京都 河原町 満亭 スペシャルエビクリームコロッケ

河原町でランチを探す

久しぶりに京都に来た。京都生まれの私には、40年前に離れた地とはいえ、特別の場所だ。生まれは清水寺、三年坂の近くだ。

新幹線を降りた時に、あまりの涼しさに、半袖シャツ、ノージャケットでは風邪を引いてしまうと確信し、河原町でジャケットとシャツ二枚を購入した。そしてランチだ。季節外れとはいえ、やはり観光客が多い。国慶節で8連休の中国からの客も多いのだろう、あちらこちらに中国人がいる。欧米系やアジア系の観光客も少なくない。やはり京都は国際都市だと改めて気づかされる。

だからなのか、裏道の渋い店も、表通りの立ち飲みの店ですら満席だ。三十分ほどウロウロしているのだが、なかなかこれと言った店が見つからない。牛カツ、とんかつ、蕎麦、おばんざい、どれも違う。やたらラーメン屋が多い。いつから京都はラーメンの街になったのだろう?

なおも街を歩く。三条寄りの街で業務スーパーを見かけた。なんとなくふらふらっと引き寄せられるが、気を取り直し、横の路地を入る。少し歩いて、魅力的な看板に目を惹きつけられた。

「当店は昔ながらの…」

いい、ここはいい。人の気配がないのだが、表には営業中と書いてある。ドアを開けて中に入る。

河原町 満亭

店内に客はいない。カウンターにマスターらしき男性が座っていた。テーブル席に案内される。メニューも年季が入っている。どれも魅力的なのだが、一押しのスペシャルエビクリームコロッケをオーダーする。ライスかパンは別注文だと言う。糖質制限中の人には嬉しいだろう。私はライスだ。

しばらくして、調理服を着た年配の男性が店に入ってきた。シェフのようだ。寡黙に調理を続ける。外の喧騒とは打って変わって、昭和を保ったままの店内は、時間が止まったかのようだ。静けさが心地よい。

スペシャルエビクリームコロッケ

やがてそれは静かに運ばれてきた。一切れしか添えられていないのに、なぜかポテトフライの香りが強烈だ。クリームコロッケというのは割と小ぶりだと思っていたが、ものすごい重量感、存在感だ。そしてたっぷりのシャキシャキレタスが嬉しい。

プレートにのっている付け合わせは、その名の通り、大概は申し訳程度の量で、別にサラダを注文しなければ物足りないことがほとんどだが、ここは違う。レタスが一玉四百円する沖縄でこれほどのレタスを付け合わせにすることなど、不可能だ。上にかかっているドレッシングはマヨネーズのように濃厚だ。

やるな。

まずはレタスを食べる。歯ごたえがいい。ドレッシングは濃厚なのにくどくない。酸味も控えめでレタスとの相性が抜群。ときおりセロリの味がする。薄いスライスでも混ぜてあるのだろうか。美味い。

さて、次はコロッケだ。改めて見てみると、やはりでかい。こいつにナイフを入れる。中から白い裸身ではなくクリームが現れる。これだけの大きさなのに、衣が厚くない。一口サイズに切って、ブラウンソースをつける。フォークでそっと取り、口に運ぶ。クリームには粉っぽさがまったくなく、とろりとなめらかな舌触りだ。しっかりと味があるのにしつこくない。

エビの香りも控えめで存在感が薄いのがいい。ブラウンソースも味が控えめ。謙虚な素材が渾然一体となって味を奏でる。美味い。さすがスペシャルだけある。続けてライスを口に放り込む。米との相性も悪くないが、これはパンでもいけるな。

昔ながらの街の洋食屋さん。頑なに伝統を守り、時代に迎合しない。私は嫌いではない。マーケティング的には疑問が生じるが、職人が自分の理念を守れるだけの来客があるのならば、間違いではない。

ただ、店の照明はもう少し明るくてもいいのではないだろうか。せっかくの渋い店内、眼でも楽しめれば、もっとよかった。

京都 河原町 満亭(食べログ)

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