朝そば
昨晩は締めにそばを食べることができなかった。すごく腹が減っていたのに、開いている店がなかった。時刻は23時。コンビニ以外の明かりは消えている店が多い。ラーメン店が二軒ほどあったのだが、いずれも行列ができていた。
皆、行くところがないのだな。
なので、今朝は何としてもそばを食べたい。ホテルは朝食付きだ。きっと蕎麦を食べることができると思ったのだが、残念。長野に来て蕎麦を食べずに帰るなど、あってはならぬことなのだ。
ならば答えは一つだ。駅そばだ。庶民の味方だ。ホテルを出て駅に向かう。どこだ、どこに蕎麦屋があるのだ?ネットでは駅そばのレベルを超えた店があると書いてあった。テレビでも紹介されていた。
ん?
これかな。 信州そばナカジマ会館。いや、私の求める蕎麦屋はこんな名前ではなかったはずだ。地図で調べる。なんと蕎麦屋は東口、駅の外にあるらしい。
え?
行くか?いや、時間的に無理だ。現在、8時20分。8時40分までに食べてここに戻れるだろうか。自信がない。ここも信州そばだ。きっと美味いに違いない。ここで食べよう。
食券機
店に入る。自販機と相対する。素晴らしい。「うどん」という選択肢はない。蕎麦一本だ。選択肢も鉄板メニューのみだ。ならば私は天たまそばなのだ。
食券をカウンターに渡し、奥の席に陣取る。壁にはこの店の由来が書いてある。
なるほど。
天たまそば
すぐに私のそばが出てきた。さすが立ち食いだ。日本が誇るファストフードなのだ。
天ぷらの上にのせられた玉子が美しい。たっぷりのネギも嬉しい。駅そばはこうでなくてはならない。
どんぶりには豪快に「会館そば」の文字が存在感を自己主張しているようにも思える。
ふむ。
とにかく食べよう。時間がない。どんぶりに口を近づけると、カツオの力強い香りが匂い立つ。つゆを一口飲む。少し甘口の…うん?なんだか香りの割に出汁が薄いのは気のせいだろうか。
続いて蕎麦を食べようと箸でつかむ。蕎麦が切れる。箸で持つとブツブツに切れる。ゆですぎなのか、こういう麺なのか。天ぷらも溶け始めてきた。
食べづらい。
蕎麦に卵の白身をからめ、天ぷらと一緒に口に入れる。
なんだか味気ない。
そうか。
七味を入れ忘れているではないか。ここ長野、特に長野市というか善光寺は名高い七味の産地だと記憶している。たまにデパートやスーパーで見かける七味が、テーブルに鎮座している。
こいつをかける。蕎麦を食べる。ああ、ゆずの香りがいい。そこいらの駅そばの七味とはレベルが違う。これが長野の底力なのか!
ん?
辛い。
辛さが口の中から消えない。さらに食べる。黄身を食べる。甘い。蕎麦を食べる。辛い。まるでピリピリ辛。
そばはさらにブツブツに、天ぷらは溶けてしまった。なんだか豆腐を食べてるような、なんというか。蕎麦を食べてる感覚ではない。
でも食べきった。
ごちそうさまとどんぶりを返却口に返す。時計を見ると8時30分。東口に食べに行っても間に合っていた。
ああ、ランチも蕎麦だ。そちらに期待しよう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)