おたふくソースとカープソース
広島県三次市に来ていると。地元民の井本さんに「お好み焼きを食べに行こう。」と言われた時、なんでお好み焼きを食べなければと思ったのだが、考えてみればお好み焼きの二大聖地は大阪と広島だ。大阪のお好み焼きを大阪焼きと呼ぶ地域もあるし、同様に広島焼きと呼ぶところもある。
そう、ここは広島県。お好み焼きの本場なのだ。
ならばお好み焼きを食べるのは必然、当たり前のことだ。なんせ、広島県内でお好み焼きを食べたのは、五年前に一度きりだ。
さて、広島風お好み焼きのソースと言えば、おたふくソースが定番だろう。全国的に有名であり、おたふくソースでなければ、パチモンだと言う人もいる。お好み焼き用、焼きそば用にソースも分かれている。ホームページで商品情報を見たら、たこ焼き用なるソースも発売されていたが、広島ではそんなにたこ焼きを食べるのだろうか。
ところが、ここ三次市ではおたふくソースはメジャーではない。なんと言ってもカープソースなのだそうである。しかも、おたふくソースはカープソースより後発品メーカーだとのことだ。このカープソースを製造するのは三次市内に本社を構える明治二年創業の毛利醸造である。
広島焼きは大阪で言う所のモダン焼き、つまりそば入りが特徴である。ここ三次市には、辛いものマニアにはたまらない「唐麺」があるのだ。市内の江草商店が開発、販売する唐辛子を練りこんだ辛い麺のことだ。唐辛子の「唐」を「から」とかけたネーミングだ。
この唐麺を使ったお好み焼きを「三次唐麺焼」と称し、三次商工会議所青年部(三次YEG)が町おこしとして、三次唐麺焼を世に広めるプロジェクトを始めた。広島鉄板グランプリで優勝経験もある実力派の一品なのだ。
お好み焼 宝来屋
食べに行くのは三次市で一番うまいと地元民が口を揃えて言う「宝来屋」である。
店内はカウンターとテーブル席が二つ。こじんまりとした店だ。店主は二代目ということで、昔からある店とのことだ。
さて、何を食べようか。壁のメニューを見るまでもなかった。井本さんは豚玉うどん、私は豚玉唐麺焼にする。
広島焼きができるまで
広島焼きの作り方は、昔、何かのマンガで読んだ記憶があるが、改めて目の前の職人の技を観察しよう。
三次唐麺焼
油はラードを使用していた。紅ショウガは後のせだ。辛子マヨネーズをかけて食す。もちろん、ハシなど使わない。コテのみで食べるのだ。
うーん、うまく食べられない。井本さんの食べ方を見る。なるほど、ケーキのように四角に切り出して食えばいいのか!
うむ。これはハンバーガーだ。お好み焼きといえば、すべてぐちゃぐちゃに混ぜて焼くのが主流だが、広島では生地、野菜、肉、麺、玉子がまるで地層のように美しく重なっている。
野菜と玉子、脂の甘み、肉の旨味、唐麺の辛みそれぞれを味と食感を味わい、楽しみながら、噛むうちに味が混ざり、口の中でお好み焼きが完成する。まさに口内調味。
美味い!
辛味が後に引く、ピリ辛麺が味の幅を広げている。普通の麺ではこうはいかぬ。ソースも辛口だからなのか、変に甘すぎずキリッとしまった味だ。これは行ける、ビールが欲しくなる。辛みが食欲を加速する。しかし、見た目よりもボリュームがある。しっかりとした食べ応えなのだ。
井本さん曰く、唐麺だけでは辛くて食べられないが、野菜の甘みでいい感じに仕上がるのだという。うーん、そんなに辛いかな。こいつで焼きそばを作っても美味い気がするのだが。
そうか!
自分で唐麺を買って、自宅で試せばいいのだ。辛ラーメンだと思えば韓国料理にも使える。中華料理の麺を置き換えて、四川風に調理するのもアリだ。色々使えそうだ。地元民が驚くような新メニューを考え出してやろうではないか。そう思った時には、すでに三好を離れていたので、またの機会に買うとしよう。
とりあえず、三江線が廃止になる前に乗らなければ。乗れるかなぁ…無理だろうなぁ(涙)
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)