初めての宮古島
宮古空港に着いたのは夜。真っ暗だ。機上から明かりで、なんとなくあの辺りが橋かなとは思ったのだが、分からない。闇だ。タクシーでホテルに向かう。那覇と同じく、空港から市街までは10分ほど。30分以上かかる石垣とは大違いだ。
ホテルで行われている懇親会にたどり着いたのは、閉会20分前。腹が減ったので、ビールの乾杯を受けつつ、宮古牛の握りを食べたとき、となりの席に座る知人が言った。
「この後、有志で宮古牛を食べに行くらしいですよ。」
なに?!それは聞き捨てならないな。
「吉良さんが取りまとめしてるという話です。」
なに?!吉良だと?どこに行った?何人かと話をしつつ、吉良を探す。いた。呼び止めて、ステーキの件を問いただす。吉良が取りまとめしてるって聞いたのだが。
「あー、噂って怖いね。私はね、宮古牛のステーキが食べたいなって言っただけですよ。それがどうしたら取りまとめの話とかになるのかな。」
それがみんなの願いなんだよ。
島おでん たから
まもなく懇親会は閉会した。吉良に聞く。どこの店に行くんだ?
「地元の方に『たから』って店を教えてもらったんですよ。」
たから。高良だろうな。ネットで調べる。そんなステーキ屋はない。島おでんの店ならあるが、それは違うだろう。甘かった。ステーキを食べるのに、まさかのおでん屋。
これが宮古か。
タクシーで店に向かう。まごうことなきおでん屋、いや、居酒屋だ。お座敷席に通される。せっかくだから色々食べよう。なんせ六人もいるんだ。
まずはおでん。出汁が効いて美味い。ナッパもいいが、とろとろのテビチがたまらん。厚揚げは島豆腐。これは鉄板。内地の人がなんと言おうと、おでんにはテビチ(豚足)が必要不可欠なのだ。脚先派かスネ派なのかはどちらでも構わん。テビチ万歳。
焼きそば。沖縄そばの麺を炒めるのが一般的だ。味付けは二通り。ソースかケチャップだ。最近は塩味もあるが、それはこじゃれた店の話であって、昔ながらの店では二択だ。ケチャップ味の焼きそばを「ナポリタン」と呼ぶ。ソース味はちょっと濃いめだが、普通に美味い。ナポリタンの方は、こいつ、こんなに美味いものだったか?ナポリタンは美味くないという、私の既成概念をあっさりと砕かれた感じだ。これが宮古か。
牛ステーキ
ステーキ。赤身派と霜降り派の抗争を避けるべく、オージービーフと宮古牛の両方を注文する。
オージービーフステーキはニンニクが効いている。最初からソースがかかってる。焼き方も聞かれない。これが宮古か。まあ、食えなくもない。
宮古牛、まじ美味い。脂がのってるのにくどくない。甘くて柔らかい。焼き方がミディアムなのが残念ではある。やはり和牛はミディアムレアに限るのだ。でも美味い。その上、玉子焼きとの相性がバッチリ。ミックスベジタブルは無視なのだ。
ゴーヤーチャンプルーは普通だ。否、鰹節がかかってる。なぜ?内地の沖縄料理店かよっ!
翌日、雨の降る灰色の空の下、タクシーで空港に向かう。運ちゃんが話しかけてくる。
「本島から来たんですか。宮古の海はどうですか?違うでしょう?」
いや、昨日着いたのは夜だし、今朝はこんな天気だし、海を見ても荒れてるだけだし。
「そうですね。残念です。天気のいい時にまた来てくださいよ。」
ところで、ゴーヤーチャンプルーに鰹節をかけますか?
「かけますよ。店によってですが、半々ってとこでしょうか。」
これが宮古か。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)