康楽 ちゃんぽん

長崎市 思案橋 中国料理 康楽 皿うどんとちゃんぽん

中国料理 康楽

出張ついでの長崎市グルメツアー、五十路の親父と若い娘たちの珍道中は、ついに第三ラウンドである。前菜の餃子、メインの地魚ときてついに締めの炭水化物である。長崎と言えばちゃんぽんと皿うどん。

ちなみにこれら、長崎を代表する料理は、世間一般に長崎県内のどこでも食べられると勘違いされている。出島がある長崎市内限定である。かつて長崎空港のある大村市でタクシーのドライバーにちゃんぽんのうまい店に連れて行ってくれと頼んだら、リンガーハットを勧められた。佐世保市も長崎県内であるが、有名なのは佐世保バーガーである。平戸や五島列島も同じく長崎県だが、食文化は長崎市内とはかなり異なる。韓国釜山からすぐ近くの対馬も長崎県である。

ちなみに中華料理とは、長崎の出島にあった唐人屋敷の料理店が、明治時代に中国料理を日本人向けにアレンジしたものが始まりらしい。長崎の郷土料理である卓袱(しっぽく)料理は出島から流入した文化と和食が融合し、和洋中の要素を取り入れたものである。

最終目的地は中華料理 康楽である。

店に入る。階段を上がり、二階席に通された。誰もいない。テーブルが無機質に配列された部屋で、我々一組だけが食事をする。少し不安になる。なんだかシュールな気がするが、気を取り直して食事をする。

メニュー

さて、なにを食べようか。一人につき一品の注文をすることがこの店の掟である。破ることは許されないらしい。食べきれることと金銭があるのとは別次元の話だが、ぶっちゃけ、座るなら一品は頼めと、客単価を保証しろとの店側からの暗なる要求である。圧力である。

まずは前菜である。続いては炒め物だ。

揚げ物も食べようか。

仕上げはもちろん、皿うどんとちゃんぽんである。こちらは5人なので5品を注文すれば良い。

ドリンクはハイボールなのである。

海蜇皮(クラゲ酢の物)

中華の鉄板である。酸味控えめ、きゅうりとレタスがクラゲの爽やかさを倍増させる。くどさもない。クラゲの干物に新鮮と言う言葉を使うのはおかしいのだが、とてもフレッシュな感じがする。素材の旨味と食感がうまく生かされているのだろう。

油淋鶏塊(鶏の甘酢ソース掛け)

本来はもも肉を一枚丸ごと揚げ、薬味を加えた黒酢タレをかける料理である。この店では鶏の胸肉を使っている。唐揚げのレタスのせ甘酢かけと呼んだほうが正確かもしれない。だが、味は本物より勝るとも劣らない。いや、むしろ女子にはこの爽やかな胸肉と甘酢の利いたさっぱりとしたソースと野菜がマッチする。この方がヘルシーに違いない。

冬菇豆芽(もやし炒め)

思いのほかうまい。黒のある味付け。野菜の旨味を引き出した調理、これぞ中華。味付けも濃くない。もやしのシャキシャキシャキシャキ感がたまらない。酒が進む。冬菇は日本語で「どんこ」と読む。冬菇シイタケのことだ。豆芽は沖縄ではまーみなー。豆の芽、つまりもやしのことである。正確にはもやしとシイタケの炒め物なのである。

ちゃんぽん

麺がすぐに伸びるから早く食べるようにと促される。5人でシェアして取り分ける。ピンクのかまぼこがカラフルだ。麺にそれほどコシはない。だが、代わりにたっぷりとスープを吸収して身にまとうことで、麺だけでも味わい深さを実現している。豚骨スープ、野菜、ちゃんぽん麺、これらが三位一体となることで完成するリッチな風味。まさにちゃんぽん。まさに本場。

皿うどん(細麺)

これって食べると口に刺さるやつですよね?と女子が言う。どんだけ硬い麺を想像しているのだろうか。そんなことはない。やもすると、店によってはひどく甘いあんかけを盛っているが、この店のものはほのかに甘い。だからこそ、野菜の味を、素材の魅力を邪魔しない。炒めた各種素材をあんかけがきちんとまとめあげトッピングされる。カリッと上がった皿うどんの麺を侵食していく。柔らかく溶かしていく。しばらくすれば、麺はパリパリであったり、ふやけていたりするが、味わい深さに違いは無い。これも箸が進む。

本来はソースや胡椒をかけたりするのであるが、この店は薄味だった。そのままいただくのが良い。やたらと調味料をかけるのは体にも良くない上に、料理本来の味わいを損なうことになる。日本人はもう少し食事の仕方を考えた方がいいと、最近とても痛感するのであった。

一晩で長崎の魅力を存分に堪能した。一人では無理だ。人数がいるからこそ可能となることもあるのだ。なんせ若い女性たちだ。五十路のおっさんのように、イッキやれだの、キャバに行くだの、うるさくない。 たまには少人数でワイワイと食事するのもいいと実感した、長崎の夜であった。

(Visited 4 times, 1 visits today)