出雲そば

出雲市駅 手打ちそば ほしえん 三色割子蕎麦

のどぐろを食べたけど

のどぐろを食べて、出来上がってる真椎さんとホテルに戻ろうとしたのだが、二人とも小腹が空いていた。一次会ではあまり食べなかったし、さっきものどぐろとナマコを食べたくらいだ。コンビニではうまそうなものが見当たらなかった。

「蕎麦を食べようよ。」

おもむろに真椎さんが言うので、私は同意した。実は夜中でも蕎麦を食べられる店を一軒だけ知っている。3年前に自分が記憶を無くしながらも蕎麦を食べた店だ。

そう、3年前…

あの時もお座敷で日本酒を推定で一升ほど飲まされてべろべろになり、そのまま二次会へ。一次会の後半から記憶がほとんどない。その後、一人でホテルに歩いて帰ったことだけは覚えていた。

翌朝は最悪だった。頭は痛い、気持ち悪い。久しぶりに遭う強烈な二日酔いだ。これでは昼飯も食えない。夜はホテルで宴席だ。なんだよ、出雲まで来て蕎麦食えないじゃないかよ。ガンガン痛む頭を抱えてスマホをチェックする。あれ?割子(わりご)蕎麦の画像がある。しっかり食べてる。

食べた記憶も、撮影した記憶もない、深夜の出雲そば

それだけじゃない。

「鯖の刺身ウマー」などと画像付きでFacebookに投稿している。娘がコメントまでつけている。

まったく記憶にない。

領収書もない。

スマホで撮影した画像だから位置情報が記録されている。地図を探すと、そこには居酒屋があった。午後になって通りを歩いてみると、そこは居酒屋だった。店頭には大きな出雲蕎麦の看板が置かれていた。

この居酒屋に向かって真椎さんと歩く。少し歩いたところで、道の反対側に、大きく「出雲そば」と書かれたのぼりを見つけた。しかも「手打ち」とある。なんとなくうまそうだ。

「あそこでいいんじゃないの?」

真椎さんの提案に同意し、道を渡って店の暖簾をくぐる。客はほとんどいなかったが、深夜1時半までの営業とある。テーブルに座りメニューを見る。割子(わりご)蕎麦。これだ、うん。しかしシジミラーメンもうまそうだ。なんでそば屋にラーメンがあるんだろう?この謎は翌朝、明らかになったのだが、このときは酔っていたのもありわからなかった。

出雲蕎麦ほしえん

二人で定番の三色割子を注文する。次はドリンクだ。ハイボールを頼もうとする私を真椎さんが制した。

「蕎麦屋は日本酒だ。時代劇でも定番だ。」

確かにそうなのだが、日本酒はさっき文字通り「浴びるよう」に呑んだじゃないか。とは言え、真椎さんの言うことも、もっともだ。二人で冷酒を頼む。これが少し甘口でキレのある純米酒。

美味い。やばい。酒が進んでしまう。

早く蕎麦来い。

ほどなくして蕎麦が運ばれてきた。出雲蕎麦は皮ごと蕎麦の実を引くので黒いのが特徴だ。更科派の私の好みに反するが、おろし、とろろ、卵が黒い蕎麦に映えて見た目にも美しい。薬味は紅葉おろしに万能ネギに海苔だ。ワサビではないのだ。返しは甘めだがしょっぱい。器につゆを好みの量だけかけて蕎麦を食べる。細麺は好みだ。喉越しも良くいかにも「手打ち」であることがわかる麺だ。美味い。

すぐに一枚目がなくなった。残ったつゆを2枚目にかける。さらにつゆを足す。とろろもいい。いや、これなら卵と合わせた方がと美味いはずだ。残ったとろろを三枚目に移し卵とよく混ぜる。おお!これだ!月見もいいがやはり月見とろろなのだ!完食。湯のみに残ったつゆを入れる。蕎麦湯が入っているのだ。そして飲み干す。うーむ、出雲蕎麦は美味いな。しかも深夜にこのような手打ちそばが食えるなんて、出雲市民は幸せだ。

満足した真椎さんと二人で店を出る。さあ帰って寝よう。まだ23時だ。繁華街ではまだ戦いが繰り広げられてるのだろうが、我々ロートルは早々に戦線離脱したのだ。

だが私の頭にはこのとき一つの大きな疑念が膨らんでいた。それはほしえんのメニューに確かにあった。

釜揚げ蕎麦ってなんだ???」

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