じゃこ天うどん

松山市 大街道駅 かもねぎ じゃこ天うどん

松山は食べ物が難しい

愛媛県松山市、この地を代表する食べ物は何か?地元の人間に聞いてみるが、なかなかこれ、という回答に巡り会えない。

「鯛めし」は宇和島だ。ソーメンの上に尾頭付きの焼いた鯛をのっけた「鯛ソーメン」は一人では食べられない。蕎麦でもなし、うどんか。鍋焼きうどんが名物らしいが、それってどこでも食えるような。高知県須崎市の「鍋焼きラーメン」の方が、まだご当地グルメの感じがする。お菓子類はたくさんあるが「松山鮨」もちらし寿司だし、せんざんきは北海道のザンギそのものだし、どうしたものか。

宇和島の鯛めし

私だけではない。せっかく松山に来たのに、何を食べればいいのか戸惑っていた人間は少なくなかった。飲みの席でも「何を食べたらいいのか、ここは難しいところだな。」などと話題になるくらいだ。

ただ飲屋街はたくさん店があり、レベルも高い。入ってみたくなる食事の店も少なくない。松山名物などと気負わずに、この土地で美味い飯を食わせてくれる店に行き、楽しい酒が飲める店で時を過ごせれば、それでいいのだ。

そんなこんなで松山の夜を二晩ほど過ごしたが、アラフィフの私は、午前様をしてしまうと翌日はあまり飲めない。眠くて仕方がない。以前のように酒に強く、体力もあれば2時3時まで楽しむのだが、明日のことも考えて、後ろ髪を引かれる思いで飲み屋を後にした。

手打ちうどん かもねぎ

そう言えば、昨晩も締めを食べてない。食べなければいけないわけではないし、食べない方がいいに決まっているが、松山らしいものが何か食べたい。実を言えば小腹も空いている。店を出てもすぐにタクシーには乗らず、あてもなく少しふらふらと歩いてみた。こんなところにうどん屋があるのか。数メートルほど通り過ぎてから、思い直して引き返す。

この店、なんとなく良さそうだ。

いつもならここでスマホを取り出し、食べログか何かを見たりするが、酔っているので面倒くさい。それよりも私の勘が告げているのだ。この店はアリだと。ドアを開けて店に入った。

メニュー

店内には客が一組。カウンターに案内される。メニューを見る。何にしようか。「ちゃんぽんうどん」も気になるのだが、やはり、ここは松山だからじゃこ天だろう。特別限定とまで書いてある。福岡ならゴボ天うどんを食べるようなものだ。迷わずじゃこ天うどんをオーダーする。そうだ、この店の名前はなんだ?メニューをもう一度見る。

「カモネギ」

分かりやすいと言えばいいのか。

店主はカウンター内で黙々とうどんをゆでている。自宅と違い、厨房の大きな鍋でゆでられたうどんは、なぜか格別の味がする。ん?何か肉と牛蒡を卵で閉じたような、甘い香りがしてきた。調理場を見ると、店主が雪平鍋の中身を4つのどんぶりに注いでいた。

「肉うどん、お待ち!」

先客の一組、4人が全員とも同じメニューだ。香りの元はこいつだ。この店のウリはじゃこ天ではないのか?なんせ、特別限定だぞ!

しかし、なかなかうどんが出てこない。ん、厨房の向こう側で何やら揚げているな。他に客はいないから、私のじゃこ天を揚げているようだ。手作りなのか。出来合いのじゃこ天を使っていないのだろうか。なかなかこだわりの店だな。

また客が入ってきた。その男性は私の左側に座ると、おもむろにオーダーを入れた。

「肉うどん、ひとつね。」

なんということだ!間違いない。この店で食べるべきは肉うどんなのだ。あれだけいい香りがするのだ!不味いわけがない。

じゃこ天うどん

ようやく私のうどんが運ばれてきた。やはりさきほど厨房で揚げていたのは、私のじゃこ天だ。梅干しが付いているのはなぜだろう?まあ、いいか。まずは、つゆからいただく。薄味でだしの効いたそれは、飲み過ぎで疲れた胃に染みていく。まるで干天の土地に降る慈雨のようだ。ネギと生姜の香りが口に広がる。美味い。しかも、後味に、あのうま味調味料独特の後を引くイヤな感じがない。無化調なのか?

続いてうどんを喰らう。太めの麺は讃岐うどんと似ているが、そこまでコシはない。武蔵野うどんと似ているか。これはこれでいい。なんせ、麺とつゆの味のバランスがいい。飲んだ後だから、余計にうまく感じるのだろうか。箸が止まらない。

さえ、特別限定のじゃこ天だ。熱々だ。うん。つみれだ。じゃこ天は何度か食べているが、それよりも魚臭い。これ、苦手な人は食べれないな。それに、あまりうどんにも合わない。九州にもこれと似た丸天うどんがあったりするが、さつまあげの方が美味い気がする。

じゃこ天に若干の疑問を感じながらも、うどんを食べ終えると、つゆも飲み干した。完食だ。あ、梅干しを忘れていた。小梅だ。かじってみる。これもなんだかうどんに合わないように思う。

ごちそうさま

また客が入ってきた。

「肉うどんね!」

わかった。また来ればいいのだろう。いつの日になるか分からないが、次回訪れた時は、迷わずに言おうではないか。

「肉うどん。」

うどん カモネギ(Retty)

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