮨を喰ってコレだもんな。きつくて当たり前だよ。
気がつけば五時間くらい飲んでますよ。そろそろ解散しますか。お疲れ様です。
ヘロヘロで家に帰ったのはいいが、妙に目が冴えて眠れない。
寝る前にヤギを食べるのは控えたほうがいいと、身をもって知ったのだった。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)