近江町市場 カレーのチャンピオン
長野から沖縄への帰路、金沢に立ち寄り食材を購入した。次なる目標はランチ。金沢ランチ。前回、金沢に立ち寄った時はゴーゴーカレーを食べた。あれは時間がない上に、早い時間であったために営業中の店が少なく、立ち食い蕎麦か金沢カレーの二択しかなかったが、今回は違う。選択肢は20以上あるのだが、近江町市場の向かいにある黒門小路(くろもんこじ)地下一階、飲食店街の北陸ごちそう広場では、食指の動く店が見当たらなかった。
仕方なく近江町市場に戻ったのはいいが、何を食べればいいのだろうか。私の目の前には黄色い派手な内装の店が立ちはだかった。
「金沢発祥カレー カレーのチャンピオン」
明るくポップなデザインの案内幕には、この先に食券機があることを示していた。店内に客はゼロだ。指示されるがままに歩くと、老若男女が集う店が現れた。
ここか。
メニューはどれだ?
さて、何を食べようか。苦手な食券機の前に立つ。まずはボタン類からメニューを把握する。
- チャンピオンカレー
- ウインナーカレー
- ヒレカツカレー
- クリームコロッケカレー
- エビフライカレー
- チキンカツカレー
- カツカレー
おそらく末尾のSとMはご飯の量、もしくは容器のサイズを表しているのだろう。カツカレーの頭文字はカツのサイズと推測される。カレーはMで間違いない。問題はカツである。ヒレカツかただのカツか、それが問題だ。さらにただのカツならば、MかLかも決めねばならぬ。
さあ、どうする、俺?
いつまでも食券機とにらめっこしてるわけにはいかない。男には即座に決断を迫られることが一生に何度かはあるのだ。今がその時か?そうなのか?そんなことはどうでもいい、カツのサイズはどっちだ???
結局、MカツカレーMをセレクト。ああ、またもや無難な選択をしてしまった。いや、そんなことはない。何事も大事なのは基本である。オーソドックスである。初心者がいきなりピーカブースタイルなどできないのである。ちなみにピーカブー(peek a boo)は「いないいないばあ」を意味する。
カレーを待つ
案内されたのはカウンターの奥の席。店内を見回すと、昼前だというのに結構な客だ。金沢に来るとカレーばかり食べている気がする。鮮魚は今晩、家族と食べるのだ。バスまでの時間もあまりないから、ここはクイックフードに頼るのだ。しかも金沢カレーである。沖縄にもゴーゴーカレーがありはするが、チャンピオンはここでしか食べられない。
カウンターの中には大きなお櫃が二つ。さすがカレー店。混雑時はこれでもすぐに空になるのだろう。奥にはフライヤー。金沢カレーの象徴であるキャベツスライスがてんこ盛りになっている。
カウンターにはとんかつソース、塩、福神漬けとシンプルである。水もセルフサービスだ。
MカツカレーMを味わう
ようやく私のカレーが運ばれていた。金属の皿に盛られた、カレー、とんかつ、キャベツのオーソドックスなスタイル。
金沢カレーといえば、昔、給食で使っていた先割れスプーンで食べるのがセオリーだと思っていたが、この店は違うようだ。フォークで食べる。
コクのある少しスパイシーな若干辛口のルーだ。皿の下にご飯が詰められ、キャベツとトンカツが載っている。トンカツの肉は薄くて柔らかいが、しっかりと豚肉の旨味を味わうことができる。熱々のトンカツを頬張り、ご飯とルーをキャベツと混ぜる。とんかつにかかるソースはカレーの味を邪魔することもなく、いや、むしろルーとの相性がいい。酸味の効いた福神漬けもまたアクセントである。これは止まらない。
生野菜大好きな私には金沢スタイルがピッタシなのだ。 金沢カレーでは、さらにキャベツとごはんを盛り、ルーをかけとんかつを載せるスタイルが一般的だと思っていたが、この店ではご飯の上にキャベツが載っていた。これだと少々キャベツの量が物足りないではある。だが、沖縄の黄色いカレーとは真逆の渋さを感じさせる、ダークな色合いのルーはキャベツもご飯もとんかつも一体化させる包容力がある。ホテルのバイキングで朝カレーを食べるとき、金沢スタイルにすることが多いのだが、やはり本場に比べると素材をまとめる力に欠けるような気がする。
いずれにせよ日本が誇るファーストフード、この地で独自に進化した金沢カレー。ついつい食べてしまうので、未だもう一つのソウルフード、ハントンライスを食べる機会がないのである。ゆっくりと滞在することがあれば、食べることもあるのだろうが、きっとカレーを頼んでいるに違いない。
金沢カレー、また本場で会う日まで。その時はさほど遠くないだろう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)