熊本に来たなら馬刺しを食う
熊本、肥後。馬刺し。熊本に来ると馬刺しが食べたくなるらしい。実は那覇に美味い馬刺しが食べられる店がある。この店に行くようになって15年近く。妻との結婚披露宴には大将も出席してくれた。そんなこともあって、個人的には熊本で馬刺しを食いたいとはあまり思わないのだ。
しかし、雪国の人間はそうでもないらしい。ウマを食べる習慣がないから?いやいやいや、熊本で消費される相当な量の馬肉は青森産だと、青森で生肉卸をしている知人が話していた。北海道民と岩手県民がどうしても馬刺しが食べたいという。そんなこと言われたら、私だって食べたくなるじゃないか。思い起こせばしばらく馬刺しなんて食っていないな。
「馬レバ刺しを食べるんですよ!」
岩手県民が力説する。
「昨晩も食べに行ったんです。」
どんだけ好きなんだよ。まあ、ここは便乗するに限るな。私はいつもの真椎さん(北海道民)と八坂さん(岩手県民)の3人で繁華街に向かうためにタクシーに乗った。
八坂さんいわく、ネットで調べた有名店があるので、予約の電話をしてるのだけど、繋がらないとのこと。ちょっと待って、もうタクシーで店に向かってるんだよねぇ。なんで助手席から電話してる?え?繋がった?
「…ああ、そうですか。分かりました。」
満席だったんだ。岩手県民が電話を切って言う。
「今夜は馬肉が売り切れたので、店を閉めたんだって。」
マジか?
岩手県民がタクシーの運転手に助けを求める。
「馬レバ刺しが食べれる店、近くにどこかありませんか?」
こう言う時に頼りになるはずの運ちゃんの答えは冷酷だった。
「今晩は無理。食べれませんよ。どこも入れない。」
え、なんで??
「今日は今年いちばんの人出ですから。」
そうなんですか?仕方なく3人はタクシーを降り、歩いて店を探す。満席の店ばかり。後から合流することになっている群馬県民の月野さんは迷っているらしい。
結局、馬刺しは諦めて居酒屋のビルに入ろうとした時、後ろから吉良と鈴木のコンビがやって来た。この資産家カップルコンビはいつもつるんでるなあ。熊本の知り合いに頼んで2階の店を予約してもらったとのこと。吉良は宮崎県民だから、馬肉なんて珍しくもなんともないと思うのだが。きっと食い物にうるさい愛知県民の鈴木が「食べたい食べたい。」とごねたのは容易に想像がつく。
熊本 いろりや
月野さんは先に居酒屋に着いて、個室を確保しておいてくれた。ドリンクのオーダーより先に八坂さんが店員に尋ねた。
「馬刺しありますか?」
「確認してきます。」
店員がそそくさとキッチンに戻る。果たして朗報は聞けるのだろうか。
「一人前だけあるとのことです。」
おお!よかった!八坂さんがオーダーする。
「レバ刺し、大盛りで!」
笑うとこかな。
馬レバ刺し
きたきた、レバ刺し。久しぶりに食べる気がする。牛レバーが禁止されたのは何年前だったか。調べてみると5年前だ。もう、そんなに経つのか。禁止前日に那覇市内で牛レバ刺しを探し回ったがどこも売切れで、なんだかレバ刺しを食べないと気がすまなくなって、最後は肥後勝で馬レバ刺しを食べたのも5年前になるのか。
酢モツ
まずはお通しだ。コリコリした食感がいい。九州は酢モツを食べるところが多いのだろうか。続いてやってきました、馬レバー刺し。塩とごま油でいただく。臭みない。食感がいい。うまい。八坂さんが前日に馬肉専門店で食べたレバ刺しの写真を見せつけてくる。色がぜんぜん違う。見た目にもうまそうだ。うーん。
焼き小籠包
初めて食う。羽が好評。皮が厚い。玉ねぎよりも生姜の方が合うような。
野菜スティック
ディップはアンチョビがきいていて美味しい。
ステーキ
写真とだいぶ違う。筋っぽい。歯に肉が挟まる。固い。味はいいけどね。
辛子蓮根
ほんのり辛くてレンコンがシャキシャキ。美味しい。
馬刺し
クセがなく素直な味。臭みもない。上品な肉だ。たてがみは歯ごたえ良く、噛めば噛むほど甘みが出る。
なんとなく熊本に来たので勢いで馬を食ってみたが、私は那覇で食えば十分だと再認識した。今度、久しぶりに肥後勝に顔を出してみよう。
いろりや
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)