宝雲亭 一口ギョーザ

長崎 一口ギョーザ 思案橋 宝雲亭 ニラトジとキモテキ

長崎の夜は今日も美味かった

長崎市内で開催する会議のために前日入りした。会社のスタッフも同行している。私のセクションは私を除いて全員女性スタッフである。若いのから先輩まで個性は揃いで、皆、優秀である。一部のスタッフは出張が難しいため、今回は若い女性スタッフばかりである。

せっかくなので、スタッフ一行で長崎グルメツアーを開催することにした。江戸時代より国外への窓が開けられた数少ない都市。しかも南蛮への窓口は長崎が唯一であった。江戸時代に海外との交流が認められたのは薩摩を通じて対中国の琉球、対朝鮮の対馬及び蝦夷地を通じて対韃靼の松前の4か所だけなのだ。

多彩な食を楽しめるこの地で、一か所に腰を落ち着けずに、お腹がいっぱいになるまで少し食べては移動することにした。情報は地元民が提供してくれる。ネットの情報よりもヒューミント(人的情報)の方がはるかに正確である。

一口ギョーザ 宝雲亭

第一弾は餃子。一口ギョーザ専門店だ。大阪や博多が有名だが、長崎でも一口ギョーザはメジャーなのである。

店内は1階がカウンター席となっている。団体は階段を上って2階のテーブル席に案内される。

メニューはシンプルだ。餃子、ニラトジ、キモテキ、牛すじのみ。ドリンクは充実している。餃子と豚ニラトジ、キモテキを注文する。

餃子

餃子の皮は薄く、中身は甘い。調味料ではなく、まさに素材からにじみ出た甘味である。味付けは薄味で、お酢だけでいただける。大きい餃子はどうしても皮が厚くなり、小麦粉の存在感が強くなる。水餃子であればそれでもいいが、焼き餃子では分厚い皮がゴワゴワになり、餃子ではない何かを食べてるような気になってしまう。大きさだけに頼るようなジャンボ餃子は、あまりおいしいものを食べた記憶がない。もちろん稀にあるのだろうが、記憶に残っていない。という事はやはり美味しくなかったと言うことだ。

だが一口餃子は餡の量が少ないので、無理に皮を厚くする必要がない。言い換えれば、極限まで薄くすることができる。確かに、普段食べている餃子の王将に比べると皮の厚さがは半分くらいだ。皮の存在感を減らし、ジューシーな具の旨みをしっかりと味わうことができる。まるで小籠包のようだ。具をメインにし、皮の存在を極限まで減らすことで、素材の旨味を堪能するための工夫が、進化が一口ギョーザなのであろうと実感する。

豚ニラトジ

にら玉とは呼ばずにニラトジである。私には少々味が濃い。地元民はソースをぐるっと一周かけてから食べるらしい。だが、ソースがかかっていない部分を食べても、塩気が強めに感じる。玉子の甘みとニラの香り、そして豚肉の旨味が見事に合わさって、一つの完成された味わいを楽しませてくれる。ニラトジだけでも十分に美味いにも関わらず、さらに豚肉を加える。誰がこんなことを考えたのだろうか。まさにコロンブスの卵である。豚肉の卵とじもニラ玉もよくある料理だが、この三位一体は思い付かない。

これが長崎の力だろうか。

さすが江戸時代から出島で海外に門戸を広げてきた歴史を感じられる。昔から進取果敢の精神が強かったのであろう。

「これでしょっぱく感じるんですか?」

女子が我に問う。そのとおりだ。しょっぱいよ。

「そんなことないです。ソースをかけてもしょっぱくないです。」

それはね、君達が普段から塩気を取りすぎなのだよ。

これが若さか。

キモテキ

レバテキとも呼ぶ。レバーをシンプルに味わえる一品だ。レバーを臭いと言う人もいるが、好んで食べる者にとっては芳ばしいのである。もちろん、鮮度が悪ければ本当に臭い。食べるのを躊躇する。だが、こいつは違う。レバーから匂い立つ芳香と脂の甘み、プリプリとしたレバーの食感、これぞ新鮮な素材を使っているからこそ実現できる味わいなのだ。味付けも濃くは無い。付け合わせのみずみずしい千切りキャベツと一緒に食べれば、余分な脂がキャベツに染み込み、さっぱりとした味わいを付加することで、一段と旨さが引き立つのである。

ふと思いついた。ドレッシングの原料は酢と油だ。これだけ脂がのったレバーならば、酢をキャベツにかけて食べても案外いけるのではないだろうか。仮説を立てたら検証するのが理系である。キャベツの千切りに酢をかける。もちろん少量である。大量にかけてしまうと、酸味が強すぎてキャベツの味わいを完全に消し去ってしまう。うむ、なかなかいける。塩気がなくてもこれで十分に美味いではないか。

若い女子らが疑いのまなざしで我を見る。勘弁してくれよ。せいぜい今のうちに塩分を好きなだけ摂るがいい。10年もすれば健康診断で指摘されるのだ。誰も老いからは逃げられないのだ。

まだまだ食べられるが、これくらいにしておくか。では、次の店に移ろう。

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